21、楽しみ
21、楽しみ
どうせ…………1人だし。
川に落ちた時、そう思った。
僕が死んでも誰も悲しまないし、少し我慢すれば、きっと…………全部終わる。そう思った。
でも、石守さんが僕の腕を掴んだ。石守さんが助けてくれた……?
それって、僕に死なれると困るから?…………困る?それって…………僕は…………必要?
溺れて、僕はある事に気がついた。
僕は、自分が必要とされる人になりたかったのかもしれない。
僕だけの惑星には、僕を必要とする人は誰もいない。一人ぼっちは…………僕は僕しか必要としないし、僕は誰からも必要とはされない。
「石守さん…………河童みたい。」
「何だよそれ!!」
髪の毛の毛先が横に飛び出て、水滴を落としていた。その毛先が何だか河童の皿のように見えた。
「バカか?河童ってのはもっと恐ろしい姿なんだぞ?俺をよく見てみろ。どこが恐ろしい?俺のどこが死神に見えるんだよ?」
「死神とか言ってないよ。」
「え?あ、河童だっけ?まぁ、どっちも似たようなもんだろ。真緒さんに描いてもらって確認してみろ!」
石守さんそれ、遠回しに真緒さんの絵より、自分は恐ろしくないって言いたい……?
「石守さん、それ…………河童じゃなくても怖くなるよ。」
真緒さんが描けば、どんなに可愛い物でも怖くなる。
石守さんは笑って言った。
「お前がディスってんじゃねーよ!」
「それ、ディスってるって事になるんですか?」
その声を聞くと、一瞬にして石守さんの笑顔が消えた。僕と石守さんは顔を見合わせた。
「いや…………あの、それは…………その…………」
後ろをふり向くと、石守さんは急にしどろもどろになった。
そこには、真緒さんがいた。
「今の…………聞いてました?」
「はい……。」
真緒さんは、いつもと変わらない笑顔だった。
「隼人君、無事に助かって良かったね。」
そう言って、いつもと変わらない笑顔で、タオルを渡してくれた。
その笑顔の後ろで、真緒さんが描いた妖怪が、不機嫌な顔をして無言でゲラゲラポーを踊っていた。
これって…………こうゆうの幻覚って言うんだよね?僕は幻覚が見えるようになってしまった。
「隼人、俺…………絵を描こうと思うんだけど…………何を描いたらいいと思う?」
「僕に訊くの?」
「一応、お前の意見も聞いておこうかと思って。」
僕の意見?何だろう?
「何でもいいぞ?」
「何でも?」
「何でも。」
何でもって言われたら…………
「妖怪?」
「妖怪は無しで。勝てる気がしねぇ……。」
何に勝とうとしてるの?真緒さんの妖怪?妖怪バトル?それ対戦させようとしてる?
それはそれで見てみたい気もするけど…………
「じゃあ……龍。」
それを聞いた石守さんは腕を組んで考え込んでしまった。
「あ、じゃあ、やっぱり犬……」
「わかった。龍を描く。」
「……え?」
「そういえば、空想の生き物とか描いた事無かった。」
適当に言った物を、石守さんが描く事になってしまった。本当に……龍になっちゃった……。いいのかな?
何だか…………僕は、石守さんの絵が楽しみになった。




