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ペケーニョ・デレーチョ  作者: クインテット
第一部 灯台で。
10/11

新理想郷

僕はカロンから受け取ったネジやボルトで灯器(とうき)を直し、青く()びた本体と対照的に太陽を受けて光るその部品達を見下ろした。その上に僕の汗が落ちて、サビの原因になりそうだと慌てて(ぬぐ)った。きちんと灯りが付くかも確認して、動きも(なめ)らかかを確認する。僕の不安をよそに灯りは滑らかに動いて、胸を撫で下ろす。その間にもチリチリと僕の背中に日光が当たった。灯台島最高点のここには、日光がまるで大気圏を無視したかのように降り注いでいる。

さっさと降りて倒木を刻みに行こう。そう思って立ち上がったところで、背後から足音が聞こえた。階段の方へ振り返ると、リビスさんが立っていた。

「お疲れ」

「ありがとうございます。今日も暑いですね」

「ん」

リビスさんは短く答えると手で目の上に日除けを作った。

「あー…どうかしましたか?」

「仕事の具合を見に来ただけ」

リビスさんがそう言ったので、僕は半身(はんみ)で避けて灯器を見せた。

「どうでしょう」

「こことここ間違ってる」

リビスさんはそう言って指差した。

「ネジが逆」

「道理で締めづらいと思いました」

僕はそう言って肩を(すく)め、ネジを緩めにかかった。

「ケガは治ったけどどうすんの」

リビスさんはそう言って隣にしゃがんだ。

「…僕は、ここにいてもいいんでしょうか」

「さあね」

僕の真剣な問いも、リビスさんは一蹴した。リビスさんはネジが回るのをただ見ている。

「ここにいたいと思ってはいるんです。

一人では危ないし…。なにより、僕はここが好きなんです」

僕はそう言ってネジを締め直した。

「変なやつ」

「ユートピアなんて無いんですよ。でも…あるとするなら、それは孤独かもしれない」

僕はそう言って道具を置いた。

「あんたは私のユートピアを奪おうとしてるわけだ」

「…そうとも言えますが、共有したいんです。理想を言えば」

「理想郷の理想、ね」

リビスさんはそう言って鼻で笑った。僕もつられて笑って肩をすくめた。

「後悔しても責任とらないから」

リビスさんはそう言うと立ち上がって、一足先に階段を降りていった。僕は工具箱を片付けて灯器を眺めると、立ちくらみを覚えながら階段の一段目に足を置いた。もしかしたら、ミザールにも同じ質問をしているんじゃないかと思うと、僕は早足になった。

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