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謝罪と告白①





あれからの わたしは

とても疲れていたのだろうか・・・。


たった1缶のビールを飲み終えたところで

わたしはウトウトと ソファで寝入ってしまった。


その後、

なつみからのコールバックもなく

わたしは それが必然かのように

あの出来事を思い出すような 少し鮮明な夢をみた。


いや、夢なんか見ていなかったのかもしれない。


過去にあったことを

夢のように思い出しただけ・・・


ただ、それだけかもしれない。



・・・・・・。




中学生のころ

わたしには 大切な友人がいた。


とても気が合う仲間みたいな存在だったが・・・、

それは 相手が女性だということで

さらに特別な意味を持っていたような気がする。


しかし、それは あの日までのこと。


あの日は、

祐未子ちゃんに貸したビデオテープの返却後に

彼女から ただならぬ 押しのある会話を強いられていた。


『 わたし・・・マルくんと、パンクの話がしたかったな。 』 

『 お、おれ? パンクは、さ・・・あまりよくわかんないかな・・・。 』 

『 何なら好きなの? 』 

『 音楽は、映画が好きだから・・・やっぱ映画音楽かな・・・。 』 

『 どんなの? 』 

『 恥ずかしいから、いいよ。 言わない。 』 

『 教えてよ。 』 


わたしは、祐未子ちゃんとの会話に戸惑いを感じ

すこし考える時間が欲しいな、と感じ始めたとき、


『 ねぇ、マルいる? 』 

丁度よく 隣のクラスで友人の羽瀬川さんが

わたしのクラスに顔を出し、わたしを訪ねる声を上げた。


『 あ、いたいた。 ねぇ、時間ある? 』 


現在 ケンカをしていたはずの 彼女の、その言葉遣いの感触に

わたしは少し違和感を感じたのだが、

先日のケンカは絶交も覚悟のような激しいモノだったのではないかと、

少し反省と後悔をしていたので そんな違和感も すぐに吹き飛び、

彼女の次の言葉に期待をしてしまった。


『 ねぇ、謝りたいから・・・教室から出てきてよ。 』


その時の わたしの顔は、どんな表情だったのだろう。


そう言い終えた彼女は、わたしを見て

笑いを堪えるように すぐに俯いた。




放課後の理科室。


今日は どのクラスも使用しなかったのだろう、

室内は とても冷え切っていた。


しかし、

そんなことは お構いなしに、彼女は 教室の奥へと進んでいく。


わたしは 彼女の背を追うのを止め、教室の真ん中で立ち止まり

彼女に声をかけた。


『 おーい、どこまで行くんだよ。 』  

『 だって、誰にも聞かれたくないから。 ・・その、もっと奥に入りなさいよ。 』 

『 相変わらず、命令するねぇ。 』 

『 め・・命令って、なに? こんな要望も、ワガママとか命令になるの? 』 

『 いや・・・わるい。 そうナナメに取るなよ、ただの軽口だよ。 』 

『 そ、そうね・・・・ごめんなさい。 』 

『 いいよ。 』 

『 ごめんなさい。 』 

『 (?) ・・・いいって。 』 


彼女は わたしの場所まで引き戻ってくると、

わたしから目線を落とし 恥ずかしそうに 再び謝罪を口にした。


『 こないだは、ゴメン。 ごめんなさい。 』 

『 え? いや、オレの方こそ・・・その、ごめん。 』 

『 ・・・・。 』 

『 ・・・・・・。 』 

『 ・・・・そうだぞ。 』 

『 ん? 』 

『 あんなにムキにならなかったら、こんなことにならなかったのに・・・ 』 

 と、彼女は わたしを見上げながら 小さな抗議をはじめた。

そして、続けて

『 マルが悪い。 』  

そう呟くと、わたしの胸を軽く小突いた。


『 ・・・・ほ、ホント・・・その通りだよ。 ごめん、オレが悪かったよ。 』 

『 でも、もういいよ。  その・・・チョコ、あげるの・・・

 やっぱ やめたんだ・・・。 』 

『 え? どうして? 』 

『 もういいの。 マルとケンカまでして、渡すことなのかなって・・・

ずっと考えてて・・・・・、あの人に渡すんじゃなく、その、さ・・・。 』 

『 羽瀬川・・・。 』 

『 あ・・・あんたにあげる。 チョコあげる。 う、受け取ってよ。 』 


そう言うと、

彼女は ポケットからカセットテープくらいのサイズの包みを取り出し

わたしに差し出した。


バレンタインデーから二日後ではあったが・・・

しかし、そんなことは関係ないくらい

( おお!!! )

わたしは、感嘆の声を漏らしそうになった。



『 ありがとう、嬉しいよ。 去年も そうだけど・・・ほんと、ありがと。 』

『 あのね。 それ、・・・・ちがうの。 』 

『 ? 』 

『 ねぇ・・・。 わたし・・・なんか、おかしいの。 』 

『 おい、大丈夫か? ・・・その、教室に戻ろうか? 』

『 ちがうの・・・。 ちがうの・・・。 』 

『 (何が違うんだ?) とりあえず・・・座ろうぜ、なっ? 』  


わたしは、落ち着かせようと 近くの椅子を引き寄せ 彼女を座らせた。

そして その後、彼女は震えるように口を閉ざしてしまった。

なんだか、彼女の感情が高ぶっているのはわかったが

それが何なのか?

わたしは、すぐには把握できなかった。


わたしは所在なく立ち尽くし、かける言葉を考えていると

手渡されたチョコの包みから

カードのような紙片が挟まっているのに気が付いた。


わたしは、ゆっくりと そのカードを引き抜くと同時に

絶句した。


( えええええええっ!!!!!! )


そのカードには、彼女の愛が・・・


わたしへの愛が 記されていた。



【 マルのことが 好きです 大好きです 付き合ってください 】







~つづく

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