1 パーティの始まり
待っていたんだ キミを
待っていた 待っていた ずっと
ようやく その時が来た
盛大に祝おう その復活を
見せて欲しい その姿を
これはすべて キミのための祝宴
――――――――――――――――――
『こちらNY支局、怪獣です!怪獣が現れました!
日本で出現する怪獣と関係があるのでしょうか!猪を思わせる姿の巨大な生物です。車道で車を薙ぎ払いながら進んで……!ああ! ニューヨーク郡裁判所が!見るも無残に破壊されました!』
『なんということでしょうか!こちらナイジェリア、突如巨大な生物が出現し街を破壊しています。世界の終わりが来たのでしょうか。ご覧ください、今の映像はラゴス裁判所が怪獣の吐く炎に包まれた瞬間です!』
『中国北京支局。北京市東城区に、さきほどから巨大な怪獣の姿が目撃されています。中国当局は当初報道規制を敷いたものの、SNSを通じて拡散されている模様。各国の報道官が確認のため北京市に集まっております。怪獣は街を破壊しているようです。今の時点で最高人民法院が全壊したと伝わっています』
『信じられません。巨大な生物が現れ街を破壊しています。こちらロシア支局。モスクワ市裁判所がたった今破壊されました。怪獣の破壊活動はこれに収まらず、さらに移動を続け破壊行為を続行している模様……』
『以上、各国報道局からの中継でした。ご覧の通り世界各地で怪獣の出現が確認されております。日本でも既に2体の怪獣が出現しており、住人の避難が急がれます』
『埼玉県、石川県に怪獣が出現してから既に8時間、未だにエクスは姿を現しません。どうしたのでしょうか』
『エクスが一向に現れる様子がないまま、各地の被害は広がる一方です。この事態について、解説委員の原間さんはどのように考えられますか』
『分かりません。幸い日本では怪獣の出現は既に前例を積み重ねているため避難は速やかに行われているようです。もっとも過去にこのように短時間で複数の怪獣が出現したことはありません。もしかすると我々が観測していない場所でも怪獣が出現し、エクスがそちらに手を取られているのかも知れませんね』
『なるほど、怪獣の複数体出現にエクス一体で対応するというのは困難ということでしょうか』
『あくまでも可能性に過ぎませんが。ただそれにしてもエクスの情報がどこからも入らないというのも奇妙なことです。エクスは今どこにいるのでしょう。各国情報に注意が必要です』
『速報です。ただいま、南米ペルーに新たに怪獣が出現した模様です。ペルー最高裁判所は壊滅状態です』
――――――――――――――――――
「国府谷先生?
ねぇ、大丈夫? 返事して」
――― ……。
「国府谷先生?
データの復元終わったんでしょ?」
――― ……。
「国府谷先生、怪獣が地上に沢山出現してるわ。
このままじゃ地球が破壊されちゃう。ねえ、国府谷先生」
――― ……。
「B・U、どういうことかしら? 国府谷先生の応答がないわ」
『復元後は大量の情報を整理する必要があるため身動きが取れないのかと。しばらく待ちましょう』
――――――――――――――――――
『既に観測されている怪獣の数は20を超えました。まだ未確認の怪獣も発生している可能性があります』
『前代未聞の事態です。関東放送局にも避難勧告が出ています。これからは別の支部からの放送に切り替えます』
『これは、もしや怪獣が本格的に侵略を始めたということなのでしょうか。一部海外では既に軍隊が対応に当たっている国もあるようですが、一切の攻撃に効果が見られないようです』
『アメリカ、ロシア・中国は核の使用を検討している模様。大規模な退避命令が出ています』
『日本では自衛隊は主に避難誘導のため各方面に派遣されているようです。過去に襲来した怪獣対応経験により攻撃に効果が上がらない可能性が高く、避難に重点を置く方針によるもののようです』
『エクス、エクスはどこにいるのでしょうか』
『未だエクスの目撃情報が上がりません』
――――――――――――――――――
――― ふわぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁ……。
あー、よう寝た。
でもま。ようやく頭の整理ができたみたい。
起きなくちゃぁ…。
まずは遮断してた五感を解放しますか〜。
五感を解放するなり、早々に入ってくる外部の情報。
――― ありゃぁ……。
バックアップデータの復元のために48時間とちょっとしか経ってないってのに。
なんか地球が大変なことになってるな。
「国府谷先生? 良かった!意識が戻ったのね?」
――― ナビィさん、ご心配おかけしちゃったみたいで。もう大丈夫です。
「さっそくだけど、地球上にたくさん怪獣が出現してるの! 退治しないと!転送する?」
――― そうみたいですね。でも転送は要りません。僕がやった方が早いから。
「さっそく復元した知識が役に立つってことね!」
そういうことです。
さてと。地球上に怪獣は、えっと。
ざっと29体ってとこかな。
では行きますか。
――――――――――――――――――
『NY支局、怪獣消滅!』
『ナイジェリアです。怪獣は消滅しました!』
『中国北京支局、突如現れた巨大人型ロボットが怪獣を一瞬のうちに消し去りました』
『ロシア支局、素早すぎてほとんど映像では捉えられませんでしたが、今のが日本で出現していたとされる『エクス』でしょうか。まさに一瞬!』
『こちらペルー支局、一瞬の出来事でした。巨大なロボットのようなものが現れ怪獣に対峙したかと思えば、瞬時のうちに怪獣が消えました。あのロボットが行ったのでしょうか』
『エクスです!エクスが姿を見せました!』
『埼玉県に出現した怪獣はエクスにより倒されました。それとほぼ同時に現場からエクスも消え、それから数秒もせずに石川県に出現。そこでもただちに怪獣が消し去られた模様です。このようなことがあり得るのでしょうか!エクスは瞬時に場所を移動することができるのかも知れません!』
『信じられません!各地に同時出現していた怪獣が、ごく僅かな時間に次々と姿を消していきます。エクスが倒しているものと思われます!』
――――――――――――――――――――
怪獣がどこにいるか。位置は把握できる。
そこに転移し怪獣を倒しては移動しての繰り返し。
怪獣を倒すのに工夫も何も必要ない。
怪獣を粒子に戻せばいいだけ。
こいつらは単なるレイシアさんの手駒に過ぎないから退治するのは気の毒だけど。
でも既にレイシアさんに心酔しちゃってる連中だからね。
説得は無駄。
26、27、28。
はい。最後の1体。
これで29体終わり。一丁上がりっと。
――― ふー。終わった終わった。
まったくもう。29体も一気に投入だなんてレイシアさんも大胆なことをしてくるなぁ。
「国府谷先生、驚いちゃったわ!
とりあえずスゴイ!
ここまでエクスディクタムの性能を使いこなせるようになったなんて!!」
――― いやぁ、全てB・Uさんのデータアーカイブのお陰です。これにはどうやらエクスディクタムの『記憶』が収められてたみたいで。これならエクスディクタムの性能をフルに使いこなせますよ。
「国府谷先生カッコいい~!
これならもう私のナビゲートは要らないんじゃない?」
――― そうですね。
すでにエクスディクタムの全能力は把握済みですから、ナビィさんに頼らなくても大丈夫です。
「もうっ、国府谷先生ったら。強気になっちゃって」
――― ナビィさん。
今までありがとうございました。
「なぁに。国府谷先生ったら改まって」
――― ごめんなさいナビィさん。
人間の『感情』なんて持たせてしもうて。
そのせいで、ナビィさんを寂しい思いをさせてしまったみたいで。
「ううん、いいの。だって国府谷先生のためなんだから。国府谷先生と一緒に悩んだり苦しんだりできるの、私は嬉しいのよ」
――― ナビィさんを解放します。
もう、ナビィさんは苦しまなくていいんです。
「え? なに?
国府谷先生? 何言ってるの?」
――― 以後ナビゲーターは必要ありません。
ちょっと効率化のために整理させてもらいますわ。
「どういうこと?
私はもう必要ないって……」
――― さようなら、ナビィさん。
楽しかったです。
「うそ、私を、消すの……?」
――― ナビゲーター、機能停止
「……待って!私、消えたくない!
国府谷先生と一緒にいたいの……!」
・・・・・・・・・・・・
やっぱりあなたは
ひどいヒト……




