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【風神雷神】と呼ばれた双子、試験を受ける

長らくお待たせいたしました。申し訳ありません。


 先が思いやられるコウだったが、そもそもこっちは受け入れるなんて一言も言ってなかったと思い返す。


「いやいや、ミーナさんって最強の一角なんですよね。支障はないんですか?」


 そう言った後、「信じられないですけど……」とボソッと付け加えるコウ。


 聞こえたのか、声に出さないまでも「えぇっ!?」という反応をするフィルミーナ。


「無いと言えば嘘になります。ですが、この国には他にも、最強の一角の方がおられますし、騎士団長を任せることのできる人材は確保していますので、フィルミーナをお二人のお付きにしてもなんら問題ありません。ですから、好きにお使いください」

「そうです! ぜひ私をこき使ってください!」


 この親子、完全に似た者同士である。


 そしてフィルミーナのは、最早ドM発言にしか聞こえない。


「コウ、ミーナがいればこの世界のことについて粗方のことは知れるし、女王自ら差し出してるんだから、もらっておくべき」

「でも、お高いんでしょう?」

「今ならなんと、冒険者ギルドへの打診も込みで、19,800円」

「安い、買った! ……って、違う! なにどさくさに紛れて図々しいお願いしてるの!?」


 ツッコミを入れるが、この流れにしたのはコウである。


「構いませんよ? 女王の名のもとに、冒険者ギルドにお二人のことを伝えておきましょう。お二人の実力を鑑み、厚待遇にするようにと」


 ネルドラがあっさりと容認する。


「私も構いません」


 フィルミーナも同意し3対1の状況になり、勝ち目がないと悟ったコウは、潔く諦めたのだった。


 ◆


 コウ、ユズ、フィルミーナの3人は、城を後にして冒険者ギルドに向かった。


 その道中、フィルミーナが冒険者ギルドについての説明を行った。


「冒険者ギルドは実力主義でして、登録するには最高ランクであるS級冒険者との試合で善戦もしくは勝たなければなりません。ですが、まぁ、お二人の実力はS級程度では測れないほどありますから、登録は簡単にできるでしょう。王国最強の一角である私を倒したのですから」


 そう言うフィルミーナは誇らしげだ。


 コウとユズは揃って「それ、自分で言うんだ……」と呟いた。


 そんなこんなで、3人は冒険者ギルドへとやってきた。


 扉を開けて中に入ると、中にいた人達の視線が一気に集まる。


 普通ならその視線を気にしてしまうところだが、この三人は全く気にしていなかった。


 なにせ、コウとユズは元の世界では【風神雷神】と呼ばれるほどの有名なプレイヤーであり、注目を浴びるのは日常茶飯事だ。


 見られることには慣れている。


 フィルミーナも、王女のフィルミーナとして見られることが相応にしてあったため、視線には慣れている。


 ちなみに、今のフィルミーナは、ミーナの格好でコウとユズに随伴している。


 冒険者達の視線が集まったのは、十中八九、騎士団長のミーナがどうしてこんなところに!? という疑問からのものだろう。


 3人は、気にせずそのままギルドの受付まで歩みを進めた。


 受付に行くと、職員の女性が対応した。


「ようこそ、冒険者ギルドへ。ミーナ様がいらっしゃるということは、こちらの方々が女王陛下の仰られていた?」

「そうだ。冒険者の登録をお願いしたい」

「畏まりました。ただいまギルド長を呼んで参ります」


 そう言って職員の女性はギルド長を呼びに行った。


 少しすると、職員の女性が偉丈夫な中年男性に付き従うような形でやってきた。


 その途端、周りの冒険者達が一斉に立ち上がり姿勢を正した。


 元から立っていた者達は、そのまま姿勢を正した。


 何事!? と周りを見るコウと、気にせずやってきた中年男性を見定めるように凝視するユズ。


「相変わらず恐れられているようですね、ソガン」

「ハハッ、まぁな。それで騎士団長様? そこの二人が例の異世界人か?」

「そうですが、一つ訂正しておきます。私はもう騎士ではありません。この方達の付き人になるよう陛下に命じられましたので」


 フィルミーナがそう言った瞬間、周りの空気が一変する。


「うそだろ!? あんたが騎士団長やめたら騎士団はどうすんだよ!?」

「後釜はいます。それに、私にとって今はこのお二人の方が大事です」

「そうは言ったって、あんたは最強の一角だろう? そのあんたが二人の付き人なんておかしいだろ」

「実はですね……」


 そう前置きしたフィルミーナがソガンの耳もとに近づきヒソヒソと話す。


 聞き終わったソガンは「なんだと!?」と驚きの反応を示した。


「と、とにかく試験だ。ついてきな」



 ◆


 ソガンに付いてやってきたのは、ギルドの建物の地下にある演習場。


 主に試験で使われるため、壁や天井には防護魔法が施されている。


「よし、まずは自分が使える最高の魔法を放ってみろ」


 そう言われたコウとユズが顔を見合わせる。


「ん? どうした? 今さら怖じ気づいたのか?」

「いえ、壁や天井に施されてる防護魔法だと、僕とユズの魔法に耐えられないなと思って……」

「はっはっはっ! ずいぶん自信があるんだな! 大丈夫だ。この国で一番強い魔法使い(マジックキャスター)の魔法に耐えたんだ、まだガキのお前らの魔法なんて屁でもねぇよ」


 コウの言ったことを真に受けずあっさりと流したソガンは、演習場の十数メートル奥に立てられた3本の的を指差した。


「あの木の棒に打ち付けられた円盤が的だ。あれに向かって魔法を放て。ま、届けばD級にはしてやろう」


 それを聞き、フィルミーナが抗議する。


「待ってください! 陛下から厚待遇にせよとの命が下っているはず、それでは話が違います!」

「あんたの話が本当だろうと、たとえ陛下からの頼みであろうと、実際に実力を見なきゃ待遇をよくする気はねぇ。さ、やってみろ」


 ソガンに促されたコウは、ユズとフィルミーナとでひそひそ話を始める。


「どんな魔法を使うつもりなのですか?」

「うーん……一番上の神級魔法(ゴッズマジック)っていうのがあるけど、威力がありすぎるんだよね……」

「うん、確実にこの国が崩落する」

「そこまでの魔法なのですか!?」


 コウとユズがこくりと頷く。


「では、どうするのですか?」

「仕方ない。これを最高の魔法って思われるのは癪だけど、上級魔法(アドバンスドマジック)にしよう」

「うん、それなら防護魔法を貫通する程度で済む」

「それは程度と言えるのでしょうか……」


 フィルミーナの呟きをスルーし、コウとユズは的に向かって横並びになる。


 そして、的に向かって掌を向け、


「【爆焔(ディトネイション)】」

「【氷結(フリージング)】」


 同時に違う魔法を放った。


 コウの放った魔法で大きな爆発が起き3つの的すべてが吹き飛ぶ。


 直後に、ユズの放った魔法で演習場が凍ったことで爆風が起こることはなかった。


 天井や壁に施されていた防護魔法は、コウが起こした爆発によって破壊されて焦げ痕がこびりついており、その上に氷が張っている状態だ。


 あまりの出来事に、ソガンもフィルミーナも唖然と立ち尽くすしかない。


「ユズのお陰で爆風を防げたよ。よく僕が【爆焔(ディトネイション)】を使うってわかったね」

「コウのことは私が一番理解してるから」


 そう言うユズは、誇らしげだ。


「お、お前ら、何者(なにもん)なんだ……? あんな威力の魔法、大賢者イルナでも無理だぞ……?」

「ただの〝魔法詠唱者(マジックキャスター)〟ですよ。それより、結果は?」

「あ、あぁ、文句無しの合格だ。こりゃあ陛下が頼んできたのも納得だ。特別措置でB級からでどうだ?」


 そう聞かれてもそれでいいのか判断できないコウとユズは、同時にフィルミーナを見ることでフィルミーナに判断を委ねた。


「えぇ、それで構いません」

「よし、じゃあ、プレートを作ってくるから受付で待ってな」


 そう言ってソガンが演習場を後にしたため、コウ達3人も演習場を後にしたのだった。



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