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合流





「では、君の仲間と合流するまでに、少しだけ空の旅を楽しんでもらおうか」



 そう言って、俺とジルを背中に乗せたロック……否、ルフが空へ舞い上がった。



「乗り心地はどうだい? 君達に風が当たらないように、調節しているんだが……」

「だ、大丈夫、です。むしろ、ルフ様に気を遣わせてしまって大変申し訳ありません」

「おや。そんなに畏まる必要は無いよ。さっきみたいに、ロックさんって呼んでもいいからね」

「いや、それは……恐れ多いので、遠慮させていただきます」

「困ったなぁ」



 ルフが苦笑いしている、ような気がする。多分、彼はもう少し気安い態度を望んでいるんだろうな。

 だがしかし、それは無理だ。相手が神の眷属だと知ってしまったからには、先程のように接することはできない。


 本当は背中に乗ることも遠慮したかったのだが、ヴェーラ達と早く合流するためには、彼の厚意に甘えるしかなかった。

 神の眷属の背中に、俺のような矮小な人間が乗ってしまってすみません。申し訳ない気持ちで一杯です。


 初めての空の旅をもっと満喫したかったのに、これでは緊張し過ぎて純粋に楽しめない。



「レヴィに聞いていた通りだね。あの子は君のことを、人間にしては殊勝で礼儀正しい男だと言っていたよ。あと、もらったお酒が美味しかったって」

「レヴィって……レヴィアタン様のことでしょうか?」

「そう。この前会いに行ったんだが、その時に君とアドルフという獣人のことを聞いてね。レヴィが認めて祝福を授けたと言っていたから、私も気になっていたんだ」



 フットワークの軽い神獣様だな。空を飛んで行くにしても、イリス峡谷からラルゴ島付近の海域まで、かなりの距離があるはずだが。

 それに、飛んでいるところを地上にいる者達に目撃されたら、大事になるのでは? と聞いてみたら……



「あぁ、それは大丈夫だよ。そもそも、見えないからね」

「見えない?」

「神の眷属……神獣は皆、それぞれの神から特殊な力を授かっているんだ。それが、姿と気配を隠す力でね。この力を使うと、同じ神獣同士、もしくは神でなければ姿が見えないし、気配も感じなくなるんだ。だから、私が飛んでいるところを目撃されることも無い。海上でレヴィと話していても、神獣か神でなければ、誰も見えないよ」



 そんな、驚きの言葉が返ってきた。


 心当たりはあった。俺がラルゴ島でシエルと話していたところに、突然レヴィアタンが姿を現した、あの時だ。

 全く気配が無かったことが不思議だったが、あれがルフの言う特殊な力の効果だったんだろう。



「ちなみに、今も使っているよ。地上からは私の姿も、私に乗っているレイモンドとジルの姿も見えていない」

「なるほど、そうでしたか。……ということは、こちらから仲間達を探す必要がありますね」

「そうだね。私も今、気配を探っているところだよ。……あ、そうそう。君の仲間のことなんだが、ジルとの会話の中でクラフトの名前が出ていたね?」

「はい。……彼のことをご存知なのですか?」

「もちろんだよ。彼とは、たまに会って話すことがある」



 クラフトは、ルフと顔見知りだったのか。……ん? それならどうして、エヴァンがそのことを知らないんだ?



「クラフトには、私の代わりにイリス峡谷の主としての役割を任せている。私が動くと目立つし、この峡谷に住む者達が怯えてしまうからね」

「では、彼が使い魔であることは?」

「もちろん、知っているよ。ただ、クラフトには彼の主に『私の存在を明かさないように』と、口止めしている」

「そうなんですか?」

「あぁ。大昔、うっかりこの近辺で姿を現してしまって、大騒ぎになったことがある。私の姿を一目見たいと、大勢の獣人達がここにやって来てね……それ以来、私についての情報が流出しないように、気を使っているんだ」



 そういうことだったのか。エヴァンが聞いた神獣の噂というのは、その大騒ぎが原因だろうな。



「申し訳ありません。そんなことがあったのに、大変ご迷惑を……」

「いや、気にしないでくれ。今回はちょうど、潮時だと思っている。……レヴィが懇意にしている、魚人族の巫女。彼女の予言については、私もレヴィから聞いたよ」

「!」

「何か、良からぬことが起こりそうだからね。そうなる前に、おそらく渦中に巻き込まれることになる君達と、接触しておこうと思ったんだ。レヴィも私も、君達の力になりたいと思っている」

「……ありがとうございます。とても心強いです」



 本当に、ありがたいことだ。


 予言の中にあった、いずれ訪れる災いとやらの正体は、十中八九エクレール教のことだと思う。

 相手がそれだけならいいのだが、もしもアドルフの推測通り、女神エクレールも絡んでいたとしたら、間違いなく俺達の手に余る問題だ。


 そうなったら、神獣達の力を借りる必要があるだろう。



「……あ、見つけた」

「え?」

「獣人族が集まってる。ほら、あそこ。森の中に、ぽっかり穴が開いてるように見える場所があるだろう?」



 ルフがそんなことを言うので、少し身を乗り出して下を見る。

 隣でルフにしがみついていたジルが、器用に俺の背中に乗り移り、肩までよじ登って来た。俺の肩越しに彼も下を見たいらしい。頼むから、落ちるなよ?


 ジルに気を遣いながら、もう一度下を見た。……いた! 獣人族だ。しかし、数が多い。まだ遠くて個人を見分けられないが、明らかにヴェーラとエヴァンだけじゃない。



「もしかしたら、行方不明になった君を探すために、応援を呼んだのかもしれない。……おや? 獣神様の加護を持つ者がいるね。それに、レヴィに祝福されている」

「それって……アドルフか!」



 あいつ、何やってんだよ。今日だけはヴェーラの代理として大人しくしてろって言ったのに……!



「じゃあ、彼らのもとへ下りるよ。しっかり捕まって」

「はい。お願いします」



 俺を探すために人員を増やしたのであれば、早く合流して皆を安心させてやらないと。……怒られるだろうな。



 ルフが下に向かう途中で、何かを通り抜けた感覚があった。……多分、姿を隠す特殊能力が解除されたのだろう。現に、下から騒がしい声が聞こえ始めた。



「な、な、何だあれ!」

「でかい……!」

「総員! 戦闘態勢を――」



 あ、それは駄目だ!



「ちょっと待った! このお方は敵じゃない! 武器を収めてくれ!」



 ルフの肩から身を乗り出し、慌ててそう言った。神獣を相手に敵対行動を取らせてしまうのはまずい!



「えっ……!」

「レイモンド!」

「副隊長!」

「良かった! 生きてる……!」

「レイモンドさぁぁん!」



 皆が一斉に手を振っている。俺もそれに応えて手を振った。



「ふふ……なかなか、人望があるようだね。すぐに返してあげた方が良さそうだ」



 そんな言葉の後。ホバリングしていたルフの体が光輝き、一気に小さくなって人型になった。……つまり、俺とジルは空中に投げ出されたわけで――



「ちょっ、うわ!」

「ギャア!」

「おっと! 失礼」



 咄嗟にジルを腕の中に抱えた俺は下に落ちそうになったが、ルフが俺に手を向けた途端、その速度が急にゆっくりになった。

 体に風が触れる感覚がする。仕組みは分からないが、彼が風を操って俺の落下を止めてくれたのだろう。



「すまなかったね。レイモンド、ジル。先に君達の方を気にするべきだった」

「さ、さすがに一日に二度も落下するのは勘弁して欲しいですね……」

「ギャギャア……」

「本当にごめんよ」



 申し訳なさそうな顔をするルフと共に、地上に下りた。真っ先に駆け寄って来たアドルフが、俺の両肩を掴み――



「お前、大丈夫か! 怪我は――」

「ギャウ!」

「いってぇ!」



 その掴んだ手を、ジルに噛まれた。えっ、何で?





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