一本目 お荷物承りました(3)
--3--
「あーあ、どうしてこんなん、なっちゃったんッスか」
トレーラーの中から、降りてきた男性がセブンスターを見るなり嘆いた。
「うぁぁ、こりゃベッコベコじゃあないッスか……
タイチョー、また無茶な操縦したんでしょ?
シガレットの嬢ちゃん、怒りますよ。
また、修理費が かさむって……」
「うっせーな。いいから、さっさと積み込めよマッチ」
マッチと呼ばれたつなぎ服姿の青年は、へーいと気のない返事をしながら、作業に取り掛かった。
ツンツン頭にヘッドホン。これまた金髪のヤンキー。
ナナホシさんと違うのは、いかついと言うより、遊び人風の容姿なところだ。
「……えっと、あ、あの、隊長って?」
「あー…昔の名残でな。
うちじゃあ、こう呼ばれてる。
あいつは、メカニックのマッチだ」
ナナホシさんに紹介されて、遊び人ヤンキーが、親指を立てながら挨拶をした。
「『マッチ・ボウ』ッス。
よろしく坊ちゃん」
マッチさんの紹介を終えると、ナナホシさんは面倒臭そうにトレーラーの運転席に乗り込み、帰る支度を始めた。
マッチさんも、慣れた様子で手早くセブンスターをトレーラーの荷台に上げる。
僕は完全に置いてけぼり状態だ。
「おい。ボウズ。
早く乗れよ。夜の森は冷えるぞ」
ブロロロ……と始動音が響き、トレーラーのライトがついた。
「ちょ、ちょっと、ナナホシさん。
どこいくんですか」
「どこって、お前、この状態で俺のセッターが動くと思ってるのか?」
「そりゃ、思ってないですけど……」
ナナホシさんがサイドミラーを直しながら、僕に話しかける。
「荷物だって、時間指定じゃねぇんだろ?」
「あっ、えっ、はい?」
ミラーが直ると、ナナホシさんはシートベルトを締めながら、さらに話しかける。
「それに、ここに居たら、追手に見つかんだろうが」
「それは……そうですが……」
僕は上を見上げながら会話をする。
トレーラーの運転席は高い。上の方からさらに声が降り注ぐ。
いつの間にか、マッチさんも車内に乗り込んでいた。
「それじゃあ、やるこたぁ、ひとつ。
これで決まりだろうが」
ナナホシさんは、一人で勝手に納得して、早く乗れと言わんばかりに指で合図した。
……ほんとに、この人は人の話を聞いているのだろうか?
「いや、答えになってないですよ。
だから、どこに行くんですか?」
「――うちに帰ぇるんだよ……
いいから乗れ」