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6 一夜明けた地元では


 怪獣クイラーを倒した次の日。


 僕は朝には事務所に行き、来訪者との打ち合わせをこなし、必要な指示を事務員の米山さんにして、空き時間は起案作業、といったごくごく普通の一日を過ごした。



国府谷こうだに先生、お茶をどうぞ」


 事務員の米山さんがお茶をいれてくれた。


「お。ありがとう。そっか、もう3時か。

 さっき牧田さんがおみやげに持ってきてくれた『大阪バナナシュークリーム』食べよか」


「そうおっしゃると思って出してきました」


 おやつを楽しみにしている米山さん、ちょっとかわええな。

 って、僕よりかなり年上の女性に『かわいい』は失礼か。


 事務所に来るお客さんは、ときどきお菓子を手土産に持ってきてくれる。

 ちゃんと報酬はいただいてるから気を遣わなくていいって言ってるんだけどさ。

 でもせっかくのお菓子なので、ありがたくいただきます。


 応接テーブルで米山さんと向かい合って『大阪バナナシュークリーム』を食べる。

 でもなんで牧田さんはこのお土産をチョイスしたんだろう。

 地元応援かな?

 うまいけど。



 お茶を一口飲んだあと、米山さんがふと言う。


「なんか変じゃありませんか?」

「ん?」


「いえ、昨日ですよね。怪獣が出たのって。

 それで裁判所も壊されて。

 死者こそ出なかったようですけど。

 それで今日、こんなふうに普通に仕事してるの変な感じしません?」


「ああ」


 そう言われてみればそうかも。



「朝から国府谷こうだに先生があんまり普通に仕事してるから、なんだか違和感があります。

 普通、最初に昨日の怪獣の話とかしません?」



 ……ヤバい。


 怪獣との関係性を疑われないように敢えて考えないようにしていたけど、それが裏目に出てしまった。

 米山さんみたいに頭が良くてカンが鋭い人がおかしく思うのは当然かも!



「そうだね。昨日の怪獣騒ぎ、どうだった?

 米山さんの家とかは無事?」


 とはいえ僕だってプロの弁護士だから、動揺は顔には出しませんよ。

 こういうとき「いや今日の来客は受任に繋がる大切なお客さんだから気になっちゃって」とかいう下手な言い訳をするとかえって怪しい。

 ここはサラッと流すのがいい。



「ええ。うちは現場からは結構離れてますから。

 むしろ国府谷こうだに先生のご自宅の方が近いくらいで。

 それより……」


 なんだ? 内心ドキドキ。



「怪獣の話題、気になりませんか?

 TVつけてみちゃダメでしょうか」


 あ。そうだ。

 確かに、普通なら震災やら事件が起きたら、近隣の人達は気になって報道に注意を払うはず。

 僕ときたら……。


 やっぱりこの異常な事態の連続で感覚がおかしくなってるのかも知れんな。

 B・U氏がうちにおることだって慣れてきてるし。



「僕も気になってたんだ。

 TVつけてみようか」


 といっても事務所内にTVはないので、PCモニターでネット配信のTV番組を見ることにします。


 お。破壊された大阪地裁の映像が流れている。



『昨晩は暗くてあまり判別できませんでしたが、朝を迎え、巨大生物の破壊のすさまじい痕跡が見て取れます』


 そうか。

 昨晩は当たり前だけど夜だったんだ。


 エクスディクタムを通して見ていたからかな。

 全く暗さを感じなかった。


 怪獣クイラーとエクスディクタムの映像はほとんど流れない。

 やっぱり夜だったから撮影環境が悪かったんだろう。


 それに、出現から速攻で倒したからプロの撮影者が間に合わなかったんだと思う。

 自衛隊もマスコミも消防車もまだ現場に来てなかったし。


 センセーショナルな映像がほとんどないため、瓦礫と化した裁判所とか、付近の歩行者へのインタビューが流れる。



『地元の方たちは怪獣についてどう見ているのでしょうか』


『夜だったから帰宅していて直接見ていないんですよ』

『前に新潟にいたのと同じですよね?

 日本はどうなっちゃったんですか』

『こわいねぇ。青い方って正義の味方なんやろか』



 あんまりおもろないな。


「うーん。不謹慎かも知れませんけど、地元に怪獣が出たというのに映像がほとんどないのって悔しいですねぇ」


 米山さんも同意見みたい。


「そやね。景気良く大阪城を怪獣が破壊するシーンとかあったら全国で何度も放送されるんだろうけどねぇ」


 他人事感を出すために、敢えて不謹慎な話題にしてみる。

 まあ、終わっちゃえば少しくらい不謹慎な話題も良いもんだよ。



国府谷こうだに先生も、今日裁判所に行く用事があったらインタビュー受けていたかも知れなかったですね」


「マスコミに出るのはもっとカッコ良い場面がええなぁ。

 おっきい事件で勝訴判決もろたときとか」


「そういう事件は手掛けないんですか?」


「機会があればね」



 とか米山さんと会話をしていると、TV画面はニュースキャスターと解説員の話に移った。


 あ、あの解説員、前に見た原間さんや。

 怪獣がご専門なのかな?



『解説員の原間さん、今回の怪獣も以前出現した2体とは別種のようですが、この怪獣と戦っている青い方は以前と同じものに見えますね』


『そうですね。今回は今まで以上に映像が不鮮明ですが、青い方は以前2度出現したときと同じ個体に見えます。

 もちろん単に似ているだけという可能性も否定できません』


『やはりあの青い個体が怪獣を退治していると見るのが妥当なのでしょうか』


『分かりません。ですが最初千葉県に出現し東京まで移動したときにはかなり長時間怪獣によって都市が破壊されたため、被害は甚大なものでした。

 それに比べて青い個体の出現後は被害が著しく抑えられていると言えます。

 今のところ青い方は私達にとって有益な行動をとっているようにも見えます』


『前回はこの個体について、操作しているのが日本人である可能性について言及していましたが』


『そうですね。その人物もこの番組を見ているかも知れません。

 何かメッセージを送ってみたいところです』



 ぎく。

 見てます。



『怪獣のことなど、我々にとっては謎なことばかりです。

 何か分かることがあれば教えて欲しいですね』



 残念ながら僕にも分からんことばっかりなんですわ。

 B・U氏が調査してくれるとは言ってたけど。



『ところでこの青い方については名称が定まっていませんね。

 政府は当初、現れた怪獣を「千葉第一巨大生物」とし、青い方を「千葉第二巨大生物」と呼称していたようです。

 ですがその後新潟・大阪と出現していますから、その名称は不適当ですね。

 今は政府関係者もその名称を使っていないようです』



 うわー。

 エクスディクタムは『千葉第二巨大生物』とか呼ばれてたの?

 ダサいわ〜……。


『ネットなどでは「巨大人型兵器エクス」と呼ばれているようですね』



『エクス』!? マジ?

 名前、かすっとるやん!



『恐らく、未知の存在を示す『X』の意味で使っているんでしょう。

 既に主流らしく、うちの局でもその名称を使う方針でいきそうです』


『原間さん、そんなこと今言って大丈夫ですか?』

『はは、いけなかったですかね』



 そっか〜。

『巨大人型兵器エクス』かぁ。


『千葉第二巨大生物』よりはよっぽどええよな。

 それにエクスディクタムは千葉じゃなくて東京から出現しとるんやで。



 ともかく僕も米山さんも『大阪バナナシュークリーム』を食べ終わったので、TVを消す。



 ところでなんで大阪のお土産ってパクリ臭いのが多いんだろうなぁ。

 『大阪バ○ナの恋人』とかもあるし……。


 そういえば以前『大阪プチバ〇ナ』に関しては商標について訴訟あったね。

 東京ばな○の商標権を侵害してるのではって事件だったかな。

(※知財高裁平成19年(行ケ)第10205号商標登録取消決定取消請求事件)


 我が地元ながら、どうもネタを追う風土がここ大阪にはあるというか……。


 エクスディクタムも、もうちょい経ったら菓子とかのネタになるんかなぁ。




本章ここで終わりです。


国府谷先生の地元の裁判所を壊せたので悔いはありませぬ。

なお、大阪バナナシュークリームは想像上のお菓子ですので、実在しません。多分。


怪獣モノなんて軽いノリで始めて、まったく続けるつもりがなかったのに…。

いただいた感想とか評価が嬉しくて書いてしまう自分がチョロ過ぎる。


またしばしストップして、次章書き溜めたらまた連続投下するかも。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 今話もありがとうございます! [気になる点] >「そやね。景気良く大阪城を怪獣が破壊するシーンとかあったら全国で何度も放送されるんだろうけどねぇ」 >他人事感を出すために、敢えて不謹慎な話…
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