4 プロボノ活動
今回の件に関して、僕はちょっと特殊な依頼を受けることになった。
クライアントのたっての希望で、事務員の米山さんにも秘密にしろという話だったから誰にも言えないんだけど。
守秘義務には職業上慣れているから、それはいいんだ。
実はねぇ…。
あの後から出て来た巨大なロボット?
アレに乗ってたの、僕なんだよ。
なんでこんなことになったのかというと、話すと長くなるからはしよるけど。
あのとき、瓦礫に押しつぶされそうになったところを、間一髪のところで誰かに助けてもらった。
一瞬の間だったけど「助けて欲しかったら協力して欲しい」と言われましてね。
『人間のパイロットが必要』ということで、一度くらいなら協力してもいいかなと思って引き受けたんだよね。
で、気が付くとあの巨大なロボットの中にいたわけですよ。
僕は車の免許くらいしか持っていないから、操縦とかできないと思ったんだけど、親切なナビゲーターがいて色々教えてくれたから何とかなったみたい。
怪獣は強い熱線を放つバケモノだったけど、ヤツの頭上から膝蹴りを入れたら熱線を出す前に撃沈させることができたよ。
あの巨大ロボ、めっちゃ性能の良いマシンなんじゃないかな。
最近のハイテク兵器ってすごいなぁ。
ちなみに依頼者は、ひょっとすると人間じゃなかったかも。
まず自衛隊ではないと思うな。
通常なら身元の怪しいクライアントの依頼は受けないところだけど…。
自分の命の危機だったし、断れる状況じゃなかった。
それにしてもさぁ。
『巨大ロボットに乗り込む』なんて、そりゃあ子どもの頃には夢見たことがあったさ。
まさか今になって叶うとは思わなかったなぁ。
人生何が起こるか分からないもんだね。
とにかく怪獣は退治できたんだ。
めでたしめでたし。
あんな怪獣なんて、そうそう出るものじゃないからね。
一生に一度の思い出になったよ。
人間じゃなさそうなクライアントのことも気になるけど、怪獣騒動は終わったし。
もう会うこともないでしょう。
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このときの僕はまだ知る由もなかった。
巨大生物の地球侵略は始まったばかりで、これから幾度となく怪獣が地球に出現することを。
それと、例の対怪獣用の巨大ロボット?
アレはパイロット登録制らしく、一度引き受けた以上は簡単には登録が外せないということを…。
『甲信越地方に巨大生物出現か。
先日の千葉の個体とは別種の可能性』
ニュース番組にテロップが流れる。
そして間を置かずに僕のスマホに着信が。
” 国府谷先生、マタ怪獣ガ現レマシタ。
操縦ヨロシクオ願イシマス ”
「え?あんた、以前のクライアント!?
前回で終わりじゃなかったの?」
” 『怪獣討伐』ガ契約内容デスカラ。
一度キリトハ言ッテマセン ”
「こいつ、弁護士をハメやがった…!
ほなせめて報酬は!?」
” 命ヲ助ケタジャナイデスカ。
命ノ価値ハ何ヨリ高価 ”
「つまり、無報酬!? 酷い!!」
堪忍したれや…。
ところで僕、あの人外クライアントにスマホの番号教えたっけ?
そうして僕は無報酬の仕事に身を費やすことになったんだ…。
ホンマは無報酬の仕事なんてやらんとこだけど、契約は契約だもんな。
それに僕がやらないと地球が侵略されるって話だし。
人類を救うっちゅう意味では、プロボノ活動!
非公式の公益活動やな!ちくしょう!
巨大ロボットに乗り込んで人類を守るとか
確かに小さい頃は憧れたさ!
でも子供のときは無報酬の仕事がこんなにも悲しいなんて考えもしなかったんだ!
今思えばほとんどの正義のヒーローって無報酬じゃなかったか!?
そんなのに憧れるとか、我ながら純粋だったな!
夢は『叶えば良い』というものじゃないということが身にしみて分かったよ!
おもむきの違う小説をいろいろ書き試しています。
弁護士ものとしては3作目になりますかね。
今回は、怪獣モノで弁護士モノを書いては?
という意見をいただいたので書いてみました。
どうせーっつーんじゃーーーー!!
書きたいところとしては、怪獣と弁護士とクライアントとナビゲーターで繰り広げる、ほのぼのディザスターものだった…。