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十一話

 昼間、死神を見かけた。遠目だったので本人かどうかは、分からない。空中に浮いていてすーっと総合病院の壁をすり抜けて行った。入院している誰かがこれからなくなるのだろうか。それとも、私みたいに取引を持ちかけられるのだろうか。

 しばらくして、病院の屋上あたりから何かが上へと上って行った。どうやら死神はあの世へ連れて行ってくれるのではなくて魂を刈り取るだけの仕事らしい。


 夜になって死神にその話をすると、昼間見たのはやはり本人だった。


「多分、僕だけしか見えない状態になっていると思うよ。そこらにたくさんいたらびっくりしてしまうでしょう?」


 五円玉を渡しながら話を続ける。


「私と同じように昼間は仕事しているんだね。ノルマとかはないんでしょう」

「うん、ただ一定の間隔で減らしていかないと、大災害の起こる危険が高くなっていくから。きちんと管理しないとね」


 減らしていかないと……管理……。死神の何気なく発せられる残酷な言葉にやっぱり違う生き物なんだと実感した。最近ちょっとずつ会話が弾んで浮かれていたのに冷水を浴びせられた気分だ。迂闊にお仕事頑張ってなんて言えるわけがない。


「あんまり気分のいい仕事じゃないよ。まずこの姿で恐怖に引きつった顔をされるからね。普通は」

「ん?」


 引っかかる言い方に思わず返事を返す。


「君、初めて会った時きょとんとした顔をしていたよ。驚くでも、怖がるでもなかったような……」

「生きている人間の方が怖いもの。死神はあっさりと殺してくれるけれど人間は違うでしょう?」


 猟奇的だったり、奪う目的だったり、愉快犯だったり。死神が奪うのはあくまで命だけ、そう死神に話せば死神は驚いた顔をした。髑髏だけど。


「斬新な考え方をするねー。僕の方がびっくりだよ」

「ああ、でも今五円玉を奪われているのか。考え方を改めないといけないかな」

「他にも僕に奪われているものは無い?」


 心、とか言わせたいのだろうか。頭がお花畑な死神はわくわくしながら私の答えを待っている。その手に乗るかと考えを巡らせる事、数秒。


「あ!」

「なになに?」

「睡眠時間!」


 がっくりと肩を落とす死神。してやったりと私はきっと満足な顔をしてるに違いない。


「お肌が荒れたらあなたのせいだからね」

「そうは見えないけどなあ」


 骨の手が、私の頬に断りもなくあてられる。ぞくりとしたので思い切り睨んだら死神は慌てて手を引っ込めた。


「ごめん、これ以上睡眠時間が減らない様に退散することにするよ」


 相手が死神で良かった。もしも生きた人間だったら―――

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