6 高度な存在
一部予定外の怪獣退治が入ったとはいえ、なんとか残業をせずに帰宅できた。
ちゃんと乾燥パスタも忘れず買って帰ったし!
で、本日の夕食は僕もB・U氏と一緒に作りました!
簡単に作れて、応用も効くというアヒージョ。
レシピサイトによるとオリーブオイルとガーリックさえあれば何でも美味く食えるという触れ込みだったね!
具材に冷凍のシーフードを使えば、ストック食材で作れるという優れもの!
それと焼いたフランスパン!
「ほとんど手間がかからない料理でしたね」
「そ、そうやね」
せっかく二人がかりなんだしもうちょっと凝ったメニューをチョイスすべきだったか……。
というか、あまりに手間がかからな過ぎて、僕の料理のレパートリーが増えるというほどでもなかったし。
「国府谷先生がオリーブオイルを多めに購入してきましたから、またいつでも作れそうですね」
「そうなんですわ。今回は冷凍シーフードを買うて来ましたけど、具材に茹でたブロッコリーやナス、ジャガイモ、そのあたりを使えば野菜が補えて良いかなと」
確かに簡単な料理だったけど、オリーブオイルとガーリックの組み合わせはええな。
美味い!
でもこれ、酒のつまみにも良さそうであかん。
酒欲しくなるわ。
「お酒の前に打ち合わせしませんか、国府谷先生」
冷蔵庫の中のビールを出そうとしたのをB・U氏に悟られた。
そうでした。
今日は怪獣退治もしたし、打ち合わせせんとあかんかった。
「ええと、まず事情を説明しときます?」
「さきほど手動で同期しましたから事情説明は省いて大丈夫です」
毎回コレなもんでB・U氏との打ち合わせは楽だ。
「ほな本日コウモリ怪獣が愛媛に出現した件について、何か分かることありますか?」
今回も怪獣の出現は日本国内。
けど、一応大阪からは外れている。
「そうですね。怪獣の出現が国府谷先生をターゲットにしていると仮定した場合、敵はかなり高度な存在である可能性が高くなってきました」
「そうなんですか?なんでまた」
「私が配置した国府谷先生の『要素』について、原始的なものから順に配置する計画を立てているのですが、それに怪獣が掛かる様子がないのです。
となればもっと高度な『要素』……、人間に分かる言葉で説明は不可能ですがある程度寄せて説明すると、例えば隣接次元陰影や投影思考波紋痕などを検知しているのかも知れません。
そう仮定するのであれば、相当程度高度な存在が怪獣の背後にいるとも考えられます」
「すんません、さっぱり分かりませんわ。
というか『背後』ってなんですか。
怪獣にバックがあるとでも?」
「怪獣が連続して出現していることから考えても単騎的存在である可能性は低いでしょう。
また、国府谷先生も戦って分かっていると思いますが、怪獣自体の知能はそこまで高くないように思われます。あれが『高度』とは考えにくい」
「そうかも知れないですね」
今まで割とシンプルな手段で倒せたのも、相手が比較的単純な動きを取っていたからと言える。
確かにいくら地球の文明で対処不能な強さを持ってるとしても、知能が単純な存在が『高度』とはちょっとチグハグだもんな。
「ともかく『要素』については順次、ランクを上げて対応していきます」
「お願いしますわ。
しかしやっぱりおかしいですねぇ。そんな高度な存在が背後にいるとして、どうしてこう毎回、僕程度に倒されるような怪獣を送りこんでくるんでしょうね」
「ご謙遜を。今回の戦いも見事でしたよ。
武器の生成精度をあそこまで高めるとは」
今回は調子良かったのもあったけど、武器の生成がすっごく早くなったよね。
「にしても小型の六法投げてしもうて。
まあ六法は小型いう割には年々大きくなるんですけどね」
条文って、増える一方で削除されることは滅多にない。
そのため社会が発展するに伴い、法制度はどんどん複雑になっていく。
だから六法全書も毎年重くなるという傾向がある。
って六法事情はこの際どうでもいいか。
「怪獣の件ですが、せめて複数体同時に送り込むとか。本気でエクスディクタムを倒そうとするならもっとやりようがあると思うんですよ」
それができない事情があるんだろうか。
「それに関しては、地球から数光年の遠い場所から送って来てる場合など、送る側での微調整が難しい事情があるのかも知れません。
しかしこちらもまだ推測が立てられるほど明確には分からないのです。
怪獣がどこから来ているのかについても軌跡から計算をしているのですが、これも奇妙なことに始点が合致せず解答が出ないままなのです」
結局分からないことばかりだな。
一応の推測がついたのは『高度な存在がバックにいるかも』くらい?
「私の方からも国府谷先生に確認したいことがあります。
先ほど手動同期を行ったところ、わずかな時間なのですが今回もエラー部分が出ています」
「エラー? またですか」
「はい。またです。
確認のため密着接触型同期を試して良いでしょうか」
「やめてください」
「了解しました」
だから密着接触型同期ってなによ……。
いやいや知りたくないです。
変な好奇心とか持っちゃアカン僕!
「で、エラーってのは、ひょっとして僕が脳震盪を起こしていた間ですかね?」
つまり、あのヒトに会っていた間。
「その通りです。『エラー』という形になる原因が分かりません。
国府谷先生の方で何か思い当たる節がありますか?」
「はあ、まあ……!
そう!そうだB・Uさん!
エラーの間、今回もあの美しいヒトに会ったんですよ!
そんであのヒトの言葉が翻訳出来たんです!」
「翻訳ですか。エクスディクタムに順応が進んでいるようなのは何よりです」
その点もちょっと確認したいとこはあるんだけど、まずはあのヒトの話。
「それがですね『君を助ける』って聞こえたんです!
これって好意的ってことですよね。
前回といい、僕がちょっとピンチのときに現れることから考えても、僕に味方がいるってことなんじゃないかと思うんですよ」
B・U氏が僕をじっと見ている。
サングラスは掛けていないけど、最近は自分の顔に見られるの慣れたな。
考えてみたら鏡でいつも見る顔だもんな。
「国府谷先生はその『美しいヒト』が味方であって欲しいと考えているのですね」
「え? そんなの当たり前じゃないですか。
敵より味方が多い方がええでしょ」
「国府谷先生がそう望むのであれば、そうであると良いのでしょうが。
しかし今の段階では『味方』と考えるには少々理解できない部分があることはお伝えしておきます」
「何かおかしい部分でも?」
「前にも言いましたが、私やナビゲーターの認識を妨げるほどの高度な存在である可能性があります。そのような高度な存在が、意思疎通に不自由を来すとは考え難いのです」
「そうなんですか?」
「国府谷先生がエクスディクタムを通じて翻訳して初めて意思の疎通ができたという話を前提に考えるならば奇妙です。
高度な存在であるなら自身が翻訳能力を備えていてもおかしくはない。
わざわざ国府谷先生に依存しなくても意思疎通を図れると考えるのが自然でしょう」
ええと……。
多分、そのへんって、宇宙規模の常識とかなのかなぁ。
僕には何が奇妙で何が自然なのかサッパリ分からんです。
とりあえずなんかアタマを切り替えるために……。
そう、アレですね。
「よう分かりませんけど、でも今度会ったときにはもっといろいろ聞いてみますわ。
多分、前回よりもコミュニケーションは取れると思いますし。そしたら謎も解けるでしょ」
「そうかも知れませんが」
「でしょ? やっぱり、他人との関係構築には会話が基本だと僕は思うんですよ。
B・Uさんとも結構しゃべってそれなりに相互に分かりあえたと思いますし、他の宇宙人との間でもきっと友好関係が保てるんじゃないですかね~」
んー。
アヒージョって味が濃いから、飲み物がもっと欲しくなっちゃうな。
もう一本っと……。
「国府谷先生、まだ明日もお仕事がありますし、ビールは1本までにした方が良いのでは?」
ええと。
そうでした。明日もお仕事ありますね。
だからもう1本だけ……。
「国府谷先生、さらにビールを飲むのであればつまみがないと悪酔いします。
パスタ茹でましょうか?」
「おお、ええですねぇ。
アヒージョのオイルでパスタ食いましょ~」
「それとまだ風呂に入っていませんから深酒は避けた方が良いかと」
そんな感じでいつもとあまり変わらない平日の夜は更けていくのでした。
変わらないといえば、B・Uさんって、ビール飲んでも全く顔色とか変わらないですねぇ。
宇宙人って不思議やね〜。
5章ここまでです。
また書き溜めたらまとめて6章投下するかと思います~。




