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Twitterであんなに騒いでいたのに形になるまで結構時間かかってしまいました。申し訳ありません。
堪えろ、ヒロ。
俺は彼らの会話を聞いてそう感じた。彼らにとっては平民を下に見て接するということは、生活の一環なのだ。
「あ、あぁ」
ヒロは少しいやそうな顔をしたが、それでも普通に握手を返した。まったく、わが弟子ながら褒め称えたくなった。スレヴは少し悲しそうにその握手を見ていた。
ジョンが手を放そうとした時、ヒロはその手を放さなかった。
「平民のヒロです、あなたの弟と同じのね。今後ともよろしく」
俺はついついクスリと笑ってしまった。ほんと、わが弟子ながらよくやってくれた。
少しピリピリした空間の晩御飯を終えて、みんな用意された部屋で床に就いた。
***
カーテンを閉め忘れたせいか、太陽からくる日光が俺の瞼に直接突き刺し、不愉快とともに目を覚ました。
外の井戸から夏なのに冷たい水を汲みに行こうと思ったが、個室全てに用意されている蛇口から水が出る水道というものがあることを思い出し、それを捻る。
「あれ?あ、反対か……」
5~6ほど水で顔を洗うと、頭のもやもやが消え去り目覚めたことを教えてくれた。
「お、おはよう、ございます……ヒロさん」
だるそうなスレヴがふらふらと歩きながら俺に挨拶してくれた。
「どうした、夏バテか?」
「さぁ、どうでしょう……ただ、体が思うように動いてくれないというか、なんというか」
「休んでおけよ」と言ったが、「これもメイドの務めなので」と言って話を聞いてくれない。体調の悪い女の子を見るとセアのことを思い出してしまう。
「おい、風邪を移すのがメイドの役目なのか?」
と、平民宣言をした少年が服のチャックを締めながら話しかけてきた。
「それは……」
「休めるときに休め。昨日あんな目にあったんだ、今日ぐらい休んだって、誰も文句なんて言わないぞ?」
おお、かっこいい。初めてアローンがイケメンに見えた。と思った。
「じゃ、俺はスレヴを部屋に連れて行くから、先に朝食行っておいてくれ」
「おー」と言って俺は階段を下りた。階段を下りてすぐに玄関がある。まぁそこはいかないのだが。玄関の近くの扉を開くと渡り廊下になっておりちょっとした離れで食事をとるようだ。正直面倒だと感じてしまう。道場院なんて一階に行けばすぐにテーブルが用意されていて、早かった。しかし、それを上回る面倒なことが俺の隣の人物だ。
「やぁ、ヒロ君。今日もいい天気だね。こういう日は僕の美貌がより一層目立ってしまってしょうがないね!」
「えー、そうですね」
本当にこんな人だったなんて思わなかった。長い渡り廊下を歩いていたら、背中の方からせっかちな足音が聞こえたので、振り向くと彼がいたという感じだ。
「さぁ、一緒にリビングまで行こうではないか!なに、案ずることはない、僕がエスコートしてあげよう!さぁ!」
「ありがとう。けど、まぁ、そこの扉開けたらすぐリビングですけどね」
白銀の長髪をゆらゆらと揺らしながら、その扉を開く。
「やぁ、諸君!今日もいい朝だね」
俺は少し疲れながらも、彼の腕の下をくぐった。
***
みっともない。ヒロさんにアローン様、昨日の二人の会話に私は見ることしか出来なかった。それに、今日から変わろうと思ったのにまさかこんな有様に……本当に、
「みっともない……」
気づけば昔からそうだ。両親の借金のせいで奴隷となって私。この身には有り余るほどの苦痛を屈辱を沢山味わった。汚い男たちの体を幼かった体で洗った時もあった。半年前に起きた奴隷区の殲滅作成でヘイド家の方々に目をつけてもらえていなかったら、今に私はここにはないだろう。でも、結局私は自分の意志で動くということを一度もしたことがない。奴隷時代も、今このメイドになってからも……
大きくため息をこぼす。
「奴隷のお前は元々みっともないんだよ」
「─────誰!?」
私しかいないはずの部屋から声がし、振り向く。
「誰って、昨日ぶりじゃないか。何を言っているんだ?」
「なんで……」
***
スレヴを部屋に入れてから俺はヒロたちと一緒に朝食をとるため、階段の手すりに手をかけた。
きゃぁぁぁぁぁぁぁ、と悲鳴がさっきまでいた部屋の方向から聞こえた。
「スレヴ?」
今の声は、スレヴのものだった。俺は再び彼女の部屋に向かうべく足を動かす。しかし
何かが爆破するような破裂音が玄関の方からした。その衝撃は凄まじく、俺はその振動で階段から転がり落ちる。
「何がどうなっていやがる!」
壊された玄関から何人かの足が見えた。
視線を上にあげると大鉈を持った大男が俺に向かって手にそれを振りかぶってきた。
「え?」
***
「ヒロ、ソラ大丈夫か?」
「あぁ大丈夫」「僕も」と二人の安否を確認し少しホッとする。
「アル兄も大丈夫か?」
ヒロが俺に聞いてくる。俺はコクリと頷くが周囲にオンクルさんとジョンさん、そして師範の姿が見えなかった。
「アル今何が起きたの?」
ソラが眉をハの字にしながら聞いてくる。
「俺も深くはわからないが、玄関の方向から襲撃されたな。爆発音が多分そこからした」
しかし、いくら何でも妙すぎる。普通、貴族の家を襲撃するならこっそり行うべきだろう。でないと、リスクが大きすぎる。
「とりあえず、向かってみようぜ?もしかしたら、けが人がいるかも」
「ヒロ!後ろ!」
土煙の中数人の武装した男がヒロに向かって剣を斬りかかる。
「は!?」
「フレジュナー!」
真紅の盾が現れ、その剣劇を跳ね返した。フレジュナー、属性術の中では基礎注の基礎自らの属性術で「盾」を生み出す技だ。
跳ね返されてよろめく男に
「ヒロ!」
「あぁ!」
狂者の羽衣を出現させたヒロが彼らの腹に拳をのめりこませる。
「つおりゃゃゃゃ!」
数メートル吹き飛んで壁とぶつかって倒れこむ。
「「うおぉっ!びっくりした」」
どうやらヘイド家の親子は倒れたテーブルを盾に隠れていたらしい。全く気が付かなかった。
「君たち本当に強いね、あれだろう?あの戦いも君たち道場院のところは一人しか犠牲者がいなかったのだろう?」
「あぁ。1人助けることができなかった」
ヒロのその声音は少しか言葉に言い表せんない感情が含まれていた。
「これは失礼。あ、アローンは知らないかい?」
オンクルさんが眉を八の字にしながらそう俺たちに問うてくる。しかし、ジョンさんは対照的に
「全く美しかった我がヘイド家の屋敷をこんなにもデトロイトにしてしまうなんて、彼らはデザイナーだよね!」
「僕、ジョンさんのあのポジティブ的な考え方見習いたいよ」
ソラが疲れたようにそう呟く。全くだ。
「知らない、少なくとも俺たちはアローンを見ていない」
オンクルさんの表情が青ざめる。後継ぎが決まっているからと言っても、家族を失うことはやはり悲しいだろう。まぁ、まだ決まったわけではないが。だが、ジョンさんは表情を崩さなかった。
「心配じゃないのか?」
すると、キョトンとした顔で彼がこちらを見てくる。
「なぜだい?」
「彼はあなたの弟でしょう?」
「なるほどね。君は弟思いだけど、同時に弟思いじゃないね。アローンは大丈夫、強いから」
その顔は誇りに満ちていた。
「……!」
彼が言っていることは間違っていることだと頭では分かっていたが、こうありたいと思った。
「俺ちょっと見てくる!」
張り切って死に急ごうとしている弟の襟首を掴む。
「だめだ、いくら心配でもここから離れるな」
「ヒロ君は本当にアローンに似ているね。見ていて飽きない」
***
ギィィィィン!と大鉈は俺の体を斬り裂きはしなかった。いや、反対にされたのはその大男だった。
「大丈夫かい、アローン君」
なんといえばよいのだろうか、手から武器が現れた言えばよいなのだろうか。黄金のハルバードが手から現れ大男を切り殺したのだ。
「腰が抜けちゃって、動けない……」
真剣での勝負などもやったことがあるが、殺し合いなんて経験がない。しかもなんだ、あの剣裁き。手が動いたと思ったら、すべてが終わっていた。
「兄貴の仇!」
今度は小柄な男が鉈を手にして斬りかかってくる。それに対して
「少し目を閉じていな」とだけ言って、そいつの方向に向けて左手を翳す。俺は目を閉じる。しかし、それよりも早く彼のボールは胴体から離れていた。具体的に言うと、翳した左手から剣が一本現れてそのまま放たれたのだ。その刃はまっすぐ小柄の男の首元に飛んでいき、ぴゅうという音を立てて上空に打ち上げられた。
「いやぁー、やっぱり殺し合いというものは怖いね」
あははは、と笑うのはヒロが「ししょー」と呼ぶ男性、カンダルだ。
「上に、スレヴが。助けに行かないと……!」
俺は転げ落ちた階段を再び眺めた。
「今行くぞ、スレヴ」
長い階段を転がったせいで体中がとても痛い。折れてはいないと思うが、体が言うことを聞いてくれない。
「へブリング・ケア」
属性術で打撲したところを癒す。元々属性術の回復は傷をふさぐことが主であり、打撲や骨折などの場合は高等属性術の部類のものを行使しなければならない。
「まぁ、鎮痛剤にはなってくれるだろう」
「アローン君、ダメだ君は逃げな。リビングの方にヒロたちがいるから。あいつらならこのくらいの相手だったら対応できる」
「随分な自信だな」
自分の弟子らが危ない状況なのに心配ではないのだろうか。
「まぁね、伊達に何年も鍛えているだけはあるからね。それに、あいつらは強いから」
「でも、いやだ。スレヴあいつは俺のメイドだ。だから、俺が守らないと」
「なんか、君を見ているとヒロと重なるね」
そう言うとカンダルさんは再び手から黄金の剣を取り出す。
「これを使いな」と言ってその剣を俺に渡してくる。俺は生唾を飲む。
コツンコツンコツンと階段の上から足音が聞こえる。玄関からくる砂煙で姿は見えないが、足音からして俺と同じかそれよりも軽い。
少し煙が晴れる、見えるのは褐色の足。また少し煙が晴れる、フリルのついたメイド服。全ての煙が晴れる、そこには
「よかった、スレヴ……?」
手に掴んでいるものは血が滴る剣。それを刃先を床になぞり、火花を散らしながら歩いてくる。
「ぁぁぁぁぁぁ!」
最上階から飛び下りて俺の方に襲い掛かってくる。
「スレヴ、どうした!」
ギィィィィ!と火花を散らしながらその攻撃を受け止める。
「にぃグぇえええええ‼‼」
その掛け声とともに力が増していく。
「くそがぁぁぁ!」
俺はスレヴを吹き飛ばす。着地と同時にまた斬りかかってくる。
「くっ!」
今度は俺がぼろ雑巾のように吹き飛ばされた。体制を立て直した時には刃が目の前にあった。
「何、絶望した表情しているんだ」
鍍金の小手でその一撃をカンダルさんが防いでくれた。そして弾き返すと同時に、彼女の腹に拳をのめりこませる。
「スレヴ!」
俺が走りだそうとしたが、それをカンダルさんが俺の襟首を掴んで止める。
「待ちな、あの子理性がいかれてる」
そう言って掌と掌を合わし始める。
「へブリング・パージンソード」
ゆっくり手と手を離し始める。そこには剣の周りに光の粒子が刃の周りを囲むように飛び回っていた。
「もぉぃあだぁぁぁぁぁ!」
彼女の背中から漆黒の腕が何本も顕現し、カンダルさんの方向へ向かっていく。それを初めから来るのがわかっていたかのように攻撃を躱す。
スレヴに近づくと彼女は腕ごと焼くような属性剣技を放った。それは黒く淀んだ炎はその剣の倍以上の刃渡りがあった。しかし、それを先程の篭手で弾く。バランスを崩したスレヴに対して空間を切り裂くような一撃をカンダルさんは放つ。その瞬間、光の粒子が彼女を囲んだ。
「スレヴ………!」
「精神汚染……闇属性の術を受けていた。けど、もう大丈夫そうだな。あとは」
鼠が俺達の前を横切り、階段が登っていく。なにかそれに不吉な予感がした。
「残念だが、その程度じゃこいつは無理だぞ」
次の瞬間光の粒子が弾け飛ぶ。残ったのは黒い邪気を含んだスレヴだった。
「誰だ!」
階段の上からコツンコツンと新たな来訪者が現れた。
「お前は!?」
鼻先まで上げた黒いロングコート、右手には血塗られた出刃包丁を持っていた。
「ゾル……」
「戻れ3394」
それを合図にスレヴが、ゾルの近くに戻った。腕は焼けただれ、身体中焼け焦げていて、筋肉や骨も見えていた。
「余興は終わりだ、さぁ」
パチンっと指を鳴らすとステンドグラスから何人もの男が割って入ってくる。
「アローン君、逃げるよ。俺も武器を持っていない状態でこいつら全員を相手するのは無理だ」
「でも、スレヴが………!」
俺はスレヴの方に手を伸ばす。届くはずのない距離、伸ばしても虚しいだけなのに。
手の先彼女は───────泣いていた。
「アロー、ンさま……」
「スレヴ!」
「逃げて!!ファッ、クル・バ、ラヘ…ル・アロー………」
赤黒い炎が現れ、それがボウガンの形に変化する。
「ショッ、ト」
彼女の言葉と同時にカンダルさんが剣を再び手から放出する。矢と剣がぶつかり、小爆発が起きる。『バラヘル』この技は火が消えきるまで燃え続ける、対象の素材頑丈さ関係なくだ。なのでどのような名剣であろうと、その炎には逃れられない。だが、剣と炎の勢いが相殺し合いその場で燃え尽き、灰が地面に舞い落ちる。それを合図にカンダルさんが属性述とも言えない単語を叫ぶ。
「バースト!」
しかし次の瞬間、先程弾け飛んだ光の粒子達が輝いた。視界が一瞬で真っ白になり、太陽のような眩しさが俺を襲った。数人の悲鳴。チカチカする瞳を開けると、カンダルさんが俺を担いで出口の方へ走り出す。その目線の先に数人の串刺しの死体が映っていた気がしたが気のせいだろうか。
「離せ、離してくれ!スレヴが!」
「すまない、それは出来ない」
「なんで!」
彼女の唇が微かに動く。
「たす、けて……」
「あぁ、待ってろ。必ず、必ずお前を救ってみせるからな!」
大理石の階段が崩れ、砂埃が空気を支配する。その瞬間ゾルと、スレヴは炎に包まれ、姿を消した。
***
「アローン!」
俺はししょーに担がれてくる少年の名を叫んだ。
「スレヴは?」
彼は下唇を噛みながら首を横に振った。それを見たオンクルさんが無理のある明るさで話し始める。
「アローン、無事でよかった。さぁ、逃げよう。外に馬車を用意してある」
俺も含めてみんな彼の言うとおり外へ行こうとした。ただ1人、アローンだけを除いて。
「さっき、カンダルさんが言ってた」
俺は声が聞こえた気がして振り向く。
「スレヴのあれは体そのものに埋め込められた呪術だって。だから、それを放ったものを殺さない限りその呪いは解けないって」
「あぁ。あれは絆咀をモデルに作られた呪いだ、1つで1人しか出来ないが、その効き目は絆咀以上とも言われている」
少し冷酷な目でししょーが話す。これが現実だ、と言っているかのように。
「なら……なら、俺があいつの呪いを解いてやる!どんな、辛い人生をあいつが辿るといても、俺が……あいつを救ってみせる」
脳裏に雨音が響く。
『セア……大丈夫!絶対に救ってやるからな……!』
その言葉はあの時の俺と重なるところがあるように見えて、他人事には聞こえなかった。
「だから、そのために俺は騎士になる、あいつだけじゃない。もう、この世から『悲しみ』をなくすために」
その目は決意の色をしていた。
最近カスタムキャストで男キャラ実装されましたね。自分あの影響でヒロとセアを作ってLINEのトプ画にしてますw




