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2 ムカデ怪獣


 事態が動いたのは、保険の話が出ていた1週間後だった。



『甲信越地方に巨大生物出現か。

 先日の千葉の個体とは別種の可能性』


 ニュース番組にテロップが流れる。


 そして間を置かずに僕のスマホに着信が。



国府谷こうだに先生、マタ怪獣ガ現レマシタ。

 操縦ヨロシクオ願イシマス ”


「え?あんた、以前のクライアント!?

 前回で終わりじゃなかったの?」



 教えてはずのないスマホの番号に電話を掛けて来た相手。


 以前、僕が『契約』をして、命を助けてもらう代わりに機体のパイロット引き受けた際の人外クライアントだ。 


「ていうか、あんたホントにいるんだな!?

 正直、僕はアレが夢だったんじゃないかって思い始めていたところだよ」


” 夢ナンカジャアリマセン。

 早速機体ニ転送シマス ”


「え? 転送ってすぐ? ちょっ……」


 僕にだって都合が……!!



 そう思う間もなく、一瞬で僕の周囲は暗闇に包まれた。


 あー。前回と同じだー!



 ……ま、いいか。

 幸いというか、緊急の用事があるわけじゃない。


 次の打ち合わせまでまだ数時間の余裕があるし。

 なんとか間に合うでしょ。



______________



国府谷こうだに先生、今回もよろしくね!

 早速神経細胞接続しちゃうわ」


――― ナビィさん?

 こっちもまた僕の返事待たずに容赦ないな!!


「ニューロン交感開始」



――― うわああ!


 例の!

 例のにょろにょろしたヤツが全身に這いまわってるーーー!!


 でも!今回の僕は一味違うぞ。


 前回は気色悪くて固まってしもうたけど、今回は勇気を出して指先でそのにょろにょろしたヤツに触れてみる。


――― ううーん……?


 てろっとした感触。

 トコロテンみたいな感じかな?


 トコロテンは黒蜜をかけて食うけど、この感触は黒蜜がかかってない状態のトコロテンやな!


 以前、東京で酢醤油のかかったトコロテン食うてるの見たときには驚いたわ。

 アレはスイーツやろ。


 東京の人間はなんであんな酸っぱいトコロテンを食うてるんやろうなぁと思ったけど、アレはアレで酒のツマミにはエエんかもな。



 とか考えている間に、ニューロン交感とやらが終わったらしくて景色が明るくなった。



――― ええと……。

 ここは甲信越地方って話だったな。


「地理的な話をするなら新潟県ね」


――― 以前は千葉だったから、以前よりもうちに近いっちゅーわけか。

 なんとなく見たことある場所だな、と思ったけど

 よくよく思い出すと新潟地裁の近くだな。

 仕事で来たことあるわ。


 ともかくまだ怪獣が出たばかりって話だから、損害が出ないうちに倒してしまいたいね。



「あら国府谷こうだに先生頼もしいじゃない。

 じゃあ頑張って倒しちゃいましょうね」


――― 乗りかかった船や!

 まかしとき!



 目の前に怪獣の姿を確認する。

 相変わらずかなり距離があるようなんだけど、姿はハッキリ見える。

 ホンマ、この機体の中にいると感覚がおかしくなるわ。


――― ナビィさん、前回のヤツが復活したとかじゃないよね。

 形も全然違うし。


「そうね。別の個体みたい」


――― あいつ、どこから来たん?


 そうだよ。

 それは重要なこと。

 怪獣は一体とこから来たんだ?


「私の観測した範囲によると、3時間02分55秒ほど前に空から落ちてきて、日本海に落下。

 その後上陸して約21分27秒。

 今に至るという流れかしら」



――― 空から?

 それって、宇宙から?


 あの怪獣って宇宙人?

 エイリアンなんかな?


「さあ?」


――― ナビィさんも分からへんのか。


「でも分かることもあるの。

 前回の溶岩怪獣?

 アレは今の地球人の文明レベルでは排除できなかった」


――― すごく強かったってこと?


「この機体の起動条件なのよ。

 地球人の文明レベルで対処不可能な地球外からの攻撃であることが」


――― ほー。


 ちょっとね、前回の一度だけならともかくこうして続いてしまっている以上、いろいろ聞きたいことがあるんだよ。


 まずは……



 そう思ったんだけど、どうも僕は怪獣に見つかったみたい。

 先に怪獣倒してしまわないとあかんようだ。


 前回の溶岩怪獣は足なんてなくて、溶岩のような図体を引きずるように移動していたから動きが鈍かったんだけど……。


 今回の怪獣は足があるよ!


 しかも!!

 足が、たくさん!!

 なにあれ!!


 ムカデ!?

 ムカデの化け物!?


 姿勢を低くしたと思うと、すんごい勢いでこちらに向けて移動してきた!!


 ヤダ!アレ!!

 気持ち悪い!!

 いやいやいや、ウゾウゾ動いてるーーーーー!!!


 とりあえず逃げます!!



 僕はもう慌てて逃げだした。

 とにかく生理的に耐えられない!

 気持ち悪い!!!



 「相手の攻撃パターンが分かるまでは距離を取るというのは戦略的に良いと思うわ」


 ナビィさんはそうおっしゃってくれる。

 優しいね!!

 単に気色悪くて逃げただけなんだけどね!!


 僕は信濃川の方向に逃げた。


 一応少しだけ冷静だったので、そっちの方が建物を踏みつけて壊す可能性が低いと思ったわけなんだよ。

 褒めて!


「さすが国府谷こうだに先生!」


――― すかさず褒めてくれるナビィさん大好き!


 にしても、この機体、やっぱり移動速度がすごく速いね!

 慌てて逃げたにしても、かなり距離が取れた!

 怪獣まで何メートルくらいあるんだろう。


「ざっと3.06kmかしら」


――― え? そんなにあるの?

 距離感がどうも分からんなー。



 ふと周囲に目をやると、ヘリコプターが飛んでいる。


 この機体から見ているから、随分小さく見える。

 インコが飛んでいるようだ。


 高さとしては、……えーと、僕の目線よりちょっとだけ上かな。


 へりには報道局のマークが見える。

 報道ヘリか。



 あ。そうだ。


 僕はそのヘリの方向を見て動かずに直立してみた。



「なにしてるの?

 国府谷こうだに先生」


――― いや、あれって多分撮影してるんだと思うんだよ。

 前回はどうもこの機体の動きが速すぎてほとんど映像が残ってなかったからさ。

 ちゃんと撮ってもらえばどんな形してるのか後で分かるでしょ。



 なんかポーズとってみた方がいいかなと思ったけど、ちょっとした僕のクセとかが出てしまって、後日僕がこの機体に乗っていたことが特定されたらヤバいから……。

 変な行動は慎んでおくことにします。



「それより国府谷こうだに先生、怪獣がまた迫って来てるわよ」


――― あ!ホンマや!

 あいつも動くの速いな!

 カサカサと動いてるわ!!

 イヤだなぁ……。


 アレを攻撃するのか……。

 触りとうないわー。


 もちろん、自分で触るわけじゃないのは分かってるけど……。


 なんというか、この機体の感覚ってダイレクトに僕に伝わるじゃない?

 視覚とか触覚とか……。


 つまりこの機体でヤツに触るということは、僕が素手で触るような感触なわけで……。


 いやああああああああああ!!!




 奴は僕の存在を認識して以来、執拗に僕を追ってくる。

 なんでだろ。

 まだ僕は敵対行動をとってないってのに。

 あいつは僕が敵だと分かってるってことだろうか。


 そして今回もとにかく僕は逃げ回っていた。



 ああ……。

 こんなことやってるから映像に残ってないんだな。



「あの怪獣は前回と違って熱線を吐くとかないみたいね」


――― ナビィさんの言う通り、そういう意味では助かってる。

 あの怪獣が素早く動き回っているから、潰されてる建造物はかなりの数になってるけど。


 ちなみにさっき4階建ての新潟地方裁判所が、僕を追うムカデ怪獣に潰されたのを見てしまった。


 ……まあいっか。

 見なかったことにしよう。



 建造物の少ないところに誘導したとはいえ……。


 まあ、単に逃げたのを追われてるだけなんだけど、それでも僕が逃げるほどに被害が広がることは間違いなさそう。


 ああ、でもあいつに殴るとかイヤだなぁ……。





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