表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/26

総集編ー中ー

友達に長い、と言われたので分けました。


11


ゼティー村が国外のものの侵入を許してから3日が過ぎたが、救出が来るような兆しはない。夜空に浮かぶいつもより朱色に見える月はまるで俺たちを嘲笑っているようだ。


「ヒロ、見張りかわるよ。セアの傍にいてあげな」


セアは吐血はしなくなったが、まだ辛そうだった。俺は食事と見張りの時以外は彼女の看病に徹している。


「そうだな、俺がやるって言ったんだから、責任持ってちゃんとしないとな」


俺はうんうん、と頷きながら見張り台から降りる。その時背中の方から「素直じゃないんだから」と聞こえたが何のことなのかよく分からなかった。


***


「素直じゃないんだから」


僕はそう言いながらヒロを見送った。絶対にヒロとセアは両想いだと思うけれど、どうやらお互いに気づいてはいないらしい。こちらとしてはモヤモヤとする気持ちで1杯だ。

欠伸をしながらブロッコリーの集まりのような森を眺める。

すると、チラッと鏡のような、もしくは金属のような反射が視野に写った。


「ん?」


双眼鏡を覗く。何人だろう、10~20人程の大人がこちらに歩いてくる。


「ヒロ、アル、ちょっとこっち来て」


小声で、しかしよく響く声で親友の双子達を呼ぶ。アルは直ぐに走ってきたが、ヒロは数分後ぐらいに到着した。セアとイチャイチャでもしていたのかな?


***


「ヒロ、お疲れ様です。私のことはいいので休んでください」


俺はセアの頭を撫でる。


「何言ってるんだ、見張りの時にいっぱい寝てるから大丈夫だぞ」


「え?」


どうやら体調悪い人に冗談は通じないらしい。ちょっと反省。


「嘘嘘、冗談だって、そんな怖い目で俺を見ないでくれよ」


ムスー、と頬を膨らませながら、可愛く怒る。


「本当ですか?本当ですよね。やめてください、そのようなこと」


また俺が頭を撫でると、セアに「子ども扱いはやめてください」言われ、怒られてしまった。

寝よっかな、と思ったら見張り台からソラの声がする。重い足を「どっこいしょ」と言って立ち上がる。


「ふふ、ヒロおじさん見たいですね」


俺は「うるせぇ」と言って、彼女の頭をコツンと優しくゲンコツを落とした。


12


「悪い、遅れた。どうかしたのか、ソラ」


「もーセアとイチャイチャしてるから遅れるんだよ」


「このロリコンが」


俺はイチャイチャとしていないし、ロリコンでもない。少しムッとした。


「ソラ、イチャイチャしてない、看病しただけだ。アル兄、ロリコンじゃない、2歳差は、その……アリじゃない?」


「ふん、まぁどうでもいいが、ソラ全員集まったぞ、話してくれ」


「おいおいおいおいおい、無視するんじゃない!」


「そうだね、さっき見張りしてたらこっちに人が向かって来ててね」


「だから、無視するんじゃ……え?」


「それは助けに来た方か?それとも村を襲ってきたヤツらか?」


俺と違い、興奮した様子もなく、人形のように淡々と尋ねる。


「そう、それが僕一人じゃ判断できないから、2人に相談しようかなって思ったんだ」


判断ってどうやっていすればいいのだろうか、と考えていたらアル兄が「貸してくれ」と言って双眼鏡を覗き込む。


「どこだ?あ、いや、いた。あれか……」


「どうだと思う?」


俺が「見せてくれよ」とアル兄の肩をトントンと叩く。彼は何も言わず双眼鏡を渡してくれた。


「ブロッコリーしかないな……どこ?」


「ん?ブロッコリーの根元とブロッコリーの根元の間にいるよ」


「貸せ」と言ってアル兄が双眼鏡をスっと取る。俺は「あっ」と声を漏らしたが、何も言わずその後の展開を待った。


「こいつらだ、このまま動かすなよ?」


どうやらピンポイントに合わせてくれたらしい。嬉しいことであったが、そうならばそうと言ってくれらばいいのに。俺は唇を尖らせながら、双眼鏡を受け取った。


「ありがと」


いた。ソラが言う通り、10~20人程いる。服装も装備も様々だ。


「どう思う?」


俺が悩んでいると、アル兄が「軍じゃない」とキッパリと言った。


「ほう、その心は?」


彼は無表情に淡々と語り始める。


「グラン帝国の軍ならばせめて装飾の色などは揃えるはずだ、統率が取れなくなるからな。なのにあいつらはそれがない。それに普通ならば、せめて1人国の国旗のエンブレムがあっていいはずだ。しかし、それもない。つまり……」


「つまり、村を襲ってきた人達って事?」


ソラが心配そうに尋ねる。アル兄は「ああ」と言った。そして、スッと回れ右をする。


「どうするのアル」


「アル兄?」


歩き始めたアル兄はキッと肉食獣の様な青い瞳が俺らを見た。いや、もしかしたらその奥の彼らを睨んでいるのかもしれない。


「俺たちで奴らを撃退する」


そこから俺たちの動きは早かった。道場院から持ってきた木剣、そして革手袋と『エレクロック』。


エレクロックとは見た目は硝子細工の様なもので角柱の上下に四角錐がくっついている形をしている。

属性力が使える生き物の体内に存在するものらしく、魔物の物を使うのが一般的だ。魔物を殺して、エレクロックを売りさばくことを職業にしている者もいるらしい。

エレクロックの中にそれぞれ『赤』『青』『紫』『緑』『茶』『白』『黄』『黒』の8種類のどれかの色が入っている。

例えば炎属性の俺が炎を出すとする。しかし、そこに青のエレクロックを投げると一瞬にしてそれが氷に変わる。そういうものだ。


13


俺達はゆっくりとツリーハウスから降りた。

森は深くはない。それでも1歩道から外れると、膝下程まで草が生い茂り、足元がまるで見えない。それを田んぼを歩くようにして足を動かす。いきなり先頭を歩いていたアル兄が右手で俺たちの『止まれ』の合図を出した。


「松明の灯りが見てる」


目を凝らすと、確かにヒラヒラと炎が見える。


「ファックル・アロー」


アル兄がそっと属性術を詠唱する。

属性力と属性術の違いは簡単に言うと、矢と弓だ。体の中にある属性力が矢で、それを放つために唱えるのが属性術だ。

詠唱は本当は必要ないらしいのだが、より明確に属性術を発動させるためにあるらしい。上級の属性術者は同士の撃ち合いは無言で、属性力同士が弾ける音しか聞こえいって前にししょーから聞いた。


属性術の応用としてあるのが、『属性剣技』だ。これは属性力を自分の武器、特に剣などの刃に現れさせることが可能になる。


「俺がこれで奇襲をかける、お前たちも混乱に乗じて攻撃してくれ」


俺とソラは同時に頷いた。それを合図に全力で前に走る。俺が右に、ソラは左に別れ敵の集団を挟み撃ちにする様な陣形を組む。見えているのか、それが終わってすぐ森の中から「ショット」という声が聞こえる。アル兄の属性術の発動の詠唱だ。

アル兄の瞳と同じ青い炎が森を駆け抜ける。

そう、彼の炎の色は『青』なのだ。1000分の1の確率で現れる体質らしく、またその力も強い。普通の赤い炎が広く浅く攻撃できるのだとするならば、青い炎は狭く深く。つまり一点集中なのだ。


青い矢が木に飲み込まれる、しかしその数秒後反対側からそれが木を燃やしながら貫通したのだ。それは1本ではなく、何本も何本も続き、9本目の木を燃やしてその炎は消滅した。


「何事だ!」「敵襲!」「撤退!」「いや、こちらも応戦すべきだ!」様々な声が響く。しかし、俺は冷静にバッグの中に決まっていた硝子の石を投げる。中には黄色い炎がチラついている。

何の合図もなかったが、アル兄はそれを見逃さなかった。奴らの中心に来たところで先程と同じ矢が飛んでくる、黄色い炎目指して……そして、フラッシュバン。


月明かりが美しい森林。空は澄んでいて、星が綺麗に輝いていた。そう、これが起こるまでは。


黄色い炎の正体は『輝』属性だった。そしてその能力は眩しすぎるほどの光量、暗く先が見えない山奥に突如太陽のような光が現れたら誰だって目をつぶる。そうそれは山賊だろうが、盗賊だとしても関係はない。事前にそれを予測していた俺たち以外は。


「シッ」と言って力を込めると木剣の刃先が炎でゆらゆらと赤く燃える。

目を抑えているやつの背中を焼きながら木剣で切り裂く。そのままたいまつを奪い、森に投げ捨てる。奴らは腰を抜かしながら逃げようとする。彼らの目には焦りと恐怖が見えた、それもそのはずだ。彼らはとっくに狩る側から狩られるがとなったのだから。


剣をブンブンと振り回しているやつがいたが、炎に目がいきパニックに陥っているらしい。デタラメなその剣を俺はなんとか弾く。


───────やっぱり近寄らせては、くれないよな。


「ヒロ!」とソラが俺の方へ走ってくる。俺はその瞳を見て全てを察して頷いた。


「テァァァ!」と言って気合いと共に力尽くで剣を真上に弾く。俺は無防備になるが、それは奴も然り。ソラが俺の脇からスっと現れ、その無防備な胸に斬り掛かる。


 ───────勝てる!


そう思った。だが、その油断が彼らの侵入に気づけなかった。


14


半分ほど相手を切り倒してから、周辺からの視線が多いことに俺は気づいた。


ねばねばした視線、俺の首元に蛇が忍び寄る。


「リーヴ・ショット」


暗闇からシュルシュルと緑色の蛇がこちらに押し寄せてくる。俺はそれを躊躇い無く斬り捨てる。


シュルシュル、シュルシュル。その蛇たちは1匹では無かった。否、10や20でもない。もっと数えられぬほどの蛇が押し寄せてくる。


「なにこれ……くそ、やめて……ああああああああぁぁぁ」


隣で幼馴染の悲鳴が聞こえる。俺も何匹か服の中に入ってきているが、彼の元に向かう。そして、その蛇の正体かが分かった。


「蛇のおもちゃ?」


木製の蛇の玩具のようなものだった。それがソラの体に巻きついて固定しているのだ。


「少し熱いぞ、ソラ。ファックル!」


ボッと小さく炎を出して、蛇たちを焼く。


もう俺の足は地面と完全に固定されているが、反対にソラのものは全て焼き切った様だ。俺が小さく息を吐いた瞬間、ソラが形相を変えて俺に叫んでくる。


「後ろ!」


俺が振り向くよりも先に、俺の肩に焼け爛れたような熱さを感じた。原因不明の熱さに恐怖し悶えてながらその場所を見る。

抉られていた。何が?肉が。はは、俺は一体何を見ているんだろうな?

地面が赤く染っていく。なんで?もしかして俺斬られたのか?


地面を這って流れてくる血が俺の頬に触れ、ようやく自分の置かれた現状に気がついた。


「全く、勘弁して欲しいぜ、ガキどもを拉致するのにこんな大勢掛かるなん……」


「フンッ!」


言い終わるより早く、白虎が彼を襲う。

白い髪に猫のように鋭い瞳。アル兄がそいつの背中を狙い、斬り掛かったのだ。しかし、コンマ1秒の差でそれは弾かれた。そして、怪しげにニヤリと笑う。そして短く、重い一言が俺たちのための言葉が放たれる。


「やれ」


10人以上の大男達がアル兄の元に刃を向ける。しかしそれを憶する様子もなく、腕をスポンジのように相手の攻撃を吸収しながら懐に入り、その顎を砕く。


「アグッ!」と悲鳴を上げながら狼狽える襟首を掴み、その隙に剣を奪って膝の裏の筋とアキレス腱を切り捨てる。自分の体重を支えることの出来なくなった足……いや、もはやただの棒となった脚を他の敵に向けて、転がすように投げる。登山用にスパイクの入っている靴だ。踏んではいけないと、転がってくるものを避けようとする。だが、アル兄からすれば的でしかない。


余裕を持って木剣で吹き飛ばす。俺も痛む背中を気合いで我慢し、立ち上がろうとした。


───────まずはこいつをどうにかしないと……


俺は手を伸ばし、木剣を掴もうとする。



「おっと、すまねぇーな」


しかし、指先がそれに触れた瞬間、スパイクが着いている靴が俺の手の甲に突き刺さりそのまま踏み込んだ。


「っああああああああぁぁぁ」


悲鳴が森に鳴り響く。そうだ、せめてあいつらだけでも逃がさないと……と思い視線をあげると、ソラの喉元に刃が立てられていた。耳を澄ませば奥の方で剣と剣がすり減り、斬り合う音が聞こえる。その音から一本の腕が出てくる。


「ヒロ、手を伸ばせ!」


「アル兄!」


腕を伸ばす、アル兄もそれを見て手を掴もうとする。


スパンっと気持ちがいいほど綺麗な音が流れ、鉄の匂いがするペンキが俺の顔にかかる。そして、人間の腕が俺の頭の上に乗る。


「うあああああぁぁぁぁぁ!!」


「ウグッ」と声を絞り出すようにアル兄が悲鳴を漏らす。しかし、ぽたぽたと血を垂らしながら片手で木剣を掴み襲いかかる。


「ガキ1人だ、殺せ」「囲め囲め!」などと罵倒がアル兄に浴びせられる。しかし、目にも止まらぬ速さでその口に木剣を差し込む。


「黙れ」


その目は直視していない俺でさえ、背筋が凍る恐怖があった。だが、もうその腕ではアル兄も戦うのは容易ではないだろう。つまり、


───────あぁ、ここで逆転できるのは俺しかいないのか?


穴の空いた手で再び剣を掴もうとする。すると「お、頑張るな」と言って同じように足が俺の手を踏みにじる。

それを繰り返していくうちに奴は楽しくなったのか、笑い始めた。狂者のように裏返りながら、そして何度も何度も俺の足を踏み続ける。


「きゃはははははははははは」


もう、俺の手は手ではなくなっていた。赤い何かと白い何かがぐちゃぐちゃになっているだけだった。

手をあげるとポトっと指だったものが手からこぼれ落ちた。


「そっか手じゃなくて、腕が悪いのか……ごめんな、頭悪くて、そっかそっか。じゃあまずはここかな!」


そう言って踏み潰されたのは、肘だった。

かつてないほどの激痛が俺の腕に響く。


───────肘が割れた……!?


痛みのせいか、それともあまりの悔しさのせいかは分からないが、俺の目から涙が零れ落ちた。口はひたすらに「殺す、殺す、殺す、殺す!」と動いていたが、掠れて声などでなかった。


すると、幻聴だろうか。どこからか声が聞こえた。


『力が欲しいか?』


───────力?


『そう、こいつらを圧倒的な力でねじ伏せるほどの力だ』


───────そんなもの俺はいらない。ただ、俺はこいつらを守りたい、救いたい。その為ならば力が欲しい。それだったら俺は悪魔だって、なんだって契約してやる!


『お前の意思、しかと受け取った』


15


甘い匂いがする、優しく、暖かい。ずっとこうしていたい、と体が心が俺にねだってくる。彼女と一緒にいると体中の痛みが何事も無かったように消えていった。そして彼女は俺の耳元でそっと囁く。


『ごめんね』


俺からは認識できない彼女の目から、涙が零れ落ちる。分からなかったが俺は「大丈夫」と答えた。何故?と聞かれると答えるのに困るが、そう答えるべきだと思ったからだ。


「何も気にしないで、〇〇」


視界が真っ白になった。


「何が起きたんだ?」


夢から覚めたような感覚に陥り、頭がぼーっとする。


『よくぞ現れた、新しき炎のテイマー達よ』


目の前には炎で出来た椅子が置いてあった。そこの肘掛に緋色の鳥が主人を待っている。


『……』


「……」


無言の空間が続く。鳥も主人が出てこなくて、気まずそうだった。


『あのー話している人目の前に、無視は酷いんじゃないか?』


固い言葉から、いきなりフレンドリーな話し方に変わり、俺は目を見開いた。


「無視されたくねぇーなら、正々堂々出てこいや!」


俺が啖呵を切る。そうだ、そうしないと目の前の鳥はなんのためにいるのか分からなくなる。


『だから、ずっと目の前にいるだろ?』


そう言うと、緋色の鳥が誇らしげに羽を広げる。


「……」


俺は指を指し、「お前が?」というふうに首をかしげてみせる。それに対して「うんうん!」と鳥は首を縦に振る。


俺は言葉を失った。


『ま、まぁ、本題に入ろうか』


 緋色の鳥は翼を1度大きく広げた。その姿はとても神々しく、つい自分の今の立場を忘れて見とれてしまった。』


 『汝らは今炎のテイマーになる資格を手に入れた』


――――――――テイマー


 それは各属性の長になるべき存在を意味する。今生きている属性の中でランダムに1人その力が継承され、通常の人間の何十倍もの属性力の備蓄量を誇りることができる。また、同属性のものなら、自分の意のままに操ることが可能なのだ。本で読んだことあったけど、まさか本当にいたなんて……


でももしこの話が本当だったとしても、そんな大役俺には無理だ。そうだ、俺よりも断然適任の人間がいるはずだ。例えばアル兄のように。


『自分よりも適任者がいるって?当たり前だろうそのようなこと。だから言ったんだよ、汝らと』


白い空間から、人影がスッと現れる。雪のような白髪に、猫のように鋭い目。そしてその奥に爛々と輝く青い瞳。


「アル兄!?」


なぜ彼がここにいるのだろうか?そもそも、この鳥が言うことが本当であれば、テイマーとは1つの属性に1人しかなることができないはず……頭にはてなマークがポンポンっと出現する。


『あーお前たち2人がテイマーなのは、その双子だからだ』


適当にそうこの鳥は流す。そこにアル兄が初めて口を開く。


「適当なことをいうな。それにそもそもそのようなことに興味はない。俺が気になるのは今この状況についてだけだ、それについて話せ。俺たちは死んだのか?ソラはどうした?」


アル兄がまっすぐ鳥を睨むように見つめる。気まずそうに鳥は視線をそらす


『…ダァーもう!そういう目本当に苦手なんだよ!まず!双子だから2人がテイマーというのは嘘だ。これは前代のテイマーの影響なん』


「何故前代と俺達が関係あるんだ?」


アル兄容赦ねぇ……


『まぁ、最後まで聞け。前代のテイマー、名をリリィと言う。お前達が暮らしている道場院のカンダルの幼馴染でお前達の母親だ』


────母親!?


孤児の俺たちは両親の名前も顔も知らない。そう育ってきたし、昔は何度も言及をしようと思ったが、今はもう諦めていた。



『彼女が死ぬ時、俺に言ったんだ。子供たちに自分の力を受け継がせる、とな。そして、それが終わってすぐに彼女は殺された。カンダルはお前達2人が他のテイマーに襲われないようにと思い、あの道場院を設立させたんだ。その殺した者の名は』


別に興味ない、とアル兄は言葉を遮った。実はちょっと興味あったのに……


「所々不明なところはあるが、だいたい理解した。つまり俺達がテイマーになった理由は、他のテイマーに自分の属性を奪われない為に俺達の母親はその責任を押し付けたという事だな」


アル兄が無表情に淡々と述べた。


「死んだ者に対して恨みも憎しみも湧かない。それは自らの母親だからと言っても変わらない。いや、変えてはいけない。俺たちは孤児なんだ、血の繋がりだけで家族と決めるのならば、それは俺達が愛している道場院への裏切りだ」


「確かに…」


お前が納得してどうするんだ、と頭を叩かれた。


『じゃあ、次はテイマーの話をするとしようか』


16




それはこの国が生まれる前のお話です。空は闇に覆われ、悪魔の住処となっていました。そして、それを恐れた女神たちは海に逃げたのです。しかし、ある日悪魔と空の王リオスギガルと海と生命の女神リオアナは恋に落ちました。2人は沢山の子供を育み、それぞれに『神』の称号を与えました。それは生き物であったり、太陽であったり、たくさんの種類があり、神の元皆繁栄していきました。それは悪魔と女神の垣根を越え、幸せに過ごしているように見えました。リオスギガルとリオアナは創造神となりました。


しかし、その幸せは長くは続きませんでした。子供たちがリオスギガルに対して最高の神になるために叛逆を始めたのです。最初はリオスギガルも軽くあしらっていましたが、神々は遂に母親であるリオアナを殺してしまいました。

怒りと悲しみに堕ちたリオスギガルはもう創造神ではありませんでした。その姿は空の悪魔リオスギガルそのものでした。彼の力は絶大で、神々は手も足も出ませんでした。

そして、自らの子たちを正当に罰しようとしました。しかし、トドメだけはどうしても刺せなかった。それでも子どもへの愛が彼の大剣の刃を止めたのです。そこに、属性力の神『グリルガル』は人間に属性力を渡し、共にリオスギガルを倒しました。倒した8人の人間に、グリルガルは能力を渡しました。渡された者達の名を『テイマー』と呼びます。


その後、死から蘇ったリオアナはこの戦争に終止符を打ちましたと、めでたしめでたし。


「知っている。神話の話だろ?俺意外と好きなんだ」


このような状況だと言うのに、なにか物語を話し始めるのでムッときたが、神話の話だったので少し興奮した。


『この8人はそれぞれ自ら欲しいものを望んだらしい。それは武具であったり能力であったりなんでもいい。お前達は何を望む?』


「「俺は……」」


2人でハモった。しかし、そこから放った言葉は全く異なるものであった。


『請け負った。それと先ほどのアルスロットの質問だが、今ここにいる時間とお前達がいた時間の流れは全然違う。ほぼ向こうの時間は止まっているようなものだ』


俺たちは同時に胸をなで下ろした。


「そうだ、お前の名前はなんて言うんだ?」


『俺か?俺の名前はフェニクスだ。炎のテイマーを導く者だ。さぁ、いざ戦場へ、新たなテイマーたちよ!』


17


目を開けると足があった。は?と思うかもしれないが、そうなのだ。足なのだ。もっと具体的に言うと、スパイクが付いた足だ。


「おわ!」


俺はそれを両手で掴んで言葉通り目の前で受け止める。


『ふふん、どうだ手が治ってるだろ?テイマー祝いのサービスだよ』


「ありがとよ!」


そう言って足を腕で押し出す。押された方はそのままバランスを崩して尻餅をつく。


「な、なんで手が治ってやがる!この、バケモンがァー!」


彼は剣で俺の方に斬りかかってくる。しかし、何故だろう全然怖くない。体中に力が有り余っている感じだ。


「おい、フェニクス。あれ使えるか?」


あれとはテイマーになる上で授かった力のことだ。それを言った瞬間アル兄は珍しく笑い、一言「お前らしいな」と言っていた。その力の名前は───────


『「───────狂者の羽衣」』


俺は緋色の羽衣を羽織る。そして、踏み込んだ。

土埃がまるで小さな爆発のようになり、俺の姿をくらませる。着いた場所は奴の背中の前。こちらに向きながら刃を俺の首を狙ってくる。その腕を片手で掴む。


「なぁ、知ってるか?人間圧倒的な力の差の前だと体に力が入らなくなるんだぜ?」


ギュッと力を入れると、剣を握っていた手は風船のように破裂した。


「───────ああああああああぁぁぁ!!!!!」


「てめぇ!」


俺は木剣に力を込める。


――――――――属性剣技!


次の瞬間木剣の刃を中心に火災旋風が巻き起こる。


「これがテイマーの力……は、はは」


俺は楽しくなって、木剣を指揮棒のように振るうと、族どもは俺の元へ走ってくる。俺も同じように走る。そして、指揮棒を振るう。冥界へのダンスのお誘いはさらりとお断りした。時にはその手をを弾き叫びというシンバルを入れた。そして、髪の毛を掴み、鼻に膝を入れる。ガシッと鈍い音が響き、それを覆い隠すように悲鳴のコーラスが森に奏でられた。


指揮をする様に剣を振るう。演奏者達は自慢のコーラスをしながら倒れていく。俺が先程のたいまつで作った炎がいい背景になっている。誰かが言った「あれは悪魔」だと。


───────俺は力が欲しい。


「馬鹿で上手いことは考えられないけど、純粋な力だけが欲しい。そう、パワーだ、パワー」


『それはまるでバーサーカーだな』


この狂者の羽衣はその使用者の属性力を吸いながら、力を増大させるものだ。それは自らの倍以上の身体能力を発揮させることも可能になるらしい。


演奏が終わった時には彼らは皆自分たちの家に帰って行った。怪我人というお土産を残して。


はぁ、はぁ、はぁ、アドレナリンがドバドバ出ていたせいか、体への負担は極少数だと思っていたが、とんでもない。今にも意識が飛びそうだった。


『テイマーの初陣としては最高の舞台だったんじゃないか?』


「そう、思ってくれる、と、嬉しいぜ……」


やはり保つことは出来ず、その場に俺は倒れた。


18


はぁーぷにぷにだなぁー、と思った。幸せ過ぎてこれが夢ならば一生覚めないでほしいと思うほどに。寝返りを打つように顔を動かすと「ふふ、全くもう仕方が無いですね」と言いながら頭を撫でられた。


───────頭を撫でられた!?


俺が目をパッと開くと、ぷにぷにだった枕が消えて頭だけ地面に落下した。ゴンっという音とともに、頭を強制的に覚醒させられた。


「イテテテテ」


目線を上に上げると、顔を真っ赤にしているようセアがいた。股はパカーンと開いている。


「セアさん、まさかの膝枕デスカ?」


セアはそっぽ向きながら、股をそっと閉じる。


「昨晩はヒロとアルスロットとソラの3人でここを守ってくれたそうですね?私今朝目が覚めて皆に全てを教えて頂いて、私って本当に無力だから、なにかしてあげたくて……」


「だから膝枕を?」


コクリと頷く。俺は胸にグッとくるものを感じ、セアの頭をゴシゴシと乱暴に撫でる。


「いや、俺たちがやりたくてやったんだ。そこにセアたちが落ち込む理由も、反省する意味もない。だから気にするな」


俺はニッと笑った。


「それよりもセア、1人で起きられたんだな」


先程の笑みとは違い、少し悪戯っぽく笑ってみせる。セアは反対に唇を尖らせる。


「いつでも1人で起きられますよ。ただヒロが起こしに来る時だけ、ちょっとだけ、寝坊しちゃって、ちょっとだけ寝相が悪いだけです」


「そっか」と言って俺は再びセアの頭をゴシゴシと撫でる。


「飯にするか」


「はい」


俺は勢いよく立ち上がる。セアもゆっくりお淑やかさを忘れない動作で立ち上がる。


そのまま俺たちは食事場に向かった。


19


朝食を食べに来たのだが、時間的に昼食になるらしい。それほどまでに俺はずっと眠っていた。


食べ終わったぐらいにソラが俺とアル兄に対して「話があるから来て欲しい」と言った。


「ヒロ、それにアル。君たちどうしたの?2人とも昔から強かったけど、あれほどじゃなかった。特にヒロなんて人の域を超えていたよ……」


「それは……」


俺は言葉に困った。アル兄も珍しく下を向いている。どうすればいいのか分からない、と言っているように見えた。すると、俺の右肩が燃えるように熱くなる。


「───────ウッ!」


アル兄も同じだったらしく、肩を抑えている。


肩から肘へ、肘から手に炎が伝わっていき、腕全体が炎に包まれる。そして……


「ふぅ。ようやく出られた」


あの時不思議な空間にいた鳥、フェニクスが姿を現す。


「やぁ、ソラ。こんにちは。あぁ、キミからするとはじめましてか。俺の名前はフェニクス。こいつらテイマーの使い魔と考えてもらえればいい」


ソラは目を見開く。それは鳥が話し始めたからだろうか、それとも俺たちをサラッとテイマーと言ったからだろうか。


「鳥が喋った!?え、テイマー!?え、どういうこと?」


どうやら両方だったらしい。フェニクス以外の鳥達はソラの声に驚いて、木から飛び立って行った。

鳥たちが飛び立った代わりに、一人の少女がこちらに来た。


「ソラ、今のは何の声です?」


少し訝しそうな顔をするセアだ。そこで俺達はテイマーになった経緯を話した。しかし、俺達もあと状況で混乱していて上手く話せていた気がしない。


「俺も聞きたい、フェニクス。なんで俺達がテイマーになったんだ?昨日も聞いたがよく分からなくて……」


緋色の鳥は首を傾けた。どうやら考えているポーズらしい。


「分かった、だがその前にお前達の母親の話をさせてくれ」


20


彼女はとても活発な性格の少女だった。そうだな、ヒロをそのまま女にしたような性格だ。おいそこ、面倒くさそうって顔するな。生まれながら孤児でね、それはカンダルもダオスも同じだった。

え、ダオスって誰かって?そうかあまり道場院に顔出さないものな。道場院が未だに経営出来ているのは、カンダルの出稼ぎとダオスの資金援助にある。まぁ、話が長くなるからこのくらいにしようか。

どこまで話したっけ?あー、3人とも孤児だったって言う所か。

そう、何故孤児になってしまったか。それは10年前まで続いた戦争が原因なんだ。草属性のテイマーと闇属性のテイマーが手を組んでな、宣戦布告したのさ。

なんでそれだけで戦争が起こせるかって?あぁ、知ってるか?テイマーは同じ属性の者を支配することが出来るってことを」


俺はこくりと頷く


「そうか、それなら話が早い。あいつらは言ったのさ、炎属性のやつらを殺せってな。それだけでもうテイマーの思う壺さ」


俺は悪寒がした。俺の身体には今そんなにも強力な力が入っているんか・・・


「大丈夫か?ヒロ続けるぞ。戦争時リリィは妊娠していた。あぁ、腹の中にはお前ら達が居たのさ。多分機会を伺っていたんだろうな。彼女が命を狙われた。旦那も全力で戦ったが、数が数だった。何せたった4、5人に対して草と闇属性の軍人がわんさか襲ってくるなんて、誰が止められる。結局殺させた。だが、死ぬ寸前彼女はせめて自分の子どもだけでも、と産み落としてテイマーの能力を与えた。


しかし、その時俺に約束をしてきた。命の危機が来るまで、テイマーにさせることはやめて欲しいってね。俺は渋々従った。だから、今のお前達がいる。


21


物凄い饒舌で疲れたのか、口から火をボォーと出している。


分かったような分からないような返答だったが、何となく分かった気がしないでもなかった。


「すみません、私途中から来たのですが、ヒロたちは今テイマーだったのですか?」


俺はうん、と頷く。


「凄いじゃないですか!テイマーなんて、一生に一度会えるかどうかの存在なのに、それがこんな目の前にいるなんて」


「でも、俺はこれをどうすればいいのか分からないんだ」


俺は自分の手を見つめた。先程の話を聞いて思ったんだ、この力は簡単に人を殺すことが出来る。一言「あいつを殺せ」と言えば皆それに従ってしまう。そのような力、俺が使っていいのか……?隣を見るとアル兄も同じように神妙な顔をしていた。


「ヒロ、それにアルスロット。何故そのように落ち込んでいるのですか?それは母親からの能力であろうと、今はあなた達の力なんですよ?ならばそれに対して誇りに思いなさい、その力を愛しなさい。周囲の人達ではなく、その力を良くするも悪くするもあなた達次第なのです。」


「セア……」


「正義か悪かじゃないんです。だって、それは結果として着いてくるもの。今あなたたちが考えることは、その力で何を支配するではないんです。何を守るかなのですから」


「何を守るか、か。そうだな!」


「ふふ、全く仕方ないですね。それでもあなた達は私よりも歳上なのですか?」


そうだ、この力をどうするかは俺が、俺達が決めるんだ。それ以上でも、それ以下でもない。


「あのーヒロ、アル。ごめん、本当にごめん。こんな時に言うのはなんだけど、また森に誰か来た」


アル兄が双眼鏡を覗く。すると、フッと、笑った。


「あの国旗はグラン帝国軍だ、助けに来たんだ」


俺たちは大声で叫んだ。ここに居るぞ、俺達はここだ、と。


22


「よく頑張った、本当に凄いぞ」


兵士たちが俺達にそう言って、村まで送ってくれた。どうやら、殆どの賊たちは殲滅できたらしい。


「凄く早い、まだ数日しか経ってないのに……」


それに対して、兵士は何故か微妙な表情をしていた。「ほら着いたぞ」と言われ、目の前にあったのは道場院だった。前に兵士たちと話している女性が1人居た。


「マリーさん!」


俺達は彼女の元へ走った。何人かの子供達はあまりの安心感に泣き始める子もいた。


「もう!駄目じゃない、お薬買ってきたら誰もいなくなっているのだもの……私心配で心配で……」


彼女は俺たちをギュッと抱擁してくれた。


「頑張ったね」


ザッザッ


「うん」


ザッザッ


「俺たち頑張ったんだ」


ザッザッ、と足音が聞こえる。周囲を見渡すと、色々な武器、防具をした武装集団がこちらに歩いてきていた。


「くっそ、敵が追ってきていたのか!」


アル兄が珍しく叫んだ。その瞬間周囲の兵士たちが抜刀する。俺たちに刃先を向けて。


「なんで……?」


「軍と同じ装備なら、軍人なんて甘いんだよ!」「いいねーその顔」


───────狂っている。



そうだ、ここに仲間なんて居なかったんだ。


そして、静かに2人の元グラン軍兵士が兜を脱ぐ。


「草のテイマー、グラナが命じる」


「闇のテイマー、ワラキアが命じる」


2人の声が重なる。


「「そいつらを───────殺せ」」


その声が合図のように周囲にいたもの達が一斉に斬りかかってきた。その動作に迷いなど微塵もない。しかし、迷いなく行動できるものがこちらにも1人居た。


「炎のテイマー、アルスロットが命じる。道場院の皆を連れて逃げろ!」


不意にアル兄がそう叫ぶ。それは俺たち2人でこいつらと勝負をするという、いわゆる宣戦布告だった。


「ソラ、やめてください!───────ヒロ、アルスロットも早く逃げて!」


 ソラがセアを抱えて走り出す。その目虚ろだった。そう、今命令された草属性と闇属性の兵士のように。


「輝属性のセアはこの命令を行使することが出来ない、少々乱暴な扱いになるが我慢してくれ」


アル兄が少し辛そうにそう言った。俺は「あぁ」とだけ言って、奥歯を噛み締める。


「今から作戦を言う───────」


「分かった」


俺は属性剣技で炎を巻き起こす。そして狂者の羽衣を羽織って、走り始めた。族どもを炎で吹き飛ばしていく。向こうは男達がテイマーを守っている陣形になる。


「好都合だ」


奴らの気は完全に俺の方に向いている。


***

俺はフェニクスとの会話を思い出していた。



『アルスロット、お前は何を望む?』



「───────俺は目の前のもの全てに手を届くようにしたい。瞬間的にそこに移動出来る……そうだな、瞬間移動というものを使いたい」


フェニクスはなるほどと言って、少し考えた後に『ならばこれを使え』と言い、俺は素直に従った。目に青い炎が注がれる。一瞬怯んだが、瞳を開けると複数の点が見えるようになった。それを見て俺は全てを悟る。


「なるほど、これはいい」


隣で弟のヒロがどのような力か教えて欲しいとねだってくる。


「秘密だ」とだけ言って瞳を閉じる。そしていつもの瞳に変えた。


それの名は『刹那の魔眼』。視界に入る場所ならば何処にだって瞬間的に飛ぶことが出来る。ヒロの狂者の羽衣に比べると地味だが、実用性は優れていると思う。例えば………


***

大振りで木剣を振るっ時、草の蔓が俺の手首を拘束した。それを強引に引きちぎった瞬間、1人が槍を俺に突き刺すべき走ってくる。



――――――間に合わない!


カァァン!と金属を何かで弾く音が聞こえた。目を開けるとそこにはアル兄がこちらに背中を向けて立っている。


 「サ、サンキュ」


 「フン、早く作戦を実行するぞ。構えろ」


 「ああ、もうこの無愛想のくそ兄貴が!」


 アル兄は敵の剣を弾いた瞬間、真後ろに瞬間移動して背中を切り裂く。それが終わるとまた次の敵の元へ瞬間移動した。


 「これ俺いらねぇ――かもな」


 そう言いながら、俺は剣を再び構える。


 「道場院ヒロ!今からその草と闇のテイマー様をボッコボコにしてやるぜ!」


 やつらの元へまっすぐ走る。敵がガードしようが関係ない。そのガードごと吹き飛ばす!


 「リーヴ・アウシュ」


 深くフードを被った男が何かをつぶやく。刹那地面から丸太の槍が何本も現れる。それを本能に任せて躱す。近くで悲鳴が聞こえる。チラリと横を見ると。敵が串刺しになっていた。


 「嘘だろ?」


 ――――――――こいつに味方って概念はないのかよ!


 間合いに近づく。殺らなきゃ、殺られる。柄をグッと握りしめ、剣を振るう。


 「覚悟!」


 刹那、もう1人のテイマーが俺の目の前に現れる。右手には大鎌、そして左手には闇色のランタンを握っている。鎌が漆黒に染まる。俺の木剣と鎌がぶつかり合う。


 「なんだこれ、力が抜ける………」


 狂者の羽衣をしているはずなのに、俺は弾き飛ばされた。狂者の羽衣も解除されてしまう。


 「な、んで」


 無数のドクロがやつの周りにふわふわと浮いている。


 「闇属性と、戦う、初めてか?」


 人間とは思えないようなかすれた声が地面に転がっている俺に問いかける。


 「さぁて、どうかな!」


 俺は立ち上がりと同時に、地面の石を投げながら斬りかかる。石を弾かれたが、その隙に間合いを縮める。


 「ナータ・ディヴァティ」


 耳障りな属性術の詠唱が耳に入る。


――――――――いきなり、身体が重く!


 地面に引っ張られるような感覚に俺は襲われた。


 「今だ!アルニィィィィィ!!!」 



 死に神の後ろに青い炎がボッと生まれ、1人の少年が出てきた。そう、アル兄だ。凄い勢いで、死に神の首を狙う。


「ドン、ピシャ!」


俺はニッと笑った。しかし、そこにいつの間にかフードを被った男が現れる。いや、あれは草属性のテイマーだ。まるで全て最初から分かっていたカのように、アル兄の剣を弾く。


「なんだ、この程度か。君たち雑魚だね」


丸太が腕から生え、アル兄を吹き飛ばす。猫のように着地したが、そこにはツルがビッシリと張っていて踏むと罠のように捕まり、道場院の玄関の方へ吹き飛ばされた。


「リーヴ・ワールド」


地面から何本もの大樹が生える。それは一瞬のうちに道場院に巻き付くことが出来るほどの大きい、蛇へと形を変えた。長さは500メートルと言ったところか。全く笑えない。


 その大蛇が俺めがけて、襲いかかってくる。


――――――――動け


木剣を杖に立ち上がる。


――――――――動け!


重力に抵抗して、一歩踏み出す。


――――――――動けぇぇぇぇ!!



キィィィィン!


金属音が鼓膜を響かせる。


藍色の鎧に身を包んだ騎士が前に立っていた。


「あっぶねぇーなー」


 と言いながら、ランスのような剣一本だけ大蛇を吹き飛ばす。その鎧に装飾はなく、数々の刀傷がそれの役目を果たしている。


「すまねぇ、遅れた」


「誰……?」


「俺か?まぁ、俺しかいないよなぁ?俺の名前はグラン帝国、軍帥ブロムっていう老いぼれだ。お前の他に誰かいるか?」


俺は頷き玄関を指差す。


「分かった」


そこで初めて、顔を見た。


───────老いている。


俺の4倍は歳を取っている。しかし、そのようなことを思わせないような動きで足を動かした瞬間、草のテイマー、グラナに斬りかかっていた。


「よう、グラナ」


ブロムと名乗ったその老騎士は鍔迫り合いで押し潰そうとしている。俺はアル兄を助けるべく、足を動かす。後ろに足音が聞こえる、ワラキアだ。


「アル兄!」


俺が手を伸ばす。アル兄もゆっくりと俺の手をがっしりと握った。


「飛ぶぞ、ヒロ!」


俺達が最初いた場所に戻る。


ガンッ!と鎧と鼻をぶつける。


「良かった、無事だったか……」


1本の剣を持った人が俺たちを抱きしめる。


「あなたは……?」


 「私はコムン・リター所属キングだ。君たちテイマーを保護しに来た。大丈夫我々は君たちの敵ではない。まぁ、それを証明することはできないが……今はそうだと信じてくれ」


どこかで聞いたことのあるその声に一瞬眉をひそめたが、それよりも彼の言葉に驚いた。


───────コムン・リター


いわゆる国の暗部のような存在だ。彼らは戸籍上には存在しない人物の集団らしい。兵士1人1人が仮面のような兜をしていることから、仮面の騎士団とも言われている。軍帥といいコムン・リターといい、なんでこんな辺境な村にここまでの大物達が揃うんだ。


俺たちはゆっくりと頷いた。



「よし、いい子だ。ブロムさんが気を引いてくれているうちに、逃げろ。大丈夫、俺の部下を数人君たちの護衛役として貸す。俺も今からあちらに加勢する。先ほど、軍が村に到着したんだ。だが気を付けてくれ、こいつらみたいになりすましている奴もいるかもしれないからな」


さぁ行け!の合図で俺はアル兄を支えながら逃げていく。


「ヒロ、すまん」


「この程度、造作もないさ。さぁ、逃げるぞアル兄」


アル兄もあぁと言ってその場から離れた。



24


***


「逃がすなんて、酷いことするなぁー」


グラナが悲しそうな目でそう言ってくる。俺は溜息を1つついてから、再び武器を構える。


「知ったことか。すまないが、あの子達はテイマーの前に、1人のグラン帝国の国民なんでな。そして、お前達は国境を無断で超えてきた侵入者だ、それ相応の対処はさせてもらうぞ」


「ハッ!国を守る兵隊さん達はこれだから……お固い人達は僕は嫌いなんだ。そうは思わないか、ワラキア?」


「ブロム……殺す、それさえ出来ればいい」


俺ははぁーともう1度溜息を吐いた。実際俺もお堅い会話は嫌いだ。まぁ、そういうルールなのだから仕方が無いのだが……


「おい、カ……キング!お前は周りの残党を頼む、俺がこいつら2人をやる」


「わかりました!」


敵は2人、齢50を超えているというのに、まだ現役として戦場に駆り出されるのはどうかと思うが、まぁ、好きでやっているのだから不満ではない。しかし……


「体はやっぱり堪えるな……」


そう言いながら俺は剣を抜刀する。8本の刀がドーム状になっている剣だ。これはその昔、セルニアを襲ったドラゴン、ヴォーディガーンの背骨と肋骨を素材として作った武器だ。俺はその剣を構える。


これをするだけで、周囲の音がスーッと消えて行くのを感じる。手にずっしりとした重さを感じる。


「ふん!」


俺はランスのような、はたまた大剣の様なものを振るい、グラナを一撃で吹き飛ばす。それを追おうと思った瞬間、足に何かが引っかかる。ツルだ、プツンと音が鳴った拍子に周囲の丸太がこちらに押し寄せてくる。


「邪魔だ!」


青い炎でそれらを焼き尽くす。その隙を見たのか、ワラキアの大鎌が孤を描きながら迫ってくる。


キン!と鼓膜を切り裂くような音がする。俺は剣で弾き、空いた手で頬に拳を入れる。


「ホゴッ!」と叫んでゴロゴロと転がる。まるでボールのようだ。


しかし、俺の拳が再びツルで拘束される。


「つーかまーえた」


ツルが上に上がっていく。俺がそれに抵抗するように引っ張る、つまりそこで一瞬静止した。刹那、俺の心臓めがけてグラナが剣を突き刺そうと走ってくる。


「俺をこの程度で殺せると思ったのか?」


ツルを握って引きちぎる。その勢いで剣を振りかぶって、グラナの腕を切り落とす。


「あ、ああああああああぁぁぁ!」


顔を掴み、地面に叩きつける。


「黙れ」


血が俺の頬に触れる。その血が、グラナの剣に滴る。


「まずい!」と言って俺はその場から離れる。


「しくったか……」


「痛いなぁーブロム……すげぇーいてぇーよ。でも、気持ちいい!」


グラナの剣が主人の血を吸っている。その剣をグラナが掴む。


「さぁ、始めようか……起源再臨。憑依しろ、ヨルムンガンド一緒に殺そう……」


───────起源再臨。


生物にはその魂の元となる『起源』というものがある。それを再臨及び憑依させる能力。禁忌の力とされているが、それを使うか否かは、個人個人の判断に任せられている。


グラナの体が蛇の形に変わる。否、それは下半身が蛇で上半身は悪魔だ。背中にある12の曲刀が突き刺さっている。背中から触手のようなものが生え、12刀流となる。

グラナはスっと姿を消し、目の前に現れる。「な!」と驚愕の念を口にした時には12本の刃が俺の体を襲う。それを全て弾き飛ばし、大きく後退する。


しかし、それでもこいつの間合いだった。尻尾がこちらに鞭のように押し寄せてくる。バチンと音が響き、吹き飛ばされる。木々に激突する。


起源再臨には回数制限がある。つまり、自分の起源を憑依させるわけなのだから、使い過ぎるとその起源に身体が乗っ取られてしまうのだ。


「でも、今死ぬよりはマシか……」


俺は手を浅く切り、血を刃に馴染ませる。


「───────起源再臨。憑依しろ、ヴォーディガーン」


瞬間、武器がドクンと脈立つ。8枚の刀が開きやがて離れる。代わりに青い炎が剣となる。体がドラゴンのようになり、しかし人間の原型は保った形になる。


背中の翼を羽ばたかせる、一瞬でグラナの目の前に移動する。しかし、まるでそれを予測していたかのように、12本の刃が押し寄せてくる。先までは見えなかったが、今ではそれが止まって見える。

一瞬、羽ばたかせて後ろに飛んでからグラナの背中には炎の剣を突き刺す、そして引き抜きまた斬りかかろうとした時、ワラキアが大鎌で俺の首を狙ってくる。それを8本の刀で散弾のように撃ち抜く。


「殺しはしない、殺したら俺がテイマーになってしまうからな。ただ、半殺しならいいだろう?」


シュルシュルとグラナが地を這い、ワラキアを掴む。俺がそこに斬りかかったが、もうそこには居なかった。


「逃げられたか……おい、キング、手を貸すぞ」


1対50ぐらいの戦いを行っていたのに、キングは行き1つ切らしていなかった。逆に族どもがおびえ始め、身体を震わせている。俺がやつらの前に立った時にはもう、周囲の敵達は戦意を削がれていた。



25


***


双子の弟といえど、こうやって俺を運んでくれるとつい、感じてしまう。大きくなったな、と。


「アル兄大丈夫か?歩けるか?」


「あぁ、もう大丈夫だ」と言ってみせる。何かの本で言っていた、兄は弟の前に立たなければならないと。あれ、漫画だったか?


「良かった、もうそろそろ村長の家の前に着く。あそこに行ったら誰かしらいると思う」


「そうだな」


あの時、2人でテイマーになった時不安になった。俺はこれからもこいつの目標と成れるだろうか?今も成れているか分からないが、これからも頑張れるだろうか。と。しかも、先程でも俺が作戦を考えたせいで、危なく2人とも命を落とすところだった。


「アル兄、今自分の作戦のせいで危なかった。俺の責任だー、なんて考えてないよな?」


俺の感情を読んだかのように、的確に当ててきた。


「フッやっぱり兄弟だな」


「そっか」と言って俺の背中をバンっと叩く。


「ったく、らしくないな。女々しいぞアル兄。あれは仕方がなかった、あれ以上の作戦は俺は思いつかなかったし、正直勝ったと思っていたぞ俺は。それに俺もその作戦に了解したんだ。だから俺も同罪だし、アル兄1人の責任じゃない」


フッと小さく笑ってみせる。


───────兄は弟の先へ行く者。


しかし、こいつに導かれるのも悪くないかな、と思った。


「あ、アル!ヒロ!!セア、2人が帰ってきたよ!!」


遠くで幼馴染の声が聞こえる。泣きべそをかきながら、金髪の少女がこちらに走ってきて、俺たちをギュッと抱きしめた。


「良かった……本当に」


「ごめんな、セア。それにソラありがとう」


マリーさんも心配そうに俺たちを見ていたが、安堵したようにホッと息を吐いていた。


***


村の中心部に存在する噴水広場、そこでゼティー村の人々は集められた。そこには演説台が設置されていて、1人の若い兵士が羊皮紙を開く。


村にいた賊たちは大方撃退出来たらしい。だが、大事を取って1度王都セルニアに避難して欲しいとの事だった。そこで村を抜けるために7つの班に別れて、それぞれのルートで馬車に乗り村を転々として最後は大きな船に乗って投げる作戦らしい。


俺はチクチクとした緊張感に駆られていた。


「ヒロ、同じ班ですね。一緒に頑張りましょうね」


セアが微笑む。しかし、それは不安で堪らないと言っているようだった。


「大丈夫、セアは俺が必ず守るから」


俺はすかさずニッと笑っでみせた。しかし、俺もセアと同じ様な表情をしていると思う。それを見て彼女はもう1度今度は少し穏やかに微笑んだ。


26


俺は眠れず、 テントから出た。明日この村を出ればしばらく戻らなくなるかもしれない、そう思うと無性に悲しくなってくる。トボトボ歩いていると、3階建ての建物があった。渡り廊下の先には小さな道場もある。


「今日ここであんな目にあったというのに……」


俺は道場院の目の前に立っていた。この村から離れたくない。しかしそれ以上にここから離れたくなかった。止まった足を前に動かす。すると、俺の足が誰かの足音と重なった。


「ヒロ……?」


金髪の少女が不思議そうにこちらを見ていた。その表情は何故か少し恥ずかしそうだった。


「……小便?」


「違います!」


思ったことをそのまま口にするのはヒロの悪い癖です、と言って朱色の頬が色を増す。


「忘れ物を取りに来たんです。ほら、私避難する時ソラが用意してくれたでしょ?だから、個人的に必要なものがなかったんです」


俺は、着いてくよ。と言って背中を追う。しかし、女子部屋の中に入ってしまったので入口で俺は1人で待った。


「ごめんなさい、もう大丈夫です」


セアは肩から黄緑色のトートバッグをかけて出ててきた。中を見ようとしたが、見させてはくれなかった。


「ふふ、秘密です」


そう言った彼女の頬は再び朱に染まっていた。


27


それから俺達はこっそりテントに戻った。セアはやることがあると言って、その場で別れた。寝る前に一応トイレに行こうと思って、村長の家へ向かうと声がした。男女の声だ、若くはないが別に歳をとっているという訳でもない声だった。


「今回は見送りだな、あの場でお前がしておけばよかったんだ」


「私には無理です───────」


あ、この声はマリーさんだ。と思い、ひょいと顔を出す。


「マリー……」


さん。と言おうと思ったら、マリーさんと声が重なった。


「───────あの子達を殺すことなんて」


「え、ちょっとマリーさん。殺すってどういうこと?」


俺は眉毛を中心に集めながらそう問う。その声に反応したのか、彼女の背中がビクッとした。


「あら、ヒロくん。どうしたの?もう遅いから寝なさい」


良かった、いつものマリーさんだ。と思いホッとする。


「いや、あの子達を殺すって言ってるから何のことかなって……マリーさん元軍人だっけ?」


すると、優しい笑みで首を振る。


「違うの、ただこの軍人さんが『この村に裏切り者がいる。それがもしも子どもだったら、彼らの扱いに慣れているお前が殺せ』って言ってきたの。酷くない?」


「違う……まぁ、いい。後はお前にかかっているからな」


そう言って兵士はその場から離れていった。


28


俺たちの馬車は1度隣の村に寄って、食料などをそこで補充してその後カナル運河で船に乗って王都セルニアに向かう。カナル運河とはグラン帝国を横断する大きな川だ。また、船による村間の貿易が盛んなこの国での大きな生活線となっている。


「あら、可愛い子が入ってきたじゃない。こっちにいらっしゃい?」


「おい、子供相手に気持ち悪いぞ」


「ん、もぅ。少しはいいでしょ?最近任務続きだったんだから」


馬車の騎手席に男性の声が2人聞こえる。しかし、その片方は女性のような話し方をしている。


「ここいいの?」


俺は興味本位で彼らの後ろに移動した。しかし、2人の間が空いていると勧められた。俺は渋々それに従う。


「もぅ、本当に可愛い……食べちゃいたい」


俺が言葉を失っている中、反対にもう1人の無精髭が凄い男性はその言葉が来るのがわかっていたかのように言い返す。


「お前は本当に食べかねないからやめろ」


「え?」


今度こそ俺は言葉を失った。人を……食う?


「冗談よ、安心して。あ~ん、本当に可愛い」


そのような会話をしながら俺達は次の村に向かった。


29


その村は静まり返っていた。凄く活気があった訳では無いが、ここまでではなかったはず。一体何が……


「長旅ご苦労、物資だ貰ってくれ」


そう言って渡してくれた兵士は昨日マリーさんと話していた人物だった。


「あ、昨日の」


次の瞬間何を思ったのか、その兵士は俺にボウガンを向けてくる。その動きに迷いはない、まるで俺を殺すためにここに来たかのようであった。


「危ない!」


そう言って無精髭の兵士がボウガンを斬り、その後にその兵士のことも斬り殺す。


「どうなってる!おい、敵襲だ、敵襲!!囲まれているぞ!」


その声に反応したかのようにここの村人全員が武器を持ってこちらに襲ってくる。


「テイマーの能力?いや違う、ここの村人達は炎と輝属性だったはず……ならば今までいた村人たちは?」


無精髭の兵士は顔を真っ青にしながらそう唱えていた。


「逃げるわよ、さぁ早く!」


オカマの兵士はその顔からは想像できないほどの鋭い表情で轡を握る。


「ビシッ」と音ともに赤い液体が俺の頬にかかる。いや、今の音は馬の音のはず……だか、彼の目には深々と矢が刺さっている。そのまま俺のほうへ倒れてくる。血は服につき、鉄の匂いがする。頭がクラクラする。さっきまで話していた人が死んだ……?まだ名前も知らない人が……


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ」


悲鳴とともにそれを地面に投げ捨てる。なんで?なんで?と答えのない問いが脳内を支配する。


「坊主、落ち着け!」


無精髭の兵士が俺の肩をガッと掴む。


「ここから西に進んだら小さな兵舎がある。そこに向かえばグラン兵が助けてくれるはずだ!だからそこへ……」


ピュウという音と共に俺と話していたボールがこちらに飛んでくる。


コロンコロン。


丸いボールは赤いペンキを地面に塗りながら転がる。それが俺の足にコツンと当たる。無精髭のボールと俺の目が合う。


「逃げなきゃ、逃げなきゃ!」


馬車の中を転がるように外へ出る。


───────西に進んだら小さな兵舎がある。


「西、兵舎!」


思い出すようにそう唱える。


30


村を出れば少し落ち着いた。どこに敵がいるのかわからない、そんな恐怖が俺の心臓を握り潰そうとする。


「とりあえず血を落とさないと……」


俺は上着を脱いで川で洗う。その村はこの川が村境らしく、柵があったので洗った上着をそこに干す。


「体も酷い臭いだ……」


体中に血の臭いで終始吐き気がしていた。今度はズボンと下着を脱いで体を洗う。洗剤などないので気休め程度だったが、少しは楽になった。

上流の方へ歩くと人影が見える。木剣は柵の方に置いてきてしまったので、川の中にあった手で掴める程のサイズの石を1つ掴む。


「誰ですか?」


少女の声だ。硝子のように硬く、しかし、ふとした瞬間に壊れてしまいそうな脆い声。女性特有の曲線がよく映える裸体の少女が俺に背中を向け、顔だけこちらを振り向くいている。その金の髪は水が滴り、その奥からこちらを覗く緑色の瞳は不安に満ちている。それは神話に出てくる海の女神リオアナのようであった。


「なんだセアか……」


俺は胸を撫で下ろす。しかし、対象にセアはみるみるうちに顔が真っ赤になっていく。


「ヒロ、あああああなたなんで裸なんですか?」


俺は自分の体を見下ろす。


「見るな!」


「見ません!」


俺はサッと岩陰に隠れる。真夏で良かった、服が乾いていたので着替える。




「いや、その……すまん」


「いえ、私も……裸だったのに、棚に上げてしまい申し訳ございませんでした……」


その言葉を言いながら再び顔が真っ赤になりながら謝罪する。俺も咄嗟に頭を下げた。


俺はセアに先程で無精髭の兵士が教えてくれた兵舎の話をして、そこに同行するようにほぼ強制的に提案した。 俺達は歩いた西へ西へ、とにかく西へ歩いた。


次で総集編はラストになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ