【風神雷神】と呼ばれた双子、現状確認をする
本日二度目の更新。
青い空、白い雲、その下には大草原が広がっている。
その大草原に、気を失って倒れているコウとユズの姿があった。
先に目を覚ましたのは、ユズだった。
「ん、ここは……? !? コウ!?」
目を覚まし、コウが傍にいないことに気づいたユズは、焦った様子で起き上がり、コウを探す。
すると、少し離れたところの草の上に、うつ伏せに倒れているコウの姿を見つける。
それを見てさらに焦ったユズは、急いでコウのもとへ行く。
「コウ、コウ? 起きて、コウ!」
そう声をかけながらコウの肩を揺さぶる。
すると――
「んー、むにゃむにゃ……あと5分……」
という間の抜けた答えが返ってきた。
それを聞いたユズは、コウに何事もないことがわかってホッとし、コウが言うならあと5分くらいは寝かせてあげようと考えた。
ユズはコウに甘い。常にコウの意見を優先し、そのせいでコウが堕落しても、自分が支えればいいと、本気で思っている。
その為には、自分がしっかりと教養を身に付け、コウを養えるようにしなくてはならない。
当然、ユズはその努力を怠ったことはない。
その為、現在自分達が置かれている状況の確認をコウが寝ている間に行い、起きたコウに伝えようと考えた。
「まずは、ここがゲームの中かどうか」
そう言って、ユズはログアウトできるかを試す……が、そもそもコンソールが出なくなっていた。
ユズは、今自分達はログアウトできない状況に陥っている。ということを理解した。
そして次にユズが確認したのはステータスだった。
ステータスは音声入力であるため、この状況でも音声入力が可能であれば、〝ステータスオープン〟と言えば表示される。
「ステータスオープン」
ユズが呟くと、しっかりと目の前にステータスが書かれた画面が表示された。
これで、音声入力は可能であることが証明された。
ならログアウトを音声入力すれば……と思うかも知れないが、残念ながらログアウトはコンソールがないとできない。
ユズもそれは理解しているため、気にせず次の確認作業へ移る。
自分のステータスに異常がないかの確認だ。
「ん。問題なし。アイテムも所持したまま。コウになにかあっても守れる」
そう言ったユズの表情は、やる気満々という言葉がピッタリだった。
どこまでもコウ優先なユズである。
そんな時だ――
「ん、んー、ふあぁぁ……。あれ? 僕、なにしてたんだっけ?」
コウが起きた。
寝惚けているのか、先程までのことを忘れている様子のコウ。
それを見てユズはクスッと笑う。
コウらしい、と。
「コウ、よかった。目が覚めた」
「わわっ、ちょっ、ユズ? いきなり抱きついてきてどうしたの……って、あ、そっか、運営からの質問に〝はい〟って答えたら、急に足下に魔法陣が現れて、それで……」
「うん、ここは異世界だと思う。コンソールが出なくなってるから」
そう言われて、コウもコンソールが出るか試す。
「ほんとだ。これじゃログアウトできないね」
出ないことを確認したコウがそう言うが、表情はどこか嬉しそうだ。
その表情を見たユズは、またしてもコウらしいと思いクスッと笑った。
「ん? ユズ、どうかした?」
「ううん、なんでもない。それより……」
そう言って、先程の確認作業の結果をコウに報告するユズ。
それを聞いたコウは、自分のステータスやアイテムの確認を始めた。
「うん、僕のも異常はないね」
確認を終えたコウが、ホッとした様子で言う。
「それで、これからどうするかだけど……」
「それなら、『インスタント建築』があるから、ここに私とコウだけの素敵なマイハウスを建てる?」
『インスタント建築』、事前にどんな家にするかを設定し建築開始を音声入力することで、一瞬にして理想の建物を建築できるというアイテムである。
ここでユズはハッと気づく。
この誰も来なさそうな大草原に家を建てれば、自分がコウを養うチャンスなのではないか? と。
しかし、それは叶わなくなる。
「あれ? なんかこっちに向かってきてる?」
誰も来ないと思っていたこの大草原に、何者かが近づいてきたからだ。
コウの言葉を聞いたユズは、小さく舌打ちをし、コウが見ている方向を見る。
確かに、なにかがこちらに向かってきているのが見えた。
だんだんと近づいてきて見えるようになってきたなにかの正体は、馬を駆る騎士達だった。
数は見る限り20以上。
それを見たコウとユズの考えていることは同じだった。
((うん、なんか、めんどいことになった気がする))