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石が流れて木の葉が沈む





友人から恋人へ。


素晴らしい日々の始まりの予感。


今の時代だと、

中学生・高校生など未成年であることは

メリットでしかない。


少し羨ましく思えるところがある。


それはある種 偏った考えかもしれないが、

わたしたちが その後

経験することになる未来は・・・・


あの時代だったから・・・か、


そう悲惨極まりないモノだった。




【 不純異性交友 】


こんな言葉、今の若者たちは知らないだろう。


まぁ、大人がプラトニック、健全だと認めないモノは

すべてこの、 【不純異性交友】 に当てはめられることになり

双方の感情など一切関わらず、すべてが悪だと決めつけられてしまう。


手をつないで歩く。 見えないところでは、ギリギリOK。

キスをする。 言語道断。

性交渉など・・・もう、不良どころの騒ぎじゃない。

犯罪者のような目でみられる。


少し誇張があるかもしれないが、だいたい合っている。


それくらい、未成年の恋愛には不寛容な世の中、

未成年にとって、とりわけ中学生にとっては そんな社会に思えた。



わたしたちは 恋人同士になった次の日、

登校中ではあったが ある約束を交わした。


それは過度な接触は避け、放課後のみ・・・その、イチャイチャする

と、バカみたいな決め事を誓い、あくまでも周りを刺激しないような

学園生活を送ろうと決めていた。


しかし・・・・。


わたしたちは 学校に着くと同時に

各々のクラスの担任に呼び出され、

1限目そして2限目の授業を受けることなく、

親を呼び出され・・・

そして、その日は授業を受けることなく

家に帰された。


問題になったのは、そう 【不純異性交友】 だ。

昨日の理科室の秘め事を誰かに見られ、

その密告を受け・・・罰せられている。

最初は そう思っていた。


しかし、

時間が経つにつれ・・・先生が それ以外の

隠し玉を持っていることに気が付いた。


バレンタインのチョコ、告白、キス。


それが、あの時のすべてだと思っていたが・・・・

そこに どうも・・・せっくす、

せ・・性交渉が加わっている気がした。


なぜ? なぜ、そうなる?


相手は わたしたちを裁きたい、

しかし・・・

わたしたちが認める以外の自白を

強要しているようにみえた。


わたしは 親も呼ばれ・・・

彼女の痛々しい横顔を見て・・・

なにか・・・糸が切れてしまった。


『 先生たちは、ぼくたちを罰したいんでしょ!? 』 

『 いや、事実関係を確認して粛々と・・・ 』 

『 いい加減にしてよ! は、羽瀬川の顔をみろよ!

 昨日は かわいい・・・いや、僕には もったいないくらい

 美しい顔をしていたのに・・・どうして、こうなる? 』 

『 だから、君たちがまだ隠していることがあるんじゃ・・・ 』 

『 僕たちが 他に何をしたって言うんです!?

せ、セックスでもしたって言いたいんですか!!!! 』 

『 ぅ~ん。 』 

『 誰に聞いたのか知らないけど・・・そんなの、あるわけない!!! 』 

『 ぅ~~ん。 』

『 ふざけるな!!! 仮に、ヤッたら何だよ!? 文句あるのかよ!? 』  

『 少し落ち着き給え。 』 


子供に喧嘩を吹っ掛け、どこまで我慢ができるか試している。

怒りだすと、自制を求め 論点をずらし説教を続ける。

絶対に自分の非を認めない。 

自分で決めた結末に沿うように 事を運ぶだけ。


ほんと、わたしは 学校の先生が嫌いだ。



『 ねぇ・・・マル。 』 

『 ? 』 

『 ごめんなさい、しよう。 』 

『 は? 』 

『 ねぇ、もう謝ろうよ。 』 

『 ど、どうして?

 お、オレたちは何も悪いことしていない。 』 

『 いいの。 もう、いいの。 謝ろうよ。 』 

『 ・・・・・。 』 

『 先生、ごめんなさい。 』 

『 お、おい。 』 


わたしは、もう何が何だか わからなくなってしまい

混乱してしまった。


『 マル。 ありがと、守ってくれて。 』 

『 な、何も守れてねぇよ。 』 

『 先生。 もう、マルとは一緒にいません。 』  

『 ぉ、おい!!! 』 

『 心配させてごめんなさい。 』 


わたしは 彼女の言葉に混乱を極め

もう何も言う言葉が出てこなかった。


【 もう、マルとは一緒にいません 】


その言葉は 重く響き、

その後 どうやって話が終わったのか

憶えていない。



しかし、


その夜、彼女から電話があった。

普通だったら 今日のことで

親から取り次いでもらえないところだが、

謝罪がしたいとの申し入れだったので

わたしは受話器を持つことができた。


『 マル。 』 

『 羽瀬川・・・。 』  

『 マル、聞いて。 』  

『 ・・・・・。 』 

『 マル。 学校での話は、嘘よ。 』 

『 う・・・。 』 

『 しー。 声に出さないで! 

ああでも言わないと、全然終わりが見えないんだもん。 』 

『 お、おまえ・・・。 』 

『 あ、彼女になったからって、いきなりオマエ呼ばわり、

わたし そういうの嫌いだなぁ。 』 

『 な・・・なんでそんなに余裕あるんだよ。 』 

『 ・・・・・余裕なんかないよ。 先が見えなくて、怖いよ。

マルに会いたいよ。 』 


そう言うと、彼女のすすり泣く声が聞こえてきた。


( 恋人一日目、ほんと・・・なんて日なんだろう )


でも、まだ今日は終わっていない。


苦笑いでもいいから、彼女を笑顔にしたい。


わたしの彼女。


羽瀬川・・・


『 ・・・・・かりん。 』 

『 ぇ!!!! 』 

『 かりん。 そう呼んでも、いいよね。 』 

『 ぅ、ぅ・・・。 うん!!! 』 

『 自分から言っておいて、やっぱ なんか恥ずかしいな。 』 

『 もうダメ! もう苗字で呼ぶのは禁止、罰金だから。 』 

『 小遣いが すぐ無くなりそうだな・・・。 』

と、わたしは 照れ隠しの愚痴を呟いたが、

正直 そんなことはどうでもよく

彼女が受け入れてくれたことに 安堵した。


『 ねぇ、その・・・お小遣いなんだけど・・・ 』 

『 ん? 』 

『 ねぇ、ノートを買おう。 かわいいヤツ・・・ 』 

『 か、かわいいやつ?・・・なんか、ヤな予感が 』 

『 交換日記しようよ。 』 

『 ちょっと、 』 

『 もう決定したことよ! 明日、200円くらい持ってきて。 』 

『 もう、なんだよ。 』 


交換日記なんて、女の子っぽくて 恥ずかしいし、

だいたい、何を書けばいいんだ?


『 交換日記は・・・ちょっと、さ。 』 


『 石が流れて木の葉が沈む 』 

『 え? 』 

『 わたしたちの葉っぱ、まだ沈んでない。 』 

『 ちょっと、わかんないんだけど・・・。 』 

『 オー・ヘンリーみたいなヤツよ。 』 

『 ごめん、 』 

『 ま、まったく無知ね! いいけど、さ! ふふふ。 』 


わたしは 無知でも何でもよかった。


とても小さな笑いではあったが、

彼女が 笑ってくれるのなら

この未来の不安も 少しは打ち消すことができると、

信じられそうだった。






~つづく

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