3 怪獣クイラー
B・U氏は普段は僕の意向に沿ってくれるけど、怪獣が出たときは問答無用だよな。
怪獣が出現したということで、僕はまたも『エクスディクタム』に転送されたようだ。
周囲は暗闇に包まれている。
「国府谷先生! ひさしぶり!!
さっそく神経回路を繋いじゃうわね!」
ナビィさんの声だけが聞こえる。
――― って、今回はたった2週間しかインターバルなかったよ!
それにいっぺんスマホで話したよね。
せっかく連絡先教えてくれたから、通じるか試しただけだけど。
「電話で話すよりもこうやって国府谷先生と脳神経でダイレクトに繋がる方がいいに決まってるわ!
ということでニューロン交感開始」
――― はあ。
うん、まあ、ええけど。
そしてまたトコロテンのようなものが僕にまとわりついてくる。
コレ接続するときって、なんだか頭が一瞬痺れるような感じがして……。
それに、電気マッサージを受けるような心地良さがあるね。
お。視界が明るくなった。
接続されたんやな。
やっぱ三回目、いろいろ慣れたようだ。
状況を把握する余裕も出てきた。
多分、僕自身は今も暗闇の中にいるんだと思う。
だけど僕は今、自分の目でモノを見ていない。
自分の身体で動いていない。
本来の肉体に対する感覚が希薄になっていて、代わりにエクスディクタムを通じて感じる五感の方が鋭敏になっているようだ。
エクスディクタムの『カメラ』?で取り込んだ光景を自分の目で『見た』と脳が感じているんだろう。
だから今の僕にとっては建造物など周囲の物体は小さく見えるし、遠い場所までの距離は近く感じているんだろうな。
エクスディクタムを『操縦』してるというよりも、まるで僕がエクスディクタムそのものになったような一体感を感じるよ。
さてと。
今回はどこに転送されたのかな~~~?
――― ん?
えーと?
あの、ナビィさん。僕、どっかに転送されたんですよね?
「そうよ」
――― すっごく見覚えのある光景なんですけど?
僕が今立っている場所から、川を挟んで向こう側に、よう見慣れた建物が並んでいる気がする。
僕の記憶が正しければ、あれは左から、大阪地方裁判所、天満警察署。
そんでもってさっきまで僕が委員会に出席していた大阪弁護士会館。
ちょい待ち!!
地元やんか!!
ドストライクに地元やないか!!
ホンマにフラグ回収するとは思わんかった!
怪獣! 怪獣はどこ!!
いた!!!
大阪地裁の建物の背後におった!!!
地裁北門近くの新館は完全に瓦礫と化してる。
他に被害はまだ出ていないみたいだから、あのあたりが怪獣の落下地点なのかも。
やっぱり怪獣って、宇宙から飛来してきてるっぽいな。
ええと、形は……。
今回は何かに例えるのは難しいな。
なんというか、トゲトゲしている。
ゴリラのように前のめりの姿勢で、全身から太いトゲが何本も生えている。
これは……。攻撃すると痛そうだね。
なんて名前で呼んだらいいかな。
『トゲ怪獣』?
もっと気の利いたネーミングはないかなー。
トゲの怪獣だから『怪獣クイラー』なんてどうかな?
(※ quill ヤマアラシなどの針)
「いいんじゃない?」
――― おお、ナビィさんもそう言ってくれたことで、怪獣クイラーね。
ネットでもよく怪獣の名前を募集してるから今度コレで投げてみるか。
公式になるかも!
って、僕は何を呑気に考えているんだろう。
怪獣が街を破壊しているわけで、多くの人が犠牲になるかも知れないんだから。
もう少し緊張感があってもいいはずなのに。
以前から何となく感じていたけど、この機体の中にいると妙に危機感が薄くなるというか。
「それはエクスディクタムの神経細胞の影響で認知機能や思考速度が加速して時間が緩やかに感じられるからじゃないかしら」
――― そうなん?
いや、そうかもな。
後でTVで映像を見る限り、機体の動きは僕の認識よりもずっと速かったし。
とにかく街の被害が大きくなる前に頑張って怪獣を退治してしまわんとね。




