謝罪と告白③
わたしは、初めて女の子に叩かれた。
いや、そんなことが言いたいのではない。
こんなにも気持ちをぶつけてくる
彼女の気持ち、人格に・・・・・
わたしは 初めて、ハッとしたのだ。
『 羽瀬川・・・・。 』
『 あ・・・ぁ、わわわ・・・わたし・・・・。 』
『 ・・・・・。 』
掛ける言葉が見つからない。
引っぱたかれたことを怒る気持ちなど、もちろんない。
でも、
なんて言葉を掛けたら・・・正解なのだろう。
『 ご、ごめんなさい。 ごめんなさい。 』
『 羽瀬川・・・。 』
『 ・・・・わたし、もうどうしたらいいのか・・。 』
『 今日・・・・。 』
『 ? 』
『 きょう、なんかいっぱい話せたなぁ。 』
なんでこんな言葉が出たのだろう。
『 ぇ? 』
『 今日、なんか考えることがいっぱいありすぎて・・・
オレ、ちょっと困ってる。 羽瀬川も、だろ? 』
『 わたしは・・・。 』
『 正直、羽瀬川に引っぱたかれて・・・なんか、ビリっときたよ。
なんか、・・・・・キスしたくなった。 』
( キス・・・今思うと 我ながら、なにを言っているんだ? )
『 !!!!! 』
『 ああぁ、違うよ。 叩かれるのが好きとかじゃなく・・・。
正確に言うと、 羽瀬川の本気度にクラっときたというか・・・
うまく表現できないんだけど・・・わかるだろ? 』
『 くぅ・・・わかんないよ。 』
『 そ、そっか・・・だよな。 わかんないよなぁ・・・。 』
【 カタン。 】
その時、廊下側から何か音が聞こえた。
( 誰か いたのか? )
わたしは 確かめるように
ゆっくり廊下側を振り向こうとした。
でも、
湿度を帯びた柔らかい手が それを遮り・・・
私の赤い頬に やさしく添えられた。
そして、
それは 突然のことだった。
彼女の唇が わたしに重なり・・・
すべてが たった一瞬で
解決されたように思えた。
廊下側から 少し雑音が漏れ聞こえてきた感触があるのだが
正直、そんなことは どうでもよく
わたしは大胆にも自ら 彼女を抱きしめた。
恥ずかしがるような 強弱のある抱擁を
互いに繰り返し、いつしか それは段々と熱を帯びていった。
『 ねぇ、これでいいんだよね? 』
『 わ、わかんないよ。 』
『 なんか、頼りないね。 ふふふ。 』
『 羽瀬川・・・・。 』
『 なに? 』
『 やっぱ、何でもない。 』
『 そう・・・? 』
『 ・・・・・。 』
『 ・・・ねぇ、マル。 』
『 なに? 』
『 今日のことは、誰にも言えないね。 』
『 そうだね。 でも・・・・。 』
『 でも、なに? 』
『 なんか、絶対に忘れそうもないよ。 』
わたしは そう言いながら
今更ながら照れたように笑った。
彼女は わたしとは対照的に
とても真剣な顔つきに変わり・・・
『 マル・・・・好きだよ。 大好きだよ。 』
そう言うと、
彼女は恥ずかしそうに 唇を重ねてきた。
でも、
彼女のキスは、とても力強く
好きだという気持ちに満ち溢れていた。
わたしは 友人から恋人に変わっていく
奇妙な感覚に実感が持てず
夢なら醒めないで欲しいと、強く念じながら
彼女の唇に 自ら重ね合わせていった。
~つづく