4、どうする?
4、どうする?
これじゃマズイな……。ここは俺が大人になろう。まぁ、そうは言っても大人は俺しかいない……。
「腹減ったか?」
「まだ気持ち悪い」
どうにかしよう。
「じゃ、寝るか?」
「眠くない」
もういい!!もうめんどくさい!!俺にどうにかできる気がしない!!
俺はどうにかする事を放棄した。隼人を脱衣場に置いて、自分の部屋に籠った。
しばらくすると、コンコンと…………ドアをノックする音がした。
俺は筆を置いて、ドアを少し開けた。
「どうした?」
「お水…………」
「お水…………?」
何となく、水が飲みたいという事はわかった。でも、これはいじめとか嫌がらせとかじゃない。
「水が何だ?水が飲みたいってはっきり言え」
「お水…………飲みたい」
「だから?」
それでも、隼人は黙っていた。
「…………」
黙った後、そこから去って行こうとした。
「待て待て。下、行くぞ」
まったく…………お水くださいの一言も言えないのかよ……。
キッチンに行って、グラスに水を入れようと思ったけど…………ここでぬるい水道水というのもアレだから……一応、訊いた。
「麦茶でいいか?」
隼人は黙って頷いた。そして俺は冷蔵庫にあった麦茶を、グラスに注いで隼人に手渡した。
「ほら」
隼人はグラスを受け取った。
でも俺は、その言葉を聞くまでグラスを離さなかった。いや、これも決していじめとか嫌がらせとかじゃない。
なかなか離れない俺の手に、隼人は戸惑っていた。そして気がついた。
「…………ありがとう」
「今度はちゃんと言えたな」
多分、こいつは俺の意図に気づけたから、バカではない。そうゆう風にしつけられてないだけだ。そういえば、荷物がまだ玄関に置きっぱなしだった。
「それ、飲んだら玄関の荷物運べよ」
そう言って俺は、自分のグラスに麦茶を入れた。隼人は先に飲み終わった。でも、玄関に行く気配がない。
「荷物、運べって言ったんだけど?」
「…………でも……」
「でもって何だよ?ずっと玄関で生活するつもりか?それなら好きにしろ」
俺は、グラスを洗って言った。
「飲んだグラスも自分で片付けろよ」
そう言うと、隼人はグラスをシンクに置いた。
「ちょっと待った!これ、誰が洗うんだ?俺か?だったら言う事があるよな?」
「洗って?」
「お願いしますだろうが!」
俺は、隼人のグラスも洗って水切りかごに置いた。
「で、荷物はどうするつもりだ?」
こっちは片付けろという意味でどうする?と訊いている。
だけど、どこぞの女子高生のように今日どうする~?みたいな感覚で捉えられてるのか?その、どうするって、どうするの?という顔を止めろ!!
「でも、どこに運べばいいかわからないし……」
「だったら訊けよ!わからなければ訊いて解決すればいいだろ?それぐらい自分でやれよ!!」
いや、別にキレてないよ?キレてないっすよ?思わず長久小力を思い出した。
「…………」
で、結局黙るときた……。
「2階の左の部屋、好きに使っていい。それがわかったら今すぐ運べ。」
「…………」
それでも隼人は動かなかった。
「あーそうかよ。今すぐ行かないなら俺が言って玄関から外に投げるからな?」
俺がそう言ったら、隼人はボソッと言った。
「…………どうでもいい」
どうでもいいって…………。お前の物だろ?自分の物が大事じゃないのか?だったら俺に玄関まで運ばせるなよ!
普通に、頭に来た。
俺は玄関の荷物を玄関を開けて外の庭に投げ落として、2階の自分の部屋に行った。
もう、知らねー!!