終わりの始まり
学年末考査一週間前w
これが終わったらしばらく、大体一週間ぐらい小説書きません。いや、書けません。
化学に英語マジ難しすぎる……
────夢を見ている。
昨晩師範をヒロたちと見送り、床についた。
しかし、記憶はそれからの途切れている。だから此処は夢の中なのだろう。
目を開けると辺りは薄暗く、そこら中に白い雲のようなモヤと、耳が痛くなるほどの静けさがこの空間に充満している。しかし、どこからともなく現れたシャボン玉の様な球体がその静寂をぶち壊した。
────火のテイマーとなる者よ……
テイマー。知識としては知っているが、俺はそんなものに興味は無い。だから淡々と語るそいつを全て無視して、朝が来るのをひたすら待つ。
しかし、突然無視されたことに怒ったのか、球体から恐怖を具現化したかのような八本の腕が同時に出現し、俺の胸目掛けて襲いかかってくる。
────俺に触れるまであと、二秒。回避は不可能……
その速さと距離を見た瞬間そう感じた俺は右手を前に突き出し、壁を想像しながら属性術の詠唱を始める。
詠唱というのは本当はあってもなくても良い。しかし、あった方がより鮮明にその技をイメージしやすくなり、威力や強度が増す。
結局は属性術に必要なのはその術の固有名詞と個人の属性力の総量、そしてなによりイメージ力なのだ。
頭の中で『どのように放つ』などの『過程』を省き、『こうなる』という『結果』だけを強くイメージする。
────あれに触れたら殺される。理由は分からない。でも、体が、頭が、そして何より心がそう訴えてくる。
恐怖に対する恐怖。その生存本能が俺の属性術をより一層強くし、守るだけの壁を殺戮の壁へと変化させる。
────目の前には炎の壁がそびえ立ち、なんびとたりとも、それを壊すことは叶わない。
そのイメージを現実にする。いや、そう念じると目の前には火の壁が出現する。否、本当に見える訳では無い。ただ自分に言い聞かせ、思い込ませ、確かなものにする。
────あと、一秒…
恐怖が距離を目と鼻の先までに迫って来る。
「ラオ・ヴァント・ファックル……」
最後にその属性術の名前を唱え────しかし何も起こらない。
無常にも恐怖が俺の指先に触れるギリギリの距離まで迫って来た。でも、焦りも不安も微塵も感じられない。ただこの後に起こる現象を待つだけ。
突然、周りのモヤが一瞬で吹き飛ぶ程の青い炎によって、俺を中心に円状に現れ、恐怖もモヤ同様に吹き飛ばされた。
それらは文字通り俺に指一本触れることも、灰も残すことも叶わず消滅した。
辺りは薄暗く、何事も無かったかのように、静寂がまた顔を出す。
夢は時期に終わり目が覚めるだろう。それまでの薄暗い孤独。
────俺はそれを心地よく感じた。
ドーン、ドーン
「…ラー、アル兄起きろー」
それからどのくらい時間が経ったのだろうか。俺は耳に振り子時計の叫びとその他の雑音が混じった叫びを聞き、意識をこちらに呼び寄越される。
振り子が鳴るとうことは、今は午前五時半つまり俺らの起床時間。
目を開き、最初に視界に入ったのは、夜空のように黒い髪と、やる気に満ちた赤い瞳。うるさい弟のヒロが元気いっぱいに起こしに来た。
────心地よい時間は終わり、なにも変わらない繰り返しの始まり……
俺は頭にある呪いのような言葉が流れ、やる気のスイッチをカチリと回り、完全に目が覚ました。
しかし、目は覚めても、憂鬱なこの気持ちは変わらない。俺は気分を夏風と共に入れ替えようと出窓を開けるが、鼻に刺すような焦げ臭い匂いが届き、より一層この気持ちが大きくなる。
────村で焼畑農業でも始めたのだろう
俺はそう勝手に解釈して空を見る。
それはまるで俺の気持ちと同じく、真っ白いキャンバスの上に墨をぶちまけている。そういう天気だった。
※ ※ ※
俺は昨日のミスを生かして、四時半に目を覚ました。やれば出来るじゃないか。そう自分を褒めたが、起床時間より一時間も早く、二度寝をしようにも周りはイビキの嵐。それをすることも出来ずにただ、起床時間の五時半までの間振り子時計とにらめっこをしていた。
ドーン、ドーン
身体中が震える様な五時半の鐘とともに、元気よくソラを起こし、その流れでアル兄も起こしていた。
「ソラー、アル兄起きろー」
肩を揺すり目を覚まさせる。ソラは眠そうに目を擦りながら、目を覚ましたが、アル兄は開いた目から鋭い視線と何故か悲しみ、それに殺気に満ちた瞳が俺の皮膚を刺し、俺を朝から気持ちがショボンとしてしまう。
その一瞬の間の後、アル兄が多分気分転換にだろうか、無言で出窓を開ける。
気持ちいい夏風が部屋に流れ込み、それと共に焦げ臭い匂いも流れ込む。
────山火事でもあったんかな?なんか嫌な一日になりそうだなー。
みんなを起こした後俺は昨日のリベンジの為にセアを起こしに行く。女子部屋に着き、ノックしてもやはり反応が無い。ドアノブを一度触ってから手を離し、昨日の二の前にならない。そう心に誓ってからもう一度ドアノブを触り、勢いよく回す。
「セアー?朝だぞー」
俺はセアのベッドに近づき、撫でるように小さくしかし明るく響くような声で話し掛けた。
「……はい…………おはようございます……」
おばさんの様なガラガラ声で、呟くように咳をしながら返事をしてくる。
「風邪か?」
明らかそうなのだが、何故だか気持ちなそわそわして聞いた。
「…ケホッ…すみません………はい、ちょっとひいちゃったみたいで」
「待ってろ、今体温計もってくるから」
俺は転げ落ちる様にで階段を降り、リビングにある体温計を取り出す。キッチンでは台布巾を絞っているソラが、朝ごはんもうすぐ出来るよ〜。と言ってくれたが、俺は、あぁ。と生返事をして一瞬考えてから、ワリィ。と言ってそれ奪い階段を上がる。
一階からは、もぉーやめてよヒロー。と呑気な声が響き、何だか罪悪感を感じた自分が馬鹿らしくなったが、足は止めずに女子部屋へと向かう。
部屋に入った俺は、体温計を振りながらセアに近づき、それを口に咥えさせ、おでこにはさっき奪った台布巾を乗せる。
ベットの柱に体を任しながら座り込み、横目で体温計を見てギョッとした。
銀色の線がみるみるうちに上がっていき、一気に三十九度五分まで上がって行ったのだ。
────三十九度五分とか大熱じゃん!
マイリさんにセアのことを話すべく、三階へ上がる。
「マイリさん!!マイリさん!!セアが三十九度五分の熱出しちゃって……どうすればいい?」
ドアを拳でノックしながら呼ぶと、中から天然パーマで黒髪の黒人女性が一瞬訝しそうな顔を出し低い声で、何?と聞いてきたが、もう一度同じことを言うと、みるみるうちに訝しそうな顔から、驚きの顔に変わり、声のトーンもいつもの様に透き通る声に変わってゆく。
「え?、セアちゃんが三十九度までいっちゃったの?ちょっと村まで行って薬草買ってこないと……ヒロくん、セアちゃんの看病頼める?」
俺は力を込めて頭を縦に降り、その振動でやる気スイッチがカチリと動くのを体全身で感じた。
マイリさんと一緒に階段を降りて、朝食を口に流し込み、みんながギョッとする程の早さで完食した。その後案の定ソラからの軽いお説教をくらい、みんなにセアの容体と、俺が看病すること、そしてこれからの予定を話した。すると、満場一致で同意してくれたので、早速セアの朝食のお粥つくる。
マイリさんは村で薬草を買いに行く為に玄関へ向かい、俺はお盆にセアの朝食を乗せ、階段を上がる。零れそうになるお粥を一生懸命に運び、一滴も零さずにやっとの思いで女子部屋に着いた。
それから、セアにご飯を食べさせ、台布巾をソラから貰ったお絞りに替えてデコに乗せる。俺は先程と同じ場所に同じように座る。
すると、セアがいつも弱々しいのに、より一層弱くなったガラガラ声で話しかけてくる。
「ヒロ…今日…一緒に…ン……居てくれますか?」
風邪を引いてもいないのに、俺は顔を目の前の少女の様に真っ赤にしながら、あ、あぁ。と応えて目線だけは変えずにそっぽ向いた。しかし、これで終わりだと思っていたセアの攻撃が続く。
「良かった…それと……あと、手、繋いで良いですか……?」
────今日はいったいどうしちゃったんだよ、セア……いつもだったらこんな事絶対に言わないのに……言ってもさっきみたいな事で終わりなのに……手を繋ぐ…?セアの手を?俺が?
心臓を口から吐き出しそうになるぐらい鼓動し、ついニヤニヤしてしまう。
でも俺はこの気持ちとは正反対に、ん。とだけ言ってぶっきらぼうに手を繋ぐ。
────やっぱり熱くて、汗ばんでる。
それからぼーっとしていると、眠くなってしまいこの体勢のまま寝てしまった。
カン!カン!カン!!カン!!!カン!!!!!
突然鼓膜が破けるような、小さく、でも甲高い鐘の音が響き、目を覚まさせられた。驚いて軽く仰け反ってしまったので、セアを起こしてしまったかと心配したが、物凄い寝相で眠っていたので、起さないようにゆっくり手を解き布団をかけ直してから、鐘の音を思い出す。
────あれは避難命令の鐘
村の防犯塔に仕掛けられていて、今まで避難訓練以外では一度も使われた事が無かったので、焦りや不安が全身を駆け抜ける。
「これどういうこと?」
階段を降りると、丁度道場での稽古が終わったらしく、みんな汗を拭っているが、アル兄はいつもより少し厳しい顔で外を見ていて、ソラに限っては顔が真っ青になり、焦っているのが一目散に分かる。
────こんな辺境な村に奇襲……?
「と、取り敢えず、避難所の帝国森林にあるツリーハウスに逃げよう。ここにいても、村長達が馬や地竜に乗っても央都まで片道三日はかかる。その後に飛竜が飛んできてくれても……」
ソラが緊張した眼差しでみんなに呼びかけるが、話している内にこの状況が結構絶望的なのを感じたらしく、声が段々小さくなって最後にはただの空気となって消えた。その瞬間、周りの空気がさらに重くなり目線も下がる。
────マ、マズイ……
そう感じた俺はどうにかしようと、ただその一心でソラの続きを話した。
「ここにいても仕方ない。どーせ軍が来るのは五日か、六日ぐらいかかるんだ。それならとっとと避難しちゃおう。十五分後にみんなここ集合な。バッグに、エレクロック、カッパ、あと道場の装備……そんだけかな?」
言い忘れていないかどうかみんなに意見を聞いてみる。
「着替え、シュラフと水筒に携帯食料……お前戦闘の装備しか考えてないな……」
窓から外を見ていたアル兄がボソリとそう応えた。
「お、おう……。悪かったな……」
聞いていないと思っていた人に、しかもこっそり当然のように言われたのが癪に障り、唇を尖らせて小声で反撃した。しかし、アル兄は全く聞いてないと言わんばかりに、また外を向いてしまった。
そして、俺が一番聞きたかったことをみんなに聞く。
「えーと、まぁ、そういう事だから十五分後に集合。それとセアはどうすればいい?」
そう。一番の課題は二階で熱にうなされている少女のことだ。あの熱で山を登らせるのは絶対に無理。背中には冷たい汗が滴り、足は地面についていないかのような浮遊感に苛まれる。
「俺は連れてっていいと思う。その代わりにヒロ。お前がセアを背負っていけ。セアの看病はお前がやるって張り切ってたんだから、今頃になって無理とかは絶対に言うなよ。荷物は俺とソラが持っていくから」
またアル兄がでも今度は流れる様に早口で視線を変えずにそう言った。それを聞いてからみんな口を揃えて、賛成。と言ってくれたので俺は鼻がツーンと痛くなるのを感じながらみんなに感謝を言って、その後直ぐに二階へ上がった。その後、セアを優しく起こし状況を話す。
「セア、今村に賊か何かが来たらしいから、帝国森林のツリーハウスに避難するぞ。おんぶするから、たぶん激しく揺れるけど、我慢してくれ」
セアは目を開き、いやいやする子どものように首を横に振る。
「ヒロ……置いていってください。みんなの、ヒロの足でまといなんてなりたくない……だから置いていってください……」
セアは目をウルウルさせながらそう言った。置いていってくれと、俺たちの足でまといになりたくないと。俺は軽くセアのほっぺたを摘み怒るような口調で、でも優しく安心させるような声音で説得する。
「足でまといなんて言うな。それにな、置いていった方が罪悪感のせいで、いつもだったら出来るもんも出来なくなる。そんなの俺もおまえも嫌だろ?だから一緒に行こうぜ?」
セアのほっぺたから手を離すと、後から誰かがおぉー。と歓声を浴びせてきた。何事かと思って振り向くと、ソラが感心したような、でもちょっと悪戯っぽい笑みを浮かべている。
「ヒロが『罪悪感』なんて言葉使ってるよ、頭いい人みたい」
────こ、こいつこそここには置いていってやろうかな……
「私もヒロが『罪悪感』なんて言っててびっくりしました」
掛け布団を鼻先まで上げてでも、顔を真っ赤にしているのが丸分かりの状態で顔を隠した。
「お前ら〜」
俺はセアの頭をワシャワシャとかき混ぜて、髪の毛をボサボサにしてから、ソラにチョップを頭に当てた。それから自分の支度を整えるためにガニ股で隣の部屋のタンスへ向かうと、アル兄はリュックを放り投げてきた。
俺はその重いリュックをキャッチすると、アル兄が支度をしながら、俺には目もくれずただボソリと呟く。
「お前の分はもうやっておいた。お前はセアの面倒を見てやれ。言い出したことは、責任をもって最後までやり遂げろ。フォローは俺達が絶対にしてやる。心配するな」
アル兄は俺が何かをいう前に、支度が終わったらしくさらりと横を通って階段を降りた。その後セアの方へ行くと、ソラがバッグを二個持って部屋を出る所だった。
「ソラ、それって……?」
ソラはニコッと笑ってから、優しく口を開いた。
「ヒロがセアを担いでウッドハウスまで行くんでしょ?ならこの位は当然だよ。ヒロはセアのことを宜しくね」
嫌味でも、何でもない。俺を信用した眼差しでそう言った。俺は本日二度の鼻先が痛くなるのを感じて、上手く感謝の言葉が言えないけど、サンキュ。とだけ言って部屋に入る。
もう一度体温計を口に挟ませて、熱を確認すると少し下がって三十八度七分になって────でもやっぱり山を登らせるのは無理。そう判断した俺はセアをゆっくり担ぎ、階段を降りる。
それから1時間ほど山を登りそのツリーハウスに着いた。
帝国森林にそびえ立つ、太くて黒い、そして金属のように固い丈夫な『クロカネオオスギ』と、蛇のようにグルグルと巻き付く『ジャコウツルグサ』によって出来る、地上3メートルにある平屋型のツリーハウスだ。
取り敢えずみんなに全ての部屋を見てもらって賊がいないことを確認してから貰ってから中に入った。
その後、シュラフをひいて、セアを寝かせる。俺は全身の疲労に負けてしまいその場で倒れ込んだ。
────救出まで約六日……
頭にその言葉がよぎる。長い。いや、長すぎる。食糧が持つかどうか、セアの体調がもっと悪くなったらどうなってしまうか、これからはずっとそういう恐怖と隣り合わせだ。でも、それを塗りつぶす程の疲労と睡魔にこの感情は手も足も出ずに敗れた。
今回なんか箇条書きっぽくなってしまって、これでも修正したんですけど、まだまだでしたw
あと、『エレクロック』って言うのは後々説明を入れようと思っているので、それまで少々お待ちを……
さぁーて、勉強しないと……泣