誓いは水に流れる
お久しぶりです。なるがうすです。最近大学受験のため、あまり書いていなかったのですが、最近好きなライトノベルが発売したので、やる気を出して書いてみました!!
(少々グロテスクな描写があります)
お見苦しいところもあると思いますが、暖かい目でお読みください
いきなり集合場所を離れた俺達はまずししょーに、その後ブロム軍帥に怒られた。頭には頭蓋にヒビが入ったのではないかと思える程の重い拳骨が轟き、一瞬目の前に大きな河が見えたのは幻覚だと思いたい。
どうやら俺らの勝手な行動をとったせいで、予定が20分程遅れたらしい。しかもそれにこの説教で1時間は延長されてしまうだろう。
一生終わらないと思った説教も、雲からお天道様が顔を出し始めたぐらいで終わった。煮干になった俺はぬかるんだ道をちょぼちょぼと歩み、馬車へ足を運んだ。
同じ馬車に乗った人たちは俺を少し小馬鹿にするような、またはからかうような感じに俺を優しく迎えてくれた。
────ヒロ、お疲れ様ー軍帥殿とのおしゃべり楽しかった?
────私まだ軍帥殿と話したことないのよねー、先手取られちゃったわ
我慢していた俺だったが、イライラしてしまい周りの人たちを突き飛ばしながら、馬車の隅でちょこんと座る。
その時、俺の頭をゴシゴシと撫で、笑いながら1人の齢60位の老人が俺の隣に座る。どうやら相当酒が入っているらしく、頬がザクロの花のように赤く、息が臭い。確か、夫婦で農家をやっていた人だったと思うが、どうにも名前が思い出せない。
「まあまあそんなに腐るなって……」
酒臭い声で俺の鼻腔を刺激する。年長者の意見として聞いた方がいいのかもしれないが、どうしてもイライラがそこに壁をしてしまう。俺は気晴らしに入口から外を眺めて気を紛らわすことにした。
それからも老人は俺になにか話しかけてきては、無感情な生返事だけを返して、外ばかり見ていたが、無意味な罪悪感にかられ、話を聞きた始めた時、その老人はイビキを上げながら寝ていた。
馬車は村を超え、右手には帝国森林を、左手にはカナル運河を眺めてひたすら西へ進んで行った。景色は全く変わらず楽しくもなない。俺はセアからの手紙を読もうと思ったが、何となく周りの目がきになったので、代わりに昨晩道場院から持ってきた小説を開いた。
勉強嫌いの俺だが、本だけはむしろ好んで読んでいた。とりあえず、カッコいいのが好きなのはもしかしたら、本の影響かもしれないと、思わなくもない今日この頃だか、本当に本は俺にとっては、知識と、感情の教科書だ。
特に俺が気に入っているジャンルは神話を題材にしたもので、グラン帝国創世記や、常識的にはあまり好まれていないが、他国の神話等も好んで読んでいる。
両方共持ってくる予定だったが、流石に他国の本を持って読むのは褒められたことではない。しかも、今俺たちの村を襲ってきている国の本など読んだら、裏切り者と謳われてジ・エンドだ。
ぞっとしない話を俺はページをめくり塗りつぶした。
この話はまだ人間が生まれるずっと昔の話。背中には猛禽類の如く歪な翼を広げ、空を制していた魔神リオスギガルと、命を司り、海の女神リオアナが恋に落ち、5人の子どもを産み落とす話から始まる。
そして長男から順に地神ソウラ、動物神オウル、太陽神メラ、月神ルーナ、そして属性神イグルガル。
自分たち神々の位を上げるために、ソウラはこの地を作り、メラが太陽、ルーナが月を作った。オウルはそこに動物を放ち、緑豊かな幸福の、象徴とでも言わんばかりの大陸ができる。これが後のグラン帝国だ。しかし、末っ子のイグルガルは兄姉のような強大な力を持っていなかった。そこでイグルガルは8種8匹の動物を兄のオウルから授かり、それを自分の命令に従う忠実な使い魔とした。
それが、獅子、鰐、鳥、鮫、蛇、亀、馬、狼。これらはそれぞれ権力のある人間に渡され、その主となったものは大いなる力を手に入れることが出来るという権利を与え、人間達に自分を信仰するように仕向けた。つまり、これが属性力とテイマーの起源となる話である。
最後は力をつけ過ぎた子どもたちにより、実の父であるリオスギガルは何重にもかかった呪いとともに、この世から魔神と共に封印されるが、もしその封印を解いてしまったら、それを引き金に魔獣は召喚され、リオスギガルも再びこの大地に君臨し、支配するだろう。と綴り、この本は幕を閉じる。
小さい頃はこの本を読んだ時は、リオスギガルがいつ封印から解かれるのはと怖くなり眠れなかったが、所詮これはタダのおとぎ話だ。今は素直にカッコイイと読むことが出来る。
どのくらい読んでいただろうか、真上にいた太陽の顔も、今は森林の木々に邪魔され拝めなくなっていた。老人は麦酒の瓶を抱きながら泥のように眠りに落ち、他の人達も皆船を漕いでいた。この馬車の荷台は筒抜けになっていて、先頭に行き軽く身を乗り出せば、騎手の人と話すことが可能になっている。本を読むのは一旦中断し、栞とともに本を閉じる。息を殺して騎手の方へ歩んだ。すると、雑談をしながら馬を操っていたが、直ぐに俺に気づいたようで、隣に座る様に手招き来てきた。別に断る理由もないので、高そうだったけど低い柵を越えて、鏡を眺めている人の隣に座るために足を運ぶ。
「俺らが働いている中みんなぐーすか寝てるのに、坊主は寝ねぇーんか?」
陽気な声で話しかけてきた兵士は馬を操っているというのに、顔ごとこちらに向け無精髭と疲れきった笑顔を向けてくる。
「まぁね、さっきまで本読んでたけど、何な寝るのは兵士の人達に失礼かなーって思って……」
本当は失礼なんてこれっぽっちも思ってなかった。寝ようと思ったが、馬車の振動で寝付けなかっただけだ。
「まぁ、この馬車揺れるからねぇー」
足が向かう方向から、手鏡で自分の顔を見ながらそう答える。あらゆる角度から自らの顔を観察し、その後満足そうに頷いてからそれをポケットにしまった。
「これで完璧、あらもう坊や可愛いじゃない。眠れないなら、お姉さんが寝ましょうか?」
「いや、お前男だろ」
「もう、そういうのは内緒にするのがあたしの主義なの!!」
笑えない会話を聞き流しながら、あえて無精髭の兵士の方へ方向転換して座った。
昼の時流した夏独特の肌から浮き出て来る汗が、夜風で体を冷してくる。無精髭の兵士が半袖半ズボンだった俺をチラリと眺めてから、手拭いと自分が羽織っていた薄手の外套を俺の肩にかける。
「夏の夜風は案外冷える。風邪ひく前に着ておけ」
「あらカッコイイ、あたし惚れ直しちゃったかもー」
耳障りなキャーと女性の様な悲鳴を野太い歓声が俺の鳥肌を撫でる。言われた張本人は大きくため息をついた後、おう、と適当に応えた。正直仲がいいとか悪いのか分からないこの二人を赤く染まった月とともに眺めていた。
いつの間にか閉じていた瞼を開けると、月明かりの代わりに燦々と輝く日光が網膜を刺激する。どうやら、いつの間にか寝てしまったようだ。大きな欠伸をしながら体を伸ばす。涙で歪む視界の端に、帝国森林の木々たちに負けじと背を伸ばしているレンガの塔がこちらに手を振っていた。
「あれが俺らが向かおうとしているの村の象徴で、旅人からすると目印。バロンの塔だ」
無精髭の兵士が、おはよう。と挨拶してから言葉を続ける。
「たしか、帝国創世記にも書かれていた気がするけど……」
眠そうな声音で、ボソボソと何かを言おうとしているが、何を言っているか全くわからない。
ちなみに帝国創世記に書かれていたのは、バロンの塔では無く、バンべの巨塔という、その長さは雲をも貫き、山よりも大きいと言われた巨塔だ。
創世記でリオスギガルを封印した後に、再び神々で大きな争いがあった。最高神消え、誰が最もその椅子に座るのが適しているかの。それは何百年にも及び、平らだった大地は窪み、山ができ、海ができた。そしてそこに君臨したのは、末っ子のイグルガルで、最高神の力を手に入れた彼は、それを行使し、元々はテイマーだけだった属性力を全ての人間に使えるようにした。それに感謝した人々は、神々が下界を見渡せるようにと、大きな塔を作った。しかし、「神を下界に引きずり下ろす」と勘違いし、激怒したイグルガルはその塔を神器の一振りで木っ端微塵に破壊してしまう。それで、人々は神と人間の位の差を示された。という話が、創世記の「バンべの巨塔」だった気がする。
思い出しているうちに、到着したらしく大きな門の前に5両もの馬車が大蛇のように並ぶ。5分ほどすると、ゆっくり地面を削りながら、大門が視界を広げる。そこには少し色は禿げているが、色とりどりの建物が立ち並んでいた。教会に、民家、兵舎などもある。
馬たちは重そうな足を動かし、大門を潜る。それを見守る兵士たちの目は何故か鋭く、また、少し狂気に染まっている。円形の噴水を囲むように、5両の馬車が並び止まった。
「長旅お疲れ様です。そこの兵舎で1泊していきますか?」
無精髭とオカマの兵士たちにボウガンを持った薄汚れた兵士が話しかける。2人は、「ああ」や、「ええ」と口を揃える。
────この人どこかで……
何故か脳裏に雨音とボウガンの矢が再生される。そして、焦ったように注意を促すマリーさん。その先にいた人はたしか……
「ノラさん……?」
俺は頭の片隅にあったその名前を口にする。そう。昨日マリーさんと話しをしていて、俺を敵と間違えボウガンを放った人物。
ノラは深くため息をついた後、俺にボウガンを向け、何も躊躇せずに引き金を引き矢を飛ばす。
「危ない!!」とオカマの兵士が手をかざし、それを体で防いでくれた。ノラは舌打ちをしたあと、腰から曲剣を取り出し、矢を防いだ彼の首を跳ねた。
首から血が一定のリズムで噴水のように噴き出す。返り血を頭から被った俺は何をすればいいのかわからず、ただ呆然とそこに立っていた。今ここにある全てが灰色に変わってしまったのではないかと思うほど、世界は色を失い、しかし、名も知らぬ兵士から噴き出した血だけは色鮮やかに朱色に染まっている。
次弾を装填しようとするノラの腕、その次首を無精髭の兵士が静かに斬り伏せた。否、本当は何か言ったのかも知れない。しかし、俺のいる世界は全ての色彩と音を失ってしまった。
「……ず!!……おい、坊主!!!!!」
上半身の全てを血に染めた無精髭の兵士が俺の方を必死に揺すり、俺の無感動の殻を強引にこじ開ける。
「う……うん……」
自分にも微かにしか聞こえない声で何とか返事をした俺は、硬い動作で頷く。身体中からする鉄のような臭いが俺の鼻腔を刺激する。その後、胃から込みたげてきた嘔吐物を我慢出来ず、馬車の外に流す。俺の背中を、擦りながら血にまみれた兵士は俺に語りかける。
「坊主、今からここにいる人たちを起こして、逃げろ。大丈夫だ、絶対にまた見つけて助けてやる」
そう言うと、俺を馬車の後方へ放り投げた。俺は自分の荷物を持ったあと、眠っていた人たちを乱暴に起こした。皆不機嫌な顔で俺を見るが、すぐに俺の姿を見て、顔を真っ青にして状況を聞いた。そして雪崩のように我先にと馬車から降りていく。ただ1人、酔い潰れている老人を除いて。
その人だけが、千鳥足でゆっくり馬車から降りる。後から兵士の声がする。
「坊主!!ここから20キロぐらい西にある山の山頂に、グラン兵用の兵舎がある。そこへ向かえ!!」
「わ、分かった!!」
「安心しろすぐに俺も……」
話している最中に、緑色の大蛇が彼の左腕を残して捕食した。遺されたそれは俺の方へ飛んできて、肩を掴む。
「見つけた……」
クククと笑いながら、緑色のポンチョを着た男の左腕が蛇に変わっていた。
「な、なんで……グラナが……!!」
右手に握る同じく緑色の曲剣を舐めながら、蛇のような目で俺を見据える。
そして、左手を俺の方へ向ける。
「リーヴ・シュターク・アイムアン・シュランガー」
詠唱に反応したのか、向けられた腕は蛇に変わり、俺を襲う。
────それはコマ送りのような光景だった。
左手が大蛇に変わったと思ったら、俺の目の前に大きな牙を剥き出しながら現れる。だが、それとほぼ同時に視界の端で蒼い物体が翳る。
「ヌン!!!!!」
ランスのような剣を振る老騎士。一太刀でその大蛇を切伏せ、俺を抱いて逃げる。
「大丈夫みたいだな……すまなかった」
俺は彼の肩に抱きつき、安心したせいか涙が溢れてしまい、嗚咽を漏らしながら、彼の名前を呼んだ。
「ブロムさん……」
「泣くな、男だろ……」
頷き、顔を上げると、兵士や村人、盗賊など色々な骸が転がっている。目の端にいたのは、先ほど千鳥足だった老人も足が引きちぎられ、ピクピク動いているが、もう助からないだろう。
すると、背中の方から地響きがし、向くと30メートルはありそうな4本腕の木製巨人が立っていた。前腕で大弓を構え、背中の腕でトマホークを握っている。そして、10メートル程の矢を力いっぱい引き、放つ。
辺り一面の建物は衝撃波で浮き飛び、その矛先は俺を目掛けて飛んで来る。短く舌打ちをしたブロムは俺を放り投げたあと、自らの掌を剣で掠め、その血を刃に塗る。
「起源再臨。憑依しろ蒼き邪龍『ヴォーティガン』!!!!!」
────起源再臨。聞いたことのない単語が地面を揺らす。
しかし、それは先日見た憑依化よりも断然迫力のあるものだった。まず身長が3メートル程になり、背中からは鱗の翼が生える。その後、鱗は全身へ侵食していき、目元程までに鱗が表れる。頭には2本の凛々しい角が生える。体の周りには8つの青い炎の渦が現れ、剣も7メートル位まで伸びる。そして空を飛び、強大な矢を迎え撃つ。
その2つがぶつかった時、2度目の衝撃波でもう村は跡形もなく消えていた。大声でブロムは聞いたことのない、腹を抉るような声で叫んだ。
「────逃げろ!!!!!」
ブロムは巨人の方へ左手をかざすと2つの青い渦が龍に変わり、かざされた方へ飛んでいく。
俺はひたすら西へ目指し、足を動かす。背中に背負う重い荷物で体力が限界になり、倒れても、ただ西へ……
俺が5キロほど歩くと、そこはもう村ではなく、山の入口に差し掛かった。木に隠れ、バックからゼティー村のときに配られたレーションを口に運ぶ。パサパサしていて、口の中の水分を全て奪うようなそれを食べ終わった後、少し寄り道のつもりで川を探した。やはり、避難するのに、川の位置を把握しておくのは大切だと思い、立ち上がる。
5分ほどで歩くと、すぐに川は見つかった。まず空になった水筒に水を入れ、その後川に口をつけ、喉を潤す。
「ぷはぁー、あー甘露甘露……あれ、こういうのって甘露であってるっけ?」
いつもの自分を装いながら、一休みしているうちに、汗と血で汚れた衣服と体を洗うために服を脱ぎ、体と下着以外の服を川の水で流す。ある程度汚れが落ちたので岩に服を干し、俺は軽い気持ちで川を泳いだ。下流なので、流れがそれほど無く案外楽しく泳いでいたせいか、俺は気づくことが出来なかった。もう1人、この川で体を流している人物がいることに。
いきなり顔を上から押され、沈められる。パニックに陥り、狂者の羽衣を出して無理やり起き上がり、構えるとそこには顔見知りな金髪の少女が胸と陰部を隠し、こちらを睨んで来る。
「な、な、な、なんでここにいるんですか!!ヒロ、こ、この変態!!!!!」
俺の頬を全力で引っぱたくその少女の名前を呼んだのは、下着を履いてその上から狂者の羽衣で体を隠したあとだった。
「ご、ごめんセア。まさかここに俺以外に人がいるなんて思わなくて……」
頭をゆっくり上げると、深くため息をしながらこちらに軽蔑と羞恥の視線と目が合った。
そしてもう1度ため息。
「別にここで体や衣服を洗っていたのはなんとも思っていません。私も実際やっていたし……」
語尾がごにょごにょと、小さくなったので説教は終わりだと思って胸をなでおろすと、「しかし!!」と言葉のイナズマが森に落ちる。
「しかし、私が怒っているのはそこではありません!!なんで、こんな緊急事態だというのに、川で泳いで遊んでいるのですか!!」
────最も過ぎる意見で反論出来ねぇ……
「い、いやあのこの緊急事態だからこそ、いつもの俺に戻って冷静に判断してこのような行動をとって……しまいました………」
もはやどっちが年上なのか分からないこの変な状況はこれから15分ほど続いた。
「それで提案なんだけどセア、俺たち一緒に山頂を目指さないか?」
セアはすぐに、「えぇ、分かりました。護衛は任せましたよ」と言ってくれたので、俺たちは行動を共に過ごすことにした。ふと、今の状況を思い出すと、オカマと無精髭の兵士の人たちのことを思い出していまいそうなので、俺はセアの前ではあの人達みたく、特に無精髭の人のように凛々しくいようと、この川に誓った。
それと同時に、狂者の羽衣を解除する。しかし、すっかりこの下が下着1枚のことを忘れていて、いきなりパンツ一丁になった俺に本日2度目のビンタが響く。
どうやら先ほどの誓いを川にしてしまったせいか、全てが水を水に流してしまったようだ。
最近高校三年生のはずなのに、中二病を再発してしまったので、それを全てこれに込めましたw
多分次の投稿は受験後になると思いますが、楽しみに待っていただければ幸いです。




