虚構②
本日も遅い投稿になり申し訳ありません。しばらく忙しい日が続きそうですので更新時間にばらつきが生じると思います。
冬の寒さにも多少慣れてきた頃。しかしこの日は異常に寒い日であった。
それは突然決まったことだったか。今夜は鍋を食べることになっていた。もっとも、基本的に料理番の少年としても比較的作るのが簡単な鍋に対して悪印象があるわけではなかった。
「おかえり。兄さん少し遅くなるって」
「そうか、サンキュー。まあ、下準備でもしておくよ」
下校時、食材を購入し家に帰ると妹が迎えてくれた。妹は兄のことを兄さん、少年のことを兄貴と呼んでいる、おそらく妹の中では兄と少年の間に明確な線引きがあるのだろう。事実、妹は昔から兄にくっついていたが少年に対しては素っ気ない態度であることがほとんどだった。
***
「ただいま。ごめん遅くなった」
「おかえり、兄さん」
少年の帰宅から数時間後。辺りはすっかり暗くなっていた。兄の帰宅を迎える妹は少し待ちくたびれたのか素っ気ないものだった。
「おかえり、兄貴。あと具材煮込むだけだからもう少し待ってて」
「おーう」
少年宅では鍋は3人揃う時のみの限定メニューだった。鍋を食べる時はゆっくりと話をしながら団欒の時間を過ごせるためである。
この日も同じ。家族3人で確かに鍋を食べていた。
ある冬の異常に寒いこの日。
この時、兄はた……に…………た。
走ったのはノイズであった。薄く、暗く、セピア色に染まる光景。深く、探ろうとすればするほどあたりは暗く閉じていく。
そういえば。ようやく気づく。どうして今までこんな景色を見ることができていたのだろうか、と。これは確かに少年の記憶であった。しかし、少年の記憶にはたしかに少年がいた。自分が見ていたものが記憶となるはずなのに……?
おそらく、鮮明に残った記憶ではないからだろう。欠落した記憶を脳が補完したためにこんな奇妙な事象が発生したのだろう。
セピア色に染まった写真のような風景に嫌気がさして、少年は眼を閉じた。