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「シャンテ・バルバードただいま参りました」
「きたかバルバード少尉」
建物の2階の応接間。
デュンベルンとシャンテは迎え入れられる。
髭を蓄えた上官。
隣には寡黙そうな男性。
「そこに座りたまえ」
デュンベルンとシャンテは上官に言われるがまま、対面の席に座った。
「さて、隣の者があの…」
「はい、宇宙からやってきた異星人のデュンベルンです」
シャンテは背中をポンポンとデュンベルンに挨拶を促す。
「おお、よろしく」
すごくフランクな挨拶だった。
「よ…よろ…?」
「ちょ、ちょっとっ!!」
シャンテはデュンベルンの服を引っ張る。
「なにするんだよ」
「何って、目の前にいる人がどういう人か空気で察しなさいよ」
「だから挨拶してるんだろ」
「あなたね…」
シャンテは説教を続けようとしたが。
「大丈夫だ。異星人なのだろう?きっと、そういうものが分からんのだよ」
「ですが…」
「デュンベルンといったか?挨拶が遅れたな」
大きな黄土色に勲章が多くついたコートを纏った上官。
「私はオリド共和国長官、マルタ・ワイオレンだ。よろしく」
「ああ、よろしくな」
「…」
シャンテはもう何も言わない。
ワイオレンの隣にいた寡黙そうな男性は口を開く。
「私はソル・ロマルド。ここでは大佐をやっている」
「やけに固い奴だな」
「ちょっと…!!」
デュンベルンの余りにも場をわきまえない発言にシャンテは我慢できなくなった。
「はっは、まあまあバルバード少尉。確かに大佐は頭の固い男だ。そう思われるのも仕方あるまい」
「それでも、デュンベルンはあまりにも無礼極まりない。ロマルド大佐、大変申し訳ありません。ほらデュンベルン!!」
シャンテはデュンベルンの背中を強く叩く。
「ん?ああ、すまない」
デュンベルンは納得のいかない様子で謝罪をした。
「ところで君は宇宙を飛んで来たと聞いたが」
「ああ、そうだ」
「ぜひその宇宙船とやらを見せてほしい」
「今はないな。ここに不時着する時に木っ端微塵になった。残っているのは飛べもしない脱出ポッドだけさ」
「そうか、それは残念だ」
ワイオレンはさらに探りをいれる。
「君自身はその宇宙船を作る技術はあるのかね?」
「ない。俺はあくまで乗ることしか出来ない」
「乗ること…か」
ワイオレンは提案する。
「大佐、どうだ。この男をパイロットとして雇っては?」
「私は力になる者であれば歓迎します」
「よし、決まりだな」
「ちょっと待てよ」
あまりのトントン拍子にデュンベルンは待ったをかける。
「勝手に決められては困るぜ。俺を軍隊として雇うつもりか?」
「ああ、そうだ。宇宙船のパイロットだったのだろう?期待は十分に大きい」
「そもそも俺は軍隊はもちろん、戦うつもりもない。どうせ"センソウ"に行かせる気なんだろう?命がけの恩返しなんてまっぴらごめんだぜ」
「デュンベルン失礼よ!!」
シャンテはデュンベルンに止めに入る。
そしてシャンテはワイオレンへ尋ねる。
「失礼ながら長官、デュンベルンはまだこの星に来て3日も経っておりません。その者に突然、国のために戦えと言うのも無茶な話かと」
「それならばこの国の歴史を知ってからでよいかね。それはバルバード少尉、そなたに任せるよ」
「え、いきなりそんなこと…」
「なに、別に今すぐに答えを出せという訳でもない。それはこの国の歴史を知ってからでよい。バルバード少尉、期待しているよ」
これはシャンテに圧力をかけている。
そんなことはすぐに本人に伝わった。
「分かりました」
シャンテは渋々返答した。