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初外交はハードモード


 こちらは、大体の世界観を説明する回です。できれば全て読んでいただきたいのですが、長くて疲れる!という読者様のために……


 要点として、


・主人公が日本で平和な人生を送り、子供と孫に看取られて老衰した後、人間の王国の貴族の三男に転生。


・エクレール教という、人間至上主義の宗教がある。獣人や魔族が嫌われている。


・主人公が所属しているルベル王国が、獣人達の国である獣王国ヴァイスと戦争中。人間側が圧倒的に不利。


・主人公が、お馬鹿な国王と側近達の命令で、外交官として獣王国の軍人と交渉することになった。


・主人公の前の外交官達が一人も帰って来ないため、主人公も無事に帰ることができない可能性大。


・初外交は超ハードモード&無理ゲー(と、この時点では主人公はそう思っている)。


 ということが理解できれば、この話を飛ばして、次に進んでいただいても問題ありません!





 物心がついた頃。俺は自分の前世を思い出した。



 前世の俺は日本人。名前はごく普通の、ありきたりな名前だった。


 平和な学生生活を過ごして、大学を卒業。その後は社会人になり、愛する女性と出会って結婚し、子供もできて、孫もできて、最期はその子や孫達に看取られて死んだ。


 ようやく先に逝ってしまった最愛の妻と会える……そう、思っていたのに。



 何故か俺は、転生した。それも、前世とは全く関係のないファンタジーな世界に。



 いや、全く関係ないわけでもないか。日本では異世界転生物の小説はたくさんあったしな。

 俺も若い頃はよく読んでいた。……爺になってからも、皆に隠れてこっそり読み続けていた。だって面白いし。



 それはさておき。


 今世の俺、レイモンド・ベイリーは人間の王国……ルベル王国に所属している貴族、ベイリー家の三男だ。現在は王国の文官として働いている。


 しかし。王国といっても規模は小さいし、俺も貴族とは言えそこまで裕福ではない。それでも、かなり貧しい平民達と比べたら大分ましだが。



 王国がある大陸――クローマ大陸にある国は、王国以外に三つ。


 一つ目。魔族の国、ノワール。所謂、魔王が治めている国だ。数多くの魔族が暮らしており、この大陸では二番目に大きい国だな。


 二つ目。人間の帝国、アウルム。王国とは別の人間が治めている国で、この大陸では最も多くの土地を持つ、大規模な国だ。王国の戦士よりも、優れた戦士達が集っているという。


 三つ目。獣人の国、ヴァイス。見た目は獣耳としっぽが生えた人間である、獣人が暮らしている国。前世の獣耳好きなら大興奮だな。


 俺はそれ程ではないが、動物は好きだ。ケモミミもまぁ……悪くはないと思う。いつか獣人と仲良くなってみたい、と考えたこともあるが――



 王国に所属したままでは、それがかなり厳しい。



 何故? と思ったであろう、そこのケモミミ好きの方。実はこの王国、とんでもない宗教があるのだ。


 その名は――エクレール教。女神、エクレールを唯一神と崇める宗教である。

 王国の民は、全員この宗教に入信することが義務付けられている。……ハハハ、立派な宗教国家だなぁ。反吐が出るほどに。


 さて、このエクレール教の何がとんでもないのか。


 それは――人間至上主義。人間以外の種族は、全て迫害の対象となる主義だ。

 人間以外は全て不浄な種族である、だとさ。信じられないだろう? 俺もこの宗教のことを知って頭を抱えたよ。


 人間は能力的に、最も優れた種族?


 人間こそ、この世界に存在する全ての種族の頂点に立つべき?


 人間以外の種族を奴隷にすることが、当たり前?



(いやいやいやいや馬鹿か? 確かにこの世界では一番数が多いし、集団であれば強いだろうが、個人の力は明らかに劣っているだろ?)



 まぁ、そもそも最も優れているとか最も劣っている、なんて表現自体がおかしいな。

 それぞれの種族には、それぞれ優れた点があるのだから、人間の全てが優れているわけではないし、他の種族の全てが劣っているわけでもない。


 だが、そんな考えを王国内で少しでも口にすれば死刑が待っているので、迂闊に口にすることもできない。難儀なものだ。


 おそらく。この国には俺以外にも、そう考えている人間が僅かでもいるはずなのだが……この国では、誰が聞いているのかも分からないからな。

 いたとしても、死刑を恐れて口にしようとしないだろう。



 で、ここまでが前置きだ。次からが本題。……長いよな。すまない、もう少し付き合ってくれ。


 ここからが、俺の命に関わることなんだ。



 現在、王国は滅亡の危機にさらされている。……何故かというと、獣王国との戦争で負け続けて領地を取られたからだ。


 獣王国は元々、この大陸で一番領地が少ない国だった。しかし、数年前に王が代替わりした日以来、破竹の勢いで勢力を拡大させている。


 その標的となったのが、当時のクローマ大陸で三番目に領地が多かった、ルベル王国。


 国の大体の位置関係としては、北から西にかけて魔王国ノワール、南に王国ルベル、東に帝国アウルム、そして中心部に獣王国ヴァイスとなっている。


 昔は、魔王国と隣り合っていた王国側の領地が、西側に一つだけあったのだが……獣王国の王が代替わりした直後、魔王国と同盟を結び、魔王軍と協力してその領地から王国軍を追い出した。


 そして、残った領地を占領した獣人達は、これまで迫害されてきた鬱憤を晴らすかのように猛進し、王国との戦争で勝ち続けた。


 王国の国王と貴族達は、この侵攻を受けても最初はあまり焦っていなかった。所詮は不浄な種族だから、人間に劣る種族だからと侮っていたのだ。



 それがようやく焦り始めたのは、多くの領地を取られて、国の規模がかなり小さくなった後だった。

 そこで初めて自分達の不利を悟ったのだ、あの馬鹿王に馬鹿貴族共は。


 その時には既に、王国は大陸で一番小さな勢力に変わり果てていた。いつ滅亡しても、おかしくない状態だ。


 それでも内乱が起こらないのは、皮肉なことにエクレール教のおかげだった。


 エクレール教では、同じ神を信仰する同士と争うことなかれ、という戒律がある。

 国王も国民も全員がエクレール教に入信しているため、誰も国を相手に反乱を起こそうとしなかったのだ。


 王国は今のところ首の皮一枚で生き延びているが、獣人達に滅ぼされるのは時間の問題だろう。

 なんとか滅亡だけは避けたいと、王とその側近の貴族達の命令で、獣人側に外交官が何人も送り込まれたが……一人も帰って来なかった。



 そんな状況下で、今度は俺が獣人側と交渉してこいと命令された。国王の側近の一人である、今世の父親に。


 王国では、三男以降は扱いが悪くなる。長男と次男以外は基本的にスペア扱い。だから俺も、王からの命令を受けた父親に、捨て駒扱いされたわけだ。


 自分の跡継ぎである長男とその補佐役である次男を、みすみす獣人に殺させないために。



(……おそらく、外交官達はエクレール教の信者として、獣人達に高圧的な態度を取って殺されたのだろう。どの外交官も、あの宗教の教えに特に感銘を受けていたそうだからな)



 まだ誰かが生きている可能性も無いとはいえないが、限りなくゼロに近い可能性だ。

 つまり。俺が生きて王国に帰れる可能性も、ゼロに近い。



「――年貢の納め時、というやつかな?」



 獣人族の代表者がいる街へ向かう、馬車の中。俺は思わずそう呟いた。

 とは言え、ただで諦めてしまうのは性に合わない。自分にできる限りのことをやって、それでも駄目だったら……潔く諦めるとしよう。


 もとはと言えば、人間以外の種族を迫害し続けた王国の人間が悪い。勝手ながら、王国を代表して彼らに一言謝ろう。


 自己満足にしかならないが。



(唯一の心配は……俺、外交の仕事はこれが初めてなんですよねー)



 初めての外交。――ただし、殺される可能性大。



(無理ゲーかよ)



 異世界転生したくせに、転生特典は何もなし。剣の素質もなく、魔法は攻撃魔法が一切使えない。


 使える魔法といったら、これさえあれば、この世界で必要最低限の生活を送る事ができるという生活魔法と、身体能力の強化や怪我の治療等ができる、補助魔法ぐらい。


 前世で柔道を習っていた経験があるが……あれは同じ人間なら多少通用するだろうが、人間よりも遥かに身体能力が高い獣人相手に通用するとは思えない。


 なんてこった! ハードモードが過ぎるぜ!



(脳内でふざけて無理にでもテンション上げないと、やってられないな)



 ところで、この世界で死んでも、向こうにいるであろう最愛の妻に会えるだろうか?





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