表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/50

5、帰れない


5、帰れない


荷物を……外に捨てられた。


これは、出て行けという事?どうせすぐに送り返されると思って、荷物なんかどこに置いても同じだと思っていた。


でも、…………こんなに早く追い出されるとは思わなかった。僕は外に出てみたけど……荷物を拾う気にはなれなかった。


この荷物は…………何一つ、自分で用意したものじゃなかった。全部、お母さんが詰めたものだ。僕は本当はこんな所、来たくなかった。


ポツポツ雨が降って来ると、石守さんが慌てて玄関に降りてきて、僕の荷物を拾っていた。僕はそんな石守さんの姿をただ、黙って見ていた。


「何で俺が拾わなきゃなんねーんだよ!俺が投げたからか!いや、悪いの俺?!」


突然、ランドセルが飛んで来た。よろけながら何とかキャッチできた。


「お前の分!!早く中入るぞ!もっと降って来る!」


そう言って中に入ると、急に本降りになった。


「やっぱりな~!どうりで今日は蒸すと思った!」


石守さんは、2階に荷物を置いて下に降りてきた。


雨はどしゃ降りになった。


「本格的に降って来たな~!」

「…………」


僕が黙って玄関に座っていると、石守さんが隣に座って言った。


「どうした?もう帰りたいか?」

「…………」


僕は黙って頷いた。


「帰れねーぞ。本当は俺も帰したいんだけど…………ダメなんだよ。」

「…………どうして?」

「これ、姉貴に言うなって言われてたんだけど…………姉貴、入院してるから」


思わず立ち上がってしまった。


「入院…………!?」


急に、お母さんの事が心配になった。


「そんなに心配するな。すぐ死ぬとかじゃない。大丈夫だ。多分」


多分って何?どうして何も言ってくれなかったの?


「お腹に子供がいることは知ってるよな?前置胎盤ってやつなんだと」


石守さんが少し説明してくれた。お母さん本人は元気だけど、絶対安静、生まれるまで完全に管理入院らしい。お父さんはこんな時に、単身赴任で家にはいない。つまりは、あの家には誰もいない。


「さすがに夏休み中、ずっと1人で生活って訳にはいかないだろ?しかも、ほら、お前何もできないし。だから、お前はここにいるしかないんだよ。残念だったな」


正直、1人で家にいた方がマシだった。


こんな時、シェロがいてくれたら違ってたかな……?そう考えたらまた涙が出そうになった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ