Pain! Pain! Pain!!
横一閃に放出される熱光線。
その超大な威力と爆発の規模に天地問わず多くの魔物達が消し炭へと変わっていく。
爆炎の中を這いまわりながら無数の触手は敵を容赦なく蹂躙していった。
グリフォは業火の中で君臨するかのように佇み、目に見える全ての命を破壊していく。
あれだけいた数の魔王軍が瞬く間に少数へと減っていく様に、百戦錬磨の魔物も恐れ戦いた。
「えぇい! 進めぇーッ! 進めッ! 進めッ! 進めぇーーーーッ!!」
魔物達は魔王軍としての誇りを胸に、恐怖を振り払いながら巨怪へと進みゆく。
進みゆくたびにある者は焼き殺され、またある者は突き殺された。
触手に不用意に振れた者は病魔に侵されたようにのたうち回り、皮膚や内臓を爛れさせて苦しみながら死ぬ者もいる。
魔物にも耐えがたい地獄を復讐者は形成した。
「おのれ貴様……我らが魔王様に逆らいおって!」
「これほどの力を持ちながらなぜ我等の王に仕えぬ!? 貴様もまた我等と同じ魔物ッ! であるのならば!!」
必死に叫ぶ魔物達に背中を向けたまま視線を向けてグリフォは答える。
背中からあふれ出る憎悪と闘気に歴戦の魔物達も思わずたじろいた。
『俺が一番嫌いな物を教えてやる……』
「な、なにぃ?」
『――――クソみてぇな王様だッ!』
勢いよく振り向くと同時に放出する分裂式の熱光線。
それぞれが必殺の威力を宿すエネルギーを持ち、様々な曲線を描きながら生き残っていた魔物達の急所を貫通させていく。
巨大な爆発が各所で起こり、緑豊かなこの場所は一気に焦土と化した。
無慈悲に広がる炎は遠くの国すらも震え上がらせる。
世界中がグリフォ・ドゴールに恐怖しているのだ。
『御疲れ様、魔王の所へ行くのね?』
『あぁ、レクレスもそこへ向かっているはずだ。……にもかかわらず俺に兵を向けるとは。余程人材に余裕があるらしいな』
『そうね、きっとここへ来た軍勢よりも……』
突如、アルマンドからの念話が割り込んでくる。
『いよう、派手にやったな』
『アルマンド。……どうした、また新しい報告か?』
『あぁ、……たった今レクレスが魔王城を占拠した』
『なにぃ!?』
驚愕の一声。
信じられない報告にグリフォも度肝を抜かした。
『まぁ正確には……その、なんだ、言いにくいんだが』
『……なんだ?』
『魔王が勇者に惚れた、近々子供も産みたいってさ』
……。
……。
『は?』
『いやだから、魔王が勇者と戦って負けて、それで惚れちゃったってわけよ。魔王が幼女みたいな姿でな? 結構可愛かったわウン』
どういうことだ?
幼女のような姿をした魔王が?
レクレスに惚れた?
それで城ごと明け渡したということか?
『なんだ……そんな……理由でか……? あの旅は……死は……なんだった?』
『……アンタが宇宙へ行っている間に、アイツは自分の足で進んだ。その間とびっきりの美少女達を仲間に引き入れて一緒に旅をしていたらしい。ハーレムパーティーってヤツ?』
憎しみを通り過ぎた先の虚しさがグリフォに飛来する。
それが火種となり彼の中で壮絶なる怒りへと昇華した。
アグノス、そしてリナリア。
親愛なる者達よ。
テネシティ、ドロースス。
永遠に憎き者達よ。
見ろ、これがお前達が寄り添って信じた奴の進む道だ。
身を粉にしてどれほど尽くしても、結局奴にとっては"してもらって当たり前"の行動にしか映っていない。
奴にとって世界は快楽の為の遊び場でしかなかったのだ。
グリフォは天を仰ぎ凶悪な咆哮を上げる。
大地は揺れ、天は裂けんばかりに震えた。
『……魔王の所へ行く。全部ぶち壊してやるッ!!』
『オーケー。今アンタが向いてる方向に真っ直ぐ進め。そこに魔王の城がある』
『わかった。……奴との決戦も近いかもな』
『そうだな。だがオレの未来視ではどうやら魔王を倒してからになる。……そっからがアンタの大勝負だ』
『最高の復讐にしてやるさ……ところでそっちの準備はどうなんだ?』
アルマンドに近況を聞く。
彼女はティアマットの復讐の為にも働いているのだ。
グリフォの復讐の先に彼女の復讐が待っている。
そう聞いているのだが。
『そのことなんだがな。……ちょいとティアマットにオレの所へ来てもらうこと出来るかな?』
『彼女を?』
『アルマンド、まさか……出来たの?』
『あぁ、"神罰兵器案"またの名を『ジュウジロ作戦』! とりあえずは可決した。結局奴等は勇者と兵器の力を頼るしかなくなった。……感謝しろよ、大変だったんだからな?』
神罰兵器、聞かない名だ。
グルイナード王国の切り札かなにかだろうか。
それがティアマットにとっての復讐となり得るのならそれでいい。
ティアマットの復讐方法が如何なるものなのか興味がある。
『グリフォ、アンタはそのまま突っ走れ。神罰兵器案……ジュウジロ作戦の成功はアンタにかかってる!』
『責任重大だな。任せろ、奴等がどんな手段を使おうと俺は負けん。……さぁティアマット、行くといい』
ティアマットがグリフォの魂から外へ出て実体化する。
寂しげにこちらを見つめる彼女の頭を不器用ながらも軽く撫でてやった。
『俺はアンタの旦那以上にタフな男さ。やられるなんざ万が一にも有り得ない。……さぁ行け』
『……アナタに、私の愛を』
そう言って微笑みと投げキッスを柔らかな所作で行うと光の粒子となって消えた。
さぁ、ここからが正念場だ。
この先にグリフォの望む結果が存在する。
そう思うと居ても立っても居られない。
翼を広げ、天空に意識を集中させる。
『管制塔聞こえるか!? ――――これより報復作戦を決行するッ!』




