総集編ー上ー
※この話は2~15話の総集編となります。
あけましておめでとうございます。今年の干支は『亥』!
どこかの、モンスターをハントするゲームに出てくるウザイイノシシに負けないよう自分も真っ直ぐ突き進んで頑張っていきたいと思っています!
1
血溜まりの中、俺はそこで泣き続けた。
───────助けてあげられなかった……
───────救えなかった……
───────目の前にいたのに……
負の感情がグチャグチャと混ざる。俺は彼女の骸を抱き続けるしかできなかった。
2
朝目が覚めると、心にポッカリと穴が空いた様ななんとも言い難いモヤモヤした気持ちだった。悲しい夢だった気がするが詳細を思い出すことが出来ない。
二段ベッドの上から幼なじみの少年が顔を出す。
「おはよう、ヒロ。朝から魘されてたよ。珍しい……」
俺の名前を呼んだ少年は、一言で言うのならば『柔らかそう』だ。俺は寝ぼけた頭で彼の名前を呼ぶ。
「おはよう、ソラ。何か嫌な夢を見た気がするけど、よく思い出せないんだよな」
俺は溜息を漏らしながら彼の会話のキャッチボールの玉を返す。
「起きて早々申し訳ないんだけど、セアを起こしてきてもらっていい?僕は今から朝ごはんの準備してくるから」
ここは村に一つだけある孤児院で男女含めて10人前後ここで生活している。そして先程ソラが話していたセアという少女は俺たちより2歳年下で、今日が彼女の誕生日だ。
俺は少しドキドキしながら女子部屋へと足を向けた。
3
トントンとドアをノックするが、返事は無い。
「さぁーて、どうするか……」
セアはとてもいい子なのだが、1つ弱点がある。
俺は手札からカードを抜くような気持ちでドアノブを掴む。すると、スヤスヤと寝息が耳に届く。
───────くそ、ババ引いちまった……!
彼女は朝が弱いのだ。
今は夏なのでタオルケット1枚しか被っていないはずだが、それすら俺の目の前にはない。どうやら暑くてどこかに投げてしまったらしい。黄金を流し込んだような長い金髪は乱れ数本は咥えて、ムニムニと噛んでいた。
「セアーそれ美味しいかー?」
首から下を見ると、所々彼女の瞳と同じ黄緑色の下着が顔を出していた。
俺は躊躇しながら彼女の肩を揺すった。すると、んーと言いながらちょこんとベッドに座る。そのまま俺の方へ倒れてくる。客観的に見ると、俺がセアを抱いているようにしか見えない。
トントン、とドアの方からノック音が聞こえる。
「セア、開けるね。あ、そっかさっきヒロが……ごめん、お邪魔だったね……」
夏なのに空気が凍った気がした。
「違う!ソラこれは、その……違う!」
目線を合わせずに彼はドアを閉める。
「……ヒロ……おはようございま……す?」
彼女は自分が抱かれている状況に気がついたのだろう。目を白黒させている。もしも立場が逆であったら俺もそうしていただろう。セアを宥めながら、俺達は朝食が置いてあるリビングに向かう。
4
リビングに着くと顔を真っ赤にしているソラを横目に席に着く。セアもそそくさと席に座った。
「ヒロ、騒がしいぞ。少しは静かに出来ないのか?」
ムッと思いながら俺は声の主の方を振り向いた。そこには姿勢よく食べている1人の少年がいた。首を縮めながら言い返す。
「あぁー、うるっさいなぁ。腹減ったから飯食わせてくれよ……」
彼の名前は『アルスロット』、通称アル兄やアル。銀色の髪に青い瞳、それ1つが芸術の集合体と思える。まぁ、性格を除けばの話なのだが……すると、キッチンの奥からニコニコと微笑みながら一人の女性が、俺とセアの分の朝食を運んできた。
「あらあら、2人とも兄弟なんだからもっと仲良くしなさい」
そう、彼と俺は双子なのだ。アル兄と言うように、彼が兄で俺が弟なのだ。そして、俺たちに食事を持ってきてくれた笑顔が似合う女性、彼女の名前を『マリー』という。
ここの孤児院の院長の奥さんだ。旦那さんこと院長よりも何歳か年上で、いつも俺たちを見守ってくれる。だが、本当に俺たちを見守ってくれる筈の院長様はまだ起きていないようだ。
結局彼が起きたのは俺達が朝食を平らげ、食器が洗い終わったぐらいであった。
5
俺達には筋力、知力の他に『属性力』というものがある。
神話によると、属性神グリルガルが闇の神リオスギガルを倒して人々に与えたという。まぁ、それが本当かどうかは定かではないが……
この国の名は『グラン帝国』首都をセルニアにする炎と輝属性がこの国で暮らしている。属性力は完全に親からの遺伝であり、それ以外に手に入れる方法は1つしかない。
そのひとつというのが『テイマー』と呼ばれる『属性力の長』となる者だ。彼らは8つある属性力、『炎』『氷』『雷』『岩』『風』『草』『輝』『闇』にそれぞれ1人居て、自分の属性の者達を従えることが出来る。また、テイマーが他のテイマーを殺すとその者の属性を手に入れることが出来、全て集めると属性神に願いを叶えて貰えるという。まぁ、これも神話の中の話であるが……
俺たちの住んでいるここは昔大きな戦争があった。そこで生まれた孤児たちを集めた孤児院であり、また院長のカンダルという男性の趣味で道場を開いている。故にここの名は皆『道場院』と読んでいる。
道場院は3階建てで1階がキッチンや、トイレなどの生活に必要なものが置いてある。2階が俺の様な孤児兼弟子たちの部屋。3階が院長夫婦の部屋である。1階にある渡り廊下を進んでいくと、こじんまりとした、しかし、立派な道場が建っている。
朝食を済ませた俺達は道場で師匠にみっちりと扱かれた後に昼食を摂った。疲れた身体を休めようと昼寝をしたらいつの間にか夕食の時間になっていた。
6
少し悲しそうな、しかし、何故か嬉しそうにマリーさんは夕食を用意してくれた。 料理はセアの大好物のオムライスだった。彼女の顔がパァーッと明るくなる。
「そういえば、今日はセアの誕生日だったか……」
ふと思ったことがそのまま零れ落ちる。気づいた時には隣でセアが涙目になっていた。
「酷いです、ヒロ……」
少し大人びているとしても、やはり彼女は10歳の少女なのだ。そのような子にあのセリフは酷だったかもしれない。なので今更遅いかもしれないが、俺は弁解を試みた。
「いや、忘れていた訳じゃあないぞ、本当だぞ。ただちょっと頭から抜けてただけで……」
「それを忘れているというのです、ヒロ!」
はい!と言って今度は素直に謝った。騒がしい夕食を終えた後、俺達はセアにある贈り物を渡した。
「これは?」
「リボンだよ。セア髪の毛切られるの嫌いって昔言っていたから、せめて髪を結えるようにって道場院のみんなで作ったんだ」
「作った?」
どう説明すれば良いものかとアタフタしていると、ソラが助け舟を出してくれた。
「リボン本体は自分達のお小遣いで買ったんだけど、カラーの物だと高いかなって思ったんだ。だから、ほら道場院の後ろに大きな森があるでしょ?おそこに生い茂って葉っぱで染色してみたんだ」
「そのせいで凄く青臭くなったがな」
ボソッとアル兄が横槍を入れる。セアはそれを聞いてスンスンと匂いを嗅ぐと小さく苦笑いをしたが、その後リボンに頬擦りをする。
「ありがとうございます、皆さん。このリボン大切にします」
あまりの匂いの臭さか、それとも貰った嬉しさか分からないが、セアの瞳から大粒の涙が1粒流れた。俺はそれを直視することを躊躇ってしまった。
「ヒロ、どうですか?」
セアは髪を結い、その場でくるりと回った。少し頬を染めながら、それはまるで花嫁のように。
「い、いいんじゃ、ないか?」
「もう、ヒロは素直じゃありませんね」
その時の彼女はとても美しかった。
7
「じゃあ、行ってくる」
そう言って師匠は朝早く道場院を出た。彼は月に1回多くて2回ほど、遠出をすることがある。昔働いていた者達からの頼みで断りづらいらしい。しかし、1度言ってしまうと10日前後帰ってくることが無い。つまり、実質この道場院を護っているのはマリーさんなのかもしれない。それを彼女に言ったら「男は勝手ね」と苦笑いをしていた。
朝起きて、師匠を見送ったら、みんなから昨日と同じように、セアを起こすように言われた。俺は渋々それに従った。
「セアー、朝だぞー。開けるぞー」
ガチャりと扉を開けると、昨日と同じようにセアはタオルケットでサナギになっていた。
「ごめんなさい、少し今日体調が悪くて……今起きますか、コフッ」
───────え?
彼女は吐血した。俺は目を白黒させた。何をすればいいのかわからず、とりあえずマリーさんにどうすればいいのか聞くことにした。
「あら、ヒロくん。どうしたの?今日から階段ダッシュ?元気ね」
「マリーさん、その、セ、セアが血吐いた。どうすればいい?」
そこにいたみんなが目を見開いた。それはマリーさんも同じだった。彼女はセアの元に向かい、見て直ぐに言った。
「お薬買ってくるね。どんなお薬買えばいいのか分からないから、ちょっと遅れるかもしれないけど」
そう言って、彼女はそそくさと玄関を飛び出した。静寂が訪れた。何をすれば良いのか皆分からなかった。俺はとりあえずセアの部屋に向かった。
「ヒロごめんなさい、ご迷惑かけてしまって……」
こんな状況なのに、彼女は俺に対する罪悪感を口にする。そのようなこと気にしなくていいのに。
「なんでも言ってくれ、可能な限りなんでもするつもりだから」
じゃあ、と言って彼女は右手を出してくる。
「手を握ってくれないですか?実は今不安で仕方ないのです」
「手だな、任せとけ」
握ると彼女の手が汗ばんでいるのが分かった。そして、震えているのも。
「眠っていていいからな」
すると、セアは片手で掛け布団を鼻先まで持ってくる。
「こんな状況じゃ眠れませんよ」
「何か言った?」
「なんでもありません」
15分ぐらいすると彼女はスヤスヤと寝息をたてながら自分の世界に入って行った。俺はそれを子守唄に眠りに入った。
8
カン!カン!カン!カン!カン!
どのぐらいがたっただろうか。村中に鳴り響く鐘の音に目が覚めた。セアはまだ眠っている。寝返りをしているので、意識がない訳では無いだろう。俺はバレないように彼女の手を解いた。そして、1階にいる皆に事情を聞きに行った。
「みんな、今の音何?」
アル兄がこちらをスっと見てから口を動かす。
「避難警報らしいな、訓練があるなんて聞いていないが」
「つまりそういうことなの?」
ソラが目を泳がしている。多分俺も同じ表情をしているだろう。
「どうする?マリーさんまだ帰ってこないけど、避難した方がいいかな?」
「ああ、そうだな。手紙だけ書いておこう、それよりもセアどうするか?残念だがあの容態で山は登れないだろう?」
俺たちの避難所は山にある。大きな大樹で造ったツリーハウスだ。師匠が幼い頃、幼なじみ達とともに作ったらしい。本当かどうか聞いてみたら「男の夢だろう?」と言われた。全くそうだと思う。
「俺が、俺がセアを連れていく。おんぶしてでも、何をしてでも運ぶ」
皆がスっと俺の方を見る、出来るかどうか。見捨てるかどうか。がその瞳には映っていた。ピリピリとした空気にアル兄がため息をついた。
「お前だからそう言うと思った。ソラ、セアの分の荷物を運んでくれないか?」
「うん、任せて」
俺は礼を言ってから、2階に上がって行った。
「セア、起きれるか?」
すると、まだ体が痛いのか、眉間にシワを集める。しかし、俺の顔を見て直ぐに、ニコッと笑顔になった。
「なんですか、ヒロ?」
体が限界のはずなのに、彼女は俺に平然を繕う。
「今避難警報の鐘がなった。俺達は今からあの避難所に行く。俺がセアをおんぶする、山道を歩くから痛いと思うけど我慢してくれ」
「……やです」
「ん?」
俺は聞こえなかったので聞き直す。
「嫌です。こんなことまでして、みんなの足を引っ張りたくない。私を置いていってください」
「バカ言うな、そんなこと出来るはずないだろう!」
「でも、私は迷惑かけたく……」
「迷惑だなんて思うなよ、俺が決めたんだ。これは俺の我儘だ、セアが自分の我儘を貫こうとするように、俺も貫いてやる」
「かっこいいな」
「かっこいいね」
背中の方から声がするので、振り向くと扉に隠れているアル兄とソラがいた。
「え、お前、ら、なん、で?」
「ほら、出来たぞ。直ぐに出発する」
9
「重くないですか?」
「あぁ、大丈夫」
「本当ですか?」
「本当だ」
「重くないですか?」
「ああ、大丈夫」
「本当ですか?」
「本当だ」
「ヒロ、重くない……」
流石にと思い、セアの言葉を遮った。
「あのーセアさん、あなた何回同じこと聞いてるんてす?」
「ごめんなさい、ちょっと心配で……」
確かに俺も同じ立場だったら、この無限ループから抜けられないかもしれない。でも流石にここまでては無いとは思うが。
自分と俺の荷物を持ってくれているアル兄が少し息を上げながら言った。
「着いたぞ」
未だに俺たちの遊び場として使われているツリーハウス。みんな躊躇なく扉を開けた。
10
ソラがセアの布団を敷いてくれた。床が硬いので道場院よりは寝づらいだろうがそこは流石に我慢してもらうしかない。
俺はセアの元を離れ、アル兄とソラがいる部屋へと向かう。
「セアは?大丈夫だった?」
ソラの問いに俺はコクリと首を縦に振った。ソラが胸を撫で下ろした。アル兄もそのように見えた。
「これからどうするんだ?」
俺は2人に問掛けると、アル兄が机に地図を広げる。
「俺たちの村からセルニアまで片道2日かかる、往復で4日としてもその間の期間もある。だから最低でもここで5日は過ごさないといけない。まぁ、その前に宿営地だったり、他の村の兵士が来てくれるかもしれないがここまで来てくれるかどうかわからない。何せここは……」
「村の最奥だからね」
ソラも苦虫を噛んだような表情をしている。しかし俺はずっと疑問に思っていたことを2人に聞いた。
「そういえば、今回は何の警報だったんだ?」
勉強不足がこんな場所で祟るとは……俺も理由は違うにしろソラと同じ表情になった。
「あぁ、どうやら村が他の国の者達に侵入されたらしい」
それを聞いた瞬間、体温が急激に下がるのを感じた。これが俺たちの人生を大きく狂わし、そして新たな目標を立てる理由にもなった事件。
───────ゼティー村解放戦である。
所々カットしたシーンや、また、追加したシーンがあります。特に、2箇所ほど「本当は必要だろ!」という場面をカットしています。
自分の文章力が足りなく本当に申し訳ございません。




