1、母の実家
1、母の実家
「俺とお前は他人だ。だから、石守さんと呼べ」
初めて石守さんに会った時、そう言われた。本当は、本当に赤の他人とゆう訳じゃない。この人は、僕の叔父さん。お母さんの弟。
駅に着くと、石守さんはお母さんに電話をしていた。なんとなく……石守さんがお母さんと電話をしている話声を聞いて気がついた。どうやら叔父さんは、お母さんを嫌っているようだった。
僕はここでも…………歓迎されていないんだ……。
これから先、僕はどうなるのか、不安でたまらなかった。
夏休みの間、僕はお母さんの実家に預けられる事になった。お母さんは、妹が産まれるからだと言っていた。だけど、妹が産まれるのは9月の予定だった。今はまだ6月の下旬だ。
これは多分…………厄介払いってやつ。
「お前、不登校なんだって?姉さんのやつ…………ざまぁ!!」
そう言って叔父さんは僕の背中を叩いて大笑いしていた。叩かれた背中が痛い。
「大森隼人です。今日からお世話になります」
お母さんに言われた通り、しっかりと挨拶をした。
すると叔父さんは、僕の事をまるで変な物を見るかのような顔をした。
「はぁ?何だ?そのつまんねー挨拶は!!子供なんて、おー!よろしく~!イェ~!とかじゃねーの?」
叔父さん、それ、チャラいって奴でしょ?そんなの今時いないよ。
「お前、子供らしくない子供だな」
叔父さんこそ…………大人らしくない。そう思った。
そう思いながら、駐車場へ向かう叔父さんについて行った。
車に乗って、家へ向かう途中、赤信号を待っていると、無言の空気に耐えられなくなった石守さんが僕に言った。
「お前、自主的に夏休みを早めたんだな!感心感心」
感心…………?学校へ行かなくなった僕に、お父さんは怒って、お母さんは悲しそうだった。学校へ行かない事を誉められたのは初めてだ。
「学校サボってる事が感心じゃねーからな?自分で決めたって所だ」
「自分で決めた?」
「自分で決めた事は、自分で責任取らなきゃいけない。ここでは、自分の事は極力自分でやる事、掃除洗濯、飯の支度も分担する事。いいな?」
僕が返事をしないうちに、話は進んだ。
「姉さんの事だから、何もやらせてないだろ?ここで生活力、叩き込んでやる」
生活力?
「あと1ヶ月、学校はどうする?」
僕は首を横に降った。幸い、中学受験するつもりで勉強してきたから、6年生の勉強は一通りやった。
「わかった」
わかったって……どっち?行かなくていいって事?それでも行け?
「なんて顔してんだよ?お前がそう決めたならそれでもいいって言ったんだよ!このうつけ!」
ウツケ…………?
青信号に変わると、石守さんは強くアクセルを踏んだ。石守さんの運転は…………それはそれは下手くそで…………家に着くまでに…………かなり車酔いした。