【風神雷神】と呼ばれた双子、異世界へ
新作です。
きっかけは、自分が持ってる扇子の柄が〝風神雷神〟だったので、何か使えないかなと思って思いついたのが、VRMMOゲーム内で活躍する双子プレイヤーの異名でした。
本当は、VRMMO物を書こうと思ったのに、結局異世界転移物に……。
ともかく読んでくださると嬉しいです。
とあるVRMMOゲーム内のギルド間対戦用武闘場。
そこで大きな歓声をあげながら観客が見ているのは、最強ギルド【百花繚乱】とギルド【不死鳥】の対戦だ。
普通のギルド間の対戦では、ここまで観客はいない。
大歓声があがるほど集まっているのは、最強ギルド【百花繚乱】にいる、二人のプレイヤーが目当てだからだ。
そんな中、フィールドを覆うように雷雲が現れ雷を落とし、雷雲の下では竜巻が3つ発生した。
それによって再び歓声があがる。
『出たあぁぁぁぁぁ! 融合魔法だあぁぁぁぁ!』
毎回武闘場の実況を担当しているプレイヤーが興奮したように叫ぶ。
『使用者の親和力が高くないと確実に失敗する融合魔法! だがこの二人には関係ない! なぜなら二人は双子だからだ!』
『まぁ、あの二人は最高職の〝魔法詠唱者〟ですし、息の合いようは、あの融合魔法から、【風神雷神】と呼ばれるほどですからね』
テンションMAXな実況に対し、この実況のプレイヤーと毎回ペアで武闘場の解説を担当しているプレイヤーは、冷静に解説をしていた。
『おっとぉ!? 今の魔法で決着が着いたようだ!』
実況のプレイヤーが言った通り、雷と竜巻がおさまると、フィールド上に《Winner Guild【百花繚乱】》と表示された。
それにより、今まで以上の歓声があがる。
そんなことはお構い無く、融合魔法を使った双子プレイヤーのもとへ、ツカツカと向かっていく二人のプレイヤーの姿があった。
「おい、コウ、ユズ、あぶねぇだろ! 巻き込まれるところだったぞ!」
「そうよ! やるなら前もって言ってよね!」
鎧で身を包み剣と盾を装備した戦士姿の少年と、弓を脇に抱えたエルフ姿の少女が双子に迫った。
すると、双子の片割れの少女がすかさず口を出した。
「すぐに待避しない二人が悪い。文句言わないで」
「なっ……!? おい、ユズ、このギルドのギルドマスターは俺だぞ!?」
そう訴える戦士姿の少年。
「ハルトはギルドマスターだけど、コウにも況してや私にも勝てない弱者」
「くっ……でもだな……」
「ハルト、ここは素直に謝りましょう。二人のお陰で、このギルドが最強でいられるんだから」
「いや、リン、俺達だってレベル100超えてるから、そこらのプレイヤーには負けないだろ!?」
「二人はレベルもステータスも何もかもカンストしてるけれどね」
「ぐっ……」
エルフ姿の少女――リンの言葉に、ハルトはなにも言い返せない。
そこへ、間に割って入る者が現れた。
「まぁまぁ、悪いのはハルトとリンに言わず勝手に融合魔法を放つ判断をした僕だからさ、責めるなら僕にしてよ」
それは、双子のもう一人の片割れの男子――コウだった。
しかし、コウがそう言った瞬間、ユズの目が鋭くハルトとリンを貫く。
コウを責めるのか? と言わんばかりの目だ。
「えっ、あ、いや、そこまでじゃないから、気にすんな?」
「そ、そうよ? 勝てたからそれでいいのよ。結果オーライってね?」
明らかに挙動不審な二人に、コウは首をかしげる。
その原因は、隣にいるユズが二人に対し目を光らせているからなのだが、コウは全く気づいていない。
「まぁ、二人が気にしてないなら、べつにいいんだけど……ほんとに気にしてないの?」
「おう、ぜんっぜんしてないぞ!」
「私もしてないから、コウも気にしないで!」
これが、この4人の日常であった。
この日までは――
◆
ギルド間対戦が終わり、コウ達4人がギルドホームに戻る途中、運営からのお知らせが届いた。
「あれ? 運営からお知らせがきてる……」
最初に気づいたのはコウだった。
それを聞き、他の3人も運営からのお知らせを見る。
そこには――
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あなたは、異世界に行ってみたいですか?
▶はい/いいえ
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そんな、唐突すぎて意味不明な質問が書かれていた。
「はぁ? 異世界に行ってみたいですかだぁ? 行けるもんなら行ってみたいに決まってんだろ。〝はい〟で決定だな」
「そうね、ちょっと憧れるかも。私も〝はい〟ね」
ハルトとリンは即決で〝はい〟を選択した。
コウとユズはというと――
「コウ、どうする?」
「質問の意図がよくわからないけど、僕も行ってはみたいな。ユズは?」
「私は、コウが選んだ方を選ぶから、好きに選んで?」
「そっか……じゃあ、僕も〝はい〟かな」
コウが〝はい〟を選んだため、ユズも〝はい〟を選んだ。
選んだ直後、突如4人の足下に魔法陣が現れる。
「……もしかしてこれ、本当に行けちゃうやつなのか?」
足下の魔法陣を見ながらハルトが呟く。
どこへとは言うまでもないだろう。
コウ、ユズ、リンもハルトの言いたいことは理解している。
そして次の瞬間、魔法陣が強い光を発し、コウ達を包み込む。
光がおさまると、4人の姿は消えていたのだった。