第38話 「初仕事⑤」
昼食で人心地着いてから、俺たちはまた歩き出した。
昼食が大きめなパン一つというのは、食べ終わってからだと少し物足りないと感じないこともない。ただ、満腹よりはずっと良いだろうということで、控えめにしているそうだ。
「それに、なんとか今日中に仕事がちゃんと終わったら、晩飯なり夜食なりは俺がおごってやるからな。その分頑張るんだ」
「よーし、言質取った!」
「ははは」
先輩はともかくとして、ネリーも疲れはあるだろうに、朝からあまりテンションが変わってない。おかげで楽しく仕事できて助かる。
スライムに出くわしてから少し休憩しつつ観察しよう、そういう話で進んできたけど、スライムより先に光る苔を発見した。そこで、頭の中で閃くものがあった。
「あ」
俺とネリーが同時に口を開いた。顔を見合わせると、彼女は笑顔になり、手で俺が話すように勧めてきた。同じことを考えたのかも知れない。先輩が俺たちの方を向いて「どうした」と聞いてきた。
「いえ、昼食のとき、スライムって何食ってんだろうって気になって……もしかしたら苔を食ってんのかなと」
「苔もスライムも緑色だし。ここの水も少し緑っぽいから、もしかしたら関係あるのかも」
俺の発言に、ネリーが付け足した。ハリーと先輩は黙ってうなずいている。そこで、俺は同僚に言葉を続けた。
「もし連中が苔を食ってるなら、苔でなんとか動きを誘導したりできないかと思ったんだけど。思ったような反応を見せなくても、ダメ元でやる価値はあると思う」
「……なるほど」
ハリーが首を縦に振った。なんとなくだけど、何かが一歩前進した気がする。ダメだったら考え直せばいいだけだ。
「苔はどうやって取る? 運ぶのはパン入れてた袋でいいと思うけど」
最初に思いついたのは通貨のたぐいだけど、力任せに苔を取ろうとすると変形するんじゃないかという気がした。何より、罰当たりなのでやりたくない。
そこで、俺はメモ帳から一枚破った。
「紙を何回か折り曲げればそれなりの強度になるから、後は曲げた紙の角をうまく使えば行けるんじゃないかな」
そう言ってネリーに一枚渡し、自分用にも一枚取った。
すると、ハリーが「俺もやろうか」と申し出てくれたけど、三人で作業するほどのスペースはない。とりあえずこの場は、工夫しようと言い出した俺たちが作業することにした。
膝をついて、紙で壁際の苔をこそぐ。今まで直接触らなかったからわからなかったけど、かなり床が冷たい。「冷たいの平気?」とネリーに聞くと、「やっさしー」と彼女は言って笑った。まぁ、たぶん大丈夫だろう。ヤバくなったらハリーに代わればいい。
苔をあらかたこそぎ落とし、袋に入れる。紙にこびりついた分が意外と多く、あまり集まらなかったのは少し残念だ。まだ壁と床の隙間に残った分は、ハリーが率先してブラシでキレイにした。
「じゃあ行こうか」
「これでうまく行けばいいね」
明るい調子でネリーが言った。もうちょっと集まってたらと思わないでもない。最悪、少しでも何らかの反応を見せてくれればってところだ。
そして……お待ちかねと言うと変だけど、昼食後最初の標的に遭遇した。「苔はどうしよう?」とネリーが聞いてくる。
「それなんだけど、壁際に張り付いてたスライムあっただろ? 核が隅っこにいたやつ。アレって苔とか食ってたのかなって思ってさ」
「あー、いたねそんなの。砂でちょっといじめたやつ」
ネリーが補足すると、ハリーと先輩が思い出したようにうなずいた。それを見て俺は話を続ける。
「もし、苔を連中が食ってるのだとして、苔を食うのに核がなんかの働きをしてるなら、核の上に苔を置いてみるのが手っ取り早いかなって思うんだけど」
「量は?」
俺の提案に、ハリーが問いかけてきた。
実際、それが問題だった。別に核の部分が何かしてるだなんて、そんな確証はない。与える量によっては違う反応を示す可能性もある。ちょっとずつ試して様子を見るかどうか。
そんな事を考えていると、ハリーが口を開いた。
「目立った反応を見たいなら、全部食わせてやるのが一番だと思うが」
慎重派だと思っていた彼からの、思わぬ提言だった。確かに、ちまちま調整するよりはわかりやすい結果のほうがありがたい。どうせダメ元なんだから、出たとこ勝負で丁度いいって気もする。
その後、ネリーと顔を見合わせ、全部投下することにした。
「じゃあ行くぞ~」
「どうぞ~」
スライムの核の直上に苔が落ちるよう、少し身を乗り出して腕を目一杯伸ばし、袋を振って苔を落とした。
すぐには、目立った反応がなかった。しかし、落胆するには早い。そう思ってじっと見守っていると、苔を落とした表面にさざ波のようなものが走り、苔が内部へ少しずつ沈んでいく。
このまま、ただ苔が沈むだけじゃマヌケすぎると思っていたけど、核にも動きが見られた。球形だった核が、少しずつ扁平な形になっていき、徐々に苔を向かい受けるような感じで上に登っていく。
この反応を見て「どうする?」とハリーが聞いてきた。
「たぶん、核が苔に接触した時にぶっ叩くのがベストだと思う。もしかしたら食うのに必死で、苔を受け入れるために上が柔らかくなってるかもしれない」
「わかった」
「確証はないけど」
「上に寄っただけで十分だ」
ハリーの口調は落ち着いていたけど、声になんとなく力強いものがある。なんとか、ここでチャンスをものにして、うまいこと片付けたい。
九体目ということで、本来なら俺とネリーが叩き当番だ。しかし、ハリーがかなりやる気なので、俺とハリーで叩き、ネリーには苔と核が接触するタイミングを教えてもらうことにした。
腕には疲労が蓄積されているのがわかる。それと同時に、少し力がみなぎってくる感じも。ハリーとデッキブラシを構え、時を待つ。
「今!」
号令とともにハリーがまず一撃、続いて俺がもう一撃叩き込む。叩いた感触では、柔らかくなっている実感はなかったけど、一発で掘れるクレーターの大きさが広がった感じはある。
俺がブラシを引き抜いて、ハリーがすかさず追撃を入れると、食事中の核をブラシが捉え、スライムは崩れ始めた。
予想以上にすんなりいって、あまり成功した実感がない。手を叩く音が聞こえ我に返ると、先輩が満面の笑みで拍手していた。
「奴にも飯を食わせるって発想はいいな、お見事!」
ネリーがこちらに駆け寄ってきて、三人でハイタッチした。
とりあえず作戦勝ちってところだ。とはいえ、問題もある。スライムが崩れていった、水路へ視線を落とすも、さすがに苔は残ってない。つまり使い捨てになってしまうということだ。
「苔がないと無理か?」
俺の考えを見透かしたように、ハリーが問いかける。思わず苦笑いして、首を縦に振った。
「苔の代わりに、何か使えないか?」
彼から提案を受けるとは思わなかった。
それからネリーと視線が合うと、彼女はものすごくいい笑顔で、俺達二人の背を何回か叩き、「歩きながら相談しよ?」と言った。
作戦会議はスライムの目の前で……みたいな方針を昼食の時に決めていたのが、もはやどうでもよくなってきている。俺達三人に続いて後ろを歩く先輩から、なんか温かい視線を感じた。
なんにせよ、イイ感じだと思う。ヤル気と言うか……ラクに済ませるためのモチベが上がってきた感じだ。早くもちょっとした満足感を覚えつつ、俺は二人に考えを切り出す。
「スライムがどうやって苔を認識してるかだけどさ、光か匂いのどっちかだと思う」
「まぁ、音はしないしね」
「匂いは……中まで届くのか?」
「表面が反応して核までなんとか伝えてるって可能性はあるけど、どっちかっていうと光が本命だと思う」
「なるほどね」
この地下水道では、持ち込みのランタンを除けば水と苔が一番の光源だ。苔の方がちょっと明るい気がしないでもない。
しかし、光度よりも色の方が重要なんじゃないかと思う。
「水よりも苔の方が濃い緑の光を出してるから、そっちに惹かれるんじゃないかな。だとしたら、なんとかそれっぽい光を出せたら、おびき寄せられると思う」
「緑の光かぁ。何かある?」
ネリーに聞かれ、俺は後ろの先輩を親指で差した。正確に言うと、先輩が持っているランタンを。
「先輩のランタンは黄色の光を出してるけど、アレが先輩のマナの色なら、まだチャンスがある」
「せんぱーい、どうなの?」
ネリーに呼ばれて先輩が寄ってきた。苔でスライムを倒して以来、結構嬉しそうに見える。
「俺のマナは黄色だよ。つまり、お前たちの中に緑っぽいのがいればいいわけだが……そもそもマナ使えるのか?」
「こういう話を持ちかけたってことは、リッツは使えるの?」
問いかけられ、俺は右手を差し出した。次いで、先輩から渡されたランタンの、指を乗せるくぼみに親指をあてがうと、青緑の光が放たれた。
「キレイでいいね!」
「ネリーは使えないのか?」
先輩の問いかけに、ネリーが手を伸ばした。先輩から受け取ったランタンに力を込めると、少し明るめのインディゴブルーの光を放った。”虹の谷”で言えば、俺よりも格上の、大変良い色をしておられる。
「今回の用途なら、リッツの方が合ってるね」
「そっすね」
「んも~、キレイでいいじゃん!」
少し卑屈に答えたら、優しく背を叩かれた。俺の色は、お嬢様を始めとして、青系の女性陣からは受けが良いような感じだ。単にネリーは寒色が嫌いって気もするけども。
「ハリーは?」
先輩が問うと、ハリーは少し肩を落とした。そんな彼を見て、先輩は近づいて肩に腕を回す。
「最初の仕事の前からマナを使える方が珍しいんだ。あまり気にするなよ。それに、お前さんの体格は俺だって羨ましいぐらいだ」
「ありがとうございます」
小さく頭を下げるハリーに、ネリーが近寄って「マナを出せるようになったら見せてね」と言うと、彼は少し笑顔になってうなずいた。
こうしてランタン担当が決まったところで、また歩き始めた。
「リッツは仕事のためにマナを使えるようにしてきたの?」
「いや、仕事の前に色々あって……ネリーは?」
「私は、狩りの都合でね。使えると便利な魔法があるからって、師匠に教えてもらったの」
「へー」
「つっても、大して使えないんだけどね。無いよりマシってぐらい」
初仕事の前にマナが使えるのは珍しいって話だったけど、そもそも冒険者で魔法を使える人はどれぐらいの割合なんだろうか。先輩に聞いてみると……
「ん~、Dランクになる頃にはみんなだいたいマナは使えるようになるが、魔導師ランクは半分もEに行かないぐらいだな。少し使えそうな魔法をかじって終わりってやつが多いよ。今のネリーみたいな感じで済ませるわけだ」
「魔導師ランクっていうのは?」
「魔法庁が監督してるランク付けだ。最初はEランクからだな。細かい話は魔法庁か、ウチの受付で聞いてくれ」
さすがに、魔法庁に出向いて聞きに行く気にはなれない。ギルドの受付で済まそう。
☆
さて、いよいよというわけでもないけど、十体目のスライムに遭遇した。こいつをランタンで何とか操作することができれば万々歳だ。行動を前に、「どうしよっか?」とネリーが聞いてくる。
「なるべく、苔の光量に合わせるべきかとは思うけど、どんなもんだったかイマイチわからないから、最初は抑えて少しずつ強くしよう」
「調整できるのか?」
「……マナを調整するような技術はないから、ランタンにパンの袋でも巻いて、漏れる光を調整する」
ランタンを一度床において、説明通りパンの袋を巻きつけ、発光部の瞳を袋のまぶたが覆うような形にする。再度ランタンを持って壁に向けて明かりを灯し、左手で巻きつけた紙を少し動かすと、壁を照らす明かりが大きくなったり小さくなったりした。
「なるほどね!」
「まぁ、奴が食わず嫌いして、本当に緑の光しか受け付けないならアウトだけど」
「やるだけやってみよう」
ハリーが前向きな発言をすると、ネリーがニッコリ笑って俺にうなずいた。
それから、スライムに給餌したときと同様に、腕を伸ばして核の上から光を注ぎ込む。
しかし、弱めの光で反応を見たけど、あまり効果があるようには感じない。
「一気に強めで行く?」
「いや……変に強くしすぎると、逃げられるかもしれない。ちょっとずつ強くしていって、興味を引いてみよう」
「女の子の扱いみたい」
「そんなに可愛くないって」
みんなで少し笑ってから、袋の覆いを指で少しずつ開けて、また様子を見る。スライムの上に腕を伸ばしっぱなしだと、さすがに腕が疲れてくる。
疲れないように試すって話だったし、今の状況ってどうかなと思い始めた頃に、観察していた二人が反応を示した。「動いた?」と聞くと、少し首を傾げつつも「たぶん」とネリーが答えた。「上に動いたと思う」とハリーも同意した。
ランタンの光は、現状でもかなり絞ってある。多少強めたぐらいでは驚かれないだろう。ほんの少し絞りをゆるめて、また様子を見る。
すると、少しずつではあるものの、スライムの反応が強くなってきているようだ。観察している二人の興奮から、それがわかる。
「もう少し、光を増やそうか?」
「この調子なら、もう少し増えても大丈夫だと思う」
ネリーの意見を受けてまた光量を増やすと、上から見ていてもかすかに核が動くのがわかった。たぶん、方向性としては成功だろう。問題は、核がどこまで近づいてくるかだ。
「だいぶ上まで寄った。これぐらいで打ち始めよう」
「もう大丈夫か?」
「腕、疲れただろう」
ハリーに指摘され、少し苦笑いする。疲れないようにしつつ色々試すという、自分で言い出した前提を思い切り崩しているので、少し悪い気がした。
しかし、「後は私達がやるから、ね?」とネリーが笑いながら言い放つと、ハリーも力強くうなずいた。俺が一人で、あれこれ考えすぎてるだけなんだろうか。策が形になりつつあるなら、前提も気にしなくていいのかもしれない。
結局、今回のスライムもハリーの二打目で消滅した。これまでに比べると、長足の進歩だ。
「今の方法で、ほぼ問題ないと思うが」
ハリーが話し掛けてきた。実際、今が一番調子いいぐらいにも感じる。
しかし、もうちょっとスライムの様子というか、生態を探ってみたい、そんな気持ちも湧き上がってきた。
「一撃で倒せるようになるまで、もう少しランタンの調整を試してみてもいいんじゃないかと思うけど……どうだろ?」
俺の提案に、ハリーは少し呆れたように笑って言った。
「あまり、無理はするなよ」
☆
「あー、疲れた」
全行程を終えて地上に出ると、日が傾きかけていた。夕食にはいい頃合いかも知れない。
結局倒したスライムは計17匹になった。スライム一撃死は結局ムリで、苔やランタンを使って核を誘導して、何とか計二発ってところだった。それでも十分すぎる進歩だとは思う。
先輩の案内でギルドへ向かう。その道中で、ハリーが少し申し訳無さそうな顔をして話し掛けてきた。
「悪かったな」
「何が?」
「いや……無駄な努力で疲れたらどうする、みたいなことを聞いただろ」
「そこまでキツい言い方だっけ?」
「そこまでは言われてないよ」
工夫しようという提案に対し、彼が及び腰だったのは確かだったけど、懐疑的というよりは確実にこなしたいってだけなのだろうと思って、あまり気に留めていなかった。
しかし、彼自身は案外気にしていたみたいで、こうして謝罪されてしまった。真面目というか、律儀というか。彼に対しては、そういう印象が完全に固まった。
「言い出した俺だって、あまり自信なかったからさ。うまくいってよかったよ。それに、ハリーの体力には助けられたし、一緒に働けてよかった」
「うんうん。せっかくだし、三人で円になって握手しない?」
言うが早いか、ネリーがずいずい身を乗り出してきて、俺達の手を掴んだ。ハリーとも握手する。流石に厚いとうか、ゴツい手だ。
ふと気になって先輩の方を見ると、俺はいいよと言わんばかりに、笑って手で追い払うジェスチャーをしている。二人もその様子を見たらしい。円の中に向き直ると、三人で顔を見合わせて笑った。
「じゃあ、何ていう?」
「お疲れさまでした、でいいんじゃない?」
「そうだな」
「おっけー!」
ネリーの音頭に合わせて、三人で声を揃えて互いを労った。
その後、先輩が俺たちに話しかけてきた。
「盛り上がってるところ悪いけど、ギルドへ行くぞ。終わりの報告までがお仕事だからな、少し急ぐぞ」
先輩は小走り気味にギルドへ進んでいく。その様子を少し訝しみながら、俺たちも後を追った。
ややあってギルドに近づくと、早朝と違って受付周りには冒険者の方が見えた。何か依頼を受けたりそういう話をしているのではなく、談笑しているというか、単にたむろしているようにも見える。
すると、先輩が少し足を速めて中に飛び込み、叫んだ。
「他のチームは!?」
「おい、もう終わったのか? ズルしてねーだろうな?」
「ショートカットもアドバイスもしてないぞ!」
「まじで!?」
中で何やら盛り上がっている。騒いでいた先輩方が、俺たちの方に笑顔を向けながら、じっと見つめてきた。その様子を見て、ネリーが耳打ちしてくる。
「なんかさ、少し恥ずかしくない?」
「ちょっとね。何か盛り上がってたし」
「だからって入らないわけにはいかないだろ」
ハリーが少し先に歩み出た。彼を盾にするようで少し情けない気もするけど、俺はあまり目立ちたくない立場だからと自己弁護して、彼の勇敢さに甘えることにした。
俺達三人がギルドの中に入ると、おそらくこのためだけに集まっていたであろう冒険者の先輩方が拍手してきた。受付にはラナレナさんがいる。最初は笑顔の彼女も、なかなか拍手が止まないのに少し渋い顔をして、手振りでみなさんの拍手をやめさせた。
それから軽く咳払いをして、彼女は言った。
「一番乗りはウェインのとこのチーム。おめでとう!」
また拍手された。流石に恥ずかしい。少し前かがみになって後頭部を掻く。仲間の二人も似たようなものだろう。ラナレナさんは続けた。
「え~と、だいたい17時ってとこかしら? 記録つけ始めた中でも五本の指に入る好タイムね~」
「ラナさん、もっと早いチームもあったの? どうやって?」
ネリーが顔を上げて問いかけると、ラナレナさんは顔に少し困ったような微笑みを浮かべて答えた。
「一番早かったのは、通称”枠外”のチームね。昼すぎに終わったわ。棒術や槍術を教えてる道場の子がチームにいて、デッキブラシで瞬殺だったらしいわ~。始終走りっぱなしだったとかで」
「他の早いチームだと、やたら火起こしがうまい子ってのもいたな」
「自分の服をちぎっては火をつけて、スライム燃やしていったってやつだろ?」
「ああ、翌日風邪ひいたっていうアレな!」
話が盛り上がってきたところで、ラナレナさんがまた咳払いした。
「まぁ、あなた達の攻略法はウェインの報告書で確認するわ。報告書の受理と確認を以って依頼完了、報酬の受け渡しになるから、期待してたところ悪いけどまた後日来てね。お疲れ様~」
ラナレナさんがそう言うと、ギャラリーの皆さんも口々に「お疲れ~!」と言って手を振った。
手招きする先輩の案内で、俺たち三人もギルドから外に出ると、先輩が本当に嬉しそうな笑顔で話しかけてくる。
「やったな、一番乗りだったぞ!」
「先輩も鼻が高い?」
「バカ言え、俺は何もしてないからな。お前たちの頑張りの成果だ。よくやった、偉い!」
満面の笑みで、先輩は俺たちの肩を叩いた。疲れは確かにあるけど、それすらも少し心地よいくらい達成感があった。
「よし、今日は少し高めの店に連れてってやる! 好きなだけ飲み食いしていいぞ!」
軽い足取りで先を行く先輩を、少し遅れて三人で追う。
「また、この三人で何か仕事とかできるといいね」
「うん」
「ああ、そうだな」




