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2、車酔い


2、車酔い


まるで、蜘蛛の糸が切れたみたいだった。


僕の両親は、僕が何者にかなる事を望んだ。それはきっと、僕に期待しているからだと思う。それは、ちゃんとわかってる。


「来年中学だろ?行くとこ決まったのか?」


でも、その期待が苦しかった。


「まだ……」


何者かというのは、ちゃんと挨拶のできる子供、しっかり身支度のできる子供、運動のできる子供、自分で勉強のできる子供…………。


「見学とかは?あ、中学受験するんだっけ?」


自己管理が完璧にできて当たり前、完璧に問題を解いて当たり前、それが…………中学受験には求められた。


「受験はしないよ」


中学受験をしないと決めてから、両親と気まずくなった。


「それ、あの姉さんが許したのか?」

僕は黙って頷いた。


石守さんは信じられないという様子だった。

「マジか!だからお前こっち来たんだな……」


一瞬、石守さんが口を滑らせたという顔をして、取り繕うようにお母さんの話をした。


「姉さん昔からガリ勉だったからな~!絶対、お受験ママやると思ってた」


きっと、お母さんは僕の事は諦めたんだ。お父さんもお母さんも、弟の鷹人の方が気に入ってる。


「あれ?弟は?」

「父方のおばあちゃんに預けられた」

「おいおい、兄弟別々に預けられたのか?」


父方の実家はおじいちゃんが亡くなって、おばあちゃん一人だった。兄弟別々なのは、おばあちゃん一人に二人は大変だからだ。そうお母さんから説明された。


「何だ?着いて早々、もうホームシックか?」

「…………。」

「何だよ?元気ねーな。緊張してんのか?」


ここでもきっと、僕は僕じゃない。


僕は家にいても、学校にいても、塾にいても、プールにいても、僕は僕じゃなかった。


だから僕は、僕を探す為に、学校に行かず、図書館へ行った。別に本が好きな訳じゃない。本を読んでいる間は、僕は僕じゃない僕や、僕が僕である事も、全部を忘れられた。


こうして僕は夏休み前に、自主的に夏休みに入った。


6月の下旬と言っても、もう連日暑い日が続いていた。


「おい、何とか言えよ?」

「気持ち悪い……。吐きそう……」

「あ、おい、ちょっと待て!!」


蒸し暑さと、車酔いで…………吐いた。


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