46、再会
46、再会
お母さんのいる病院は、何だか少し緊張した。大きな病気は、いつも行っているキッズクリニックとは、雰囲気が違う。
石守さんが受付に場所を聞いて、別の病棟だと案内された。お母さんのいる病棟に移動していると、後ろから僕を呼ぶ声が聞こえた。
「隼人~!」
「あら、隼人じゃない。」
僕達に声をかけたのは、弟の隆人だった。隆人と、おばあちゃん……。
おばあちゃんは石守さんを見て言った。
「あなたは確か……紗智さんの弟さん?」
石守さんと、おばあちゃんはお互いに挨拶をして、おばあちゃんだけお母さんのいる病室に行った。
病室にいる赤ちゃんに、病気をうつさないために、子供は病室には入れない。そう、看護師さんに説明された。
僕と弟は、石守さんと真緒さんと待合室で待つ事になった。
石守さんは隆人を肩車して遊んでいた。真緒さんは僕の様子を見て声をかけてくれた。
「病気ってちょっと緊張するね。大丈夫?」
「うん……。」
僕は…………何だか心配だった。お母さんは、おばあちゃんともあんまり仲が良くない。そう気づいたのは、弟がおばあちゃんに預けられる事になってからだった。
お母さんが待合室に入って来た。そして、僕達の名前を呼んだ。
「隼人!隆人!」
「お母さん……。」
僕は何だか、嬉しいような恥ずかしいような、妙な気持ちだった。隆人はお母さんに思いきり抱きついて、その後抱っこしてもらっていた。お母さんに僕も抱き寄せられたけど、恥ずかしくて遠慮した。
「いい子にしてた?」
「うん!」
隆人は迷い無くそう言っていた。
「あれ、お義母さんは?」
石守さんが、お母さんに訊いた。すると、お母さんは少し険しい顔をして言った。
「それが…………謙治、悪いんだけど、隆人も預かってくれない?」
「は?まさか、あのばーさんこのまま帰ったのか?」
どうやらお母さんとおばあちゃんは口論になって、おばあちゃんは怒って帰ってしまったらしい。
「別にかまわないけど、俺達これから帰るんだけど……。」
「隆人、謙治の所でいい子にできる?」
「やだ!僕、ママの所にいる。」
弟はお母さんから離れようとはしなかった。弟はまだ小さい。だからきっと、まだまだお母さんに甘えたいんだ。
「隆人君、あっちで真緒先生と一緒に遊ぼうか!隼人君も一緒に行こう!」
真緒さんがそう言うと、隆人は少し迷って、行くと言っていた。
「隼人と行く!」
どうやら、僕が行けば行くらしい。
「私、しばらくテラスで二人の事遊ばせて来ますね。お二人で今後の事よく相談してください。」
こうして、お母さんと石守さんが話をする間、真緒さんと僕と隆人で中庭のテラスに遊びに出た。
テラスは夕日に照らされていて、風が気持ち良かった。思ったより暑くもなくて、首を下げた向日葵が、風に揺れていた。
「僕達は…………邪魔なの?」
「…………え?」
隆人をあやしていた真緒さんが驚いていた。
「邪魔じゃないよ!長いお話かもしれないから、隆人君あきちゃうでしょ?それなら、外で遊んだ方がいいと思っただけだよ。待たせると思わなければ、大人もゆっくりお話ができるし……。」
「でも、僕たちがいなければ、お母さんは入院してる時まで、僕達の心配しなくて済むよね?」
「そうだけど……大丈夫だよ。お母さんにも、手助けしてくれる人が必ずいるから。」
そう言って真緒さんは、また隆人と遊び始めた。
手助けしてくれる人って……石守さんかな?僕も、早く大人になって、お母さんを助けてあげたい。
本当は、あの時、あのゴミ屋敷で背中を震わせて泣いていたリンも、助けてあげたかった。




