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不良人日記  作者: ローグ
5/7

4話

少しずつ一話分が長くなってきています。

短く区切る事って難しいですね。


俺の廉涯での生活は、二日目で喧嘩尽くしになったが、あの日以降特に騒動も起きずに、平和にダラダラと過ごしている。

一週間ぐらい経っただろうか。


「そういえば、チヒロ。初めて会ったときに追おうとしていたのは誰だよ?」

藤岡明雄ふじおかあきおって奴だ。自称情報屋だとよ」

いい加減チヒロというあだ名に慣れた右京。

特に何の反応もしなくなったので、俺達は普通にチヒロと呼んでいる。

「何でチヒロから逃げたんだよー?」

今度はタツも話に加わった。

(まぁ、その藤岡って奴のせいで俺達は喧嘩したんだようなもんだ。

興味はあるよな。

まぁ、逃げた先に俺達がいただけだが)

「『情報屋って言うからには、俺のことは知ってんだろうな?』って聞いたら、藤岡の奴、知らないと言ってよぉ、そんで怒って詰め寄ったら逃げやがった」

「………」

「チヒロ沸点低すぎ。ただお前が無名なだけじゃん」タツは会話を放棄してしまったが、俺は続けた。

仲間の悪い考え方は修正しておくに限る。

「まぁな、でもよう、和麻に負けた時に、自分が井の中の蛙だって気が付いたから、もうあんな真似はしねぇよ」

「そうか」

(まぐれ勝ちが二人ともをいい方向に導いてくれたな)


ちなみに、俺達はまだ溜まり場を作っていないので、教室で椅子に座りながら過ごしている。

俺とタツを襲った連中は、すでに溜まり場を作ったのか、教室にいない。

チヒロとその手下(武田、内山、斉藤って名前の三人)が仲間になったので、全員で六人となり、数は三倍になった。

(そろそろ、溜まり場作るか)


「っし、まずは情報屋探しだ!」

「ワット? どうした、和麻?」

「溜まり場持つためには奪うか、作るかあるだろう。どちらにしても、廉涯に詳しい奴が必要になる」

「おい、まさか藤岡の奴を使うのか? 俺がいたら逃げちまうだろうよ 」

「探すのダルいから、適当に奪えばいいじゃんよー」「いや、いるだろ情報屋」「パパッと奪えばいいよなー、チヒロ」

「ああ、タツの言う通りだぜ。和麻、今から一つ奪いに行くぞ」

「え、ちょ、マジかよ……」


こうして、情報屋の件は保留になり、何故か、溜まり場強奪だけが実行になった。

(早くも、敗北の予感がするんだがなぁ……)




俺達は、一階の一年の教室とは反対側の端まで歩いてきた。

「んで、どこ奪うー?」

「んなもん、人数が少なそうな所をぶっ潰せば終わりじゃねぇか」

「おいおい、そんな簡単にはいかないって」

楽観的な二人を嗜める。

俺が止めないと、とんでもない奴らに喧嘩を売るはめになるだろう。


「あ、この空き教室とか、ベターじゃね?」

「落書きも少ないねぇな、教室だから広さも十分だ。和麻、ここ奪おうぜ」

(あ、勝手に進められても最終的な決定権は俺にあるのか)

「ちょっと入ってみて、人が少なかったら即急襲。多かったら、『間違えました』って逃げるぞ」

臨機応変な対応を心掛けて、少しでも危険を減らしておく方がいい。

「オーケー」

「問題ねぇ」

そして、俺達は、一気に教室に入った。


「あん?」

「誰だよ」

二人しかいなかった。

(チャンスだ! 今のうちに攻撃するぞ)

そう思ったが、

「だらっしゃー!」

「わりぃな!」

すでに、タツとチヒロが潰していた。

タツは竹刀。

チヒロは、ボディブロー。

それぞれ、一撃で倒した。「……お前ら、誰のテリトリーに手を出したかわかってんのか……」

「……お前ら、終わったぜ、ハハハ……」

床に伏して意味深に呻く二人を、隅に退かして教室を見渡す。

「いい所が手に入ったな」「空調がついてるのはグッドだ」

「元から椅子や机があるから、まぁ楽だな」

(簡単に済んだな。この調子なら、何個か、溜まり場を奪えそうだ。今後、人数が増えたら分ける必要があるしな。

しかし、上級生だよな、倒したの)

そんな風に、楽観的に計画を練っていた時、


「……誰だい、君たち」


なんか、来た。

滅茶苦茶でかいのが来た。

二メートル以上のがっしりとした体の大男だ。

短く切りそろえた髪に、彫りの深い顔。

若い頃の某ターミネーターさんを巨大化したみたいだ。

威圧感が半端じゃない。

熊と対面しているみたいな感じだ。


「おう、ビックガイ、お前こそ誰だよ」

「わりぃが、ここは俺達の溜まり場になったんだ。他の奴らは出てけ」

(早速、二人が臨戦体勢になったよ、おい)


「……いい目だ。……だが、ここは聡さんのテリトリーだ。……大人しく出ていくのは、君たちだ」

(聡さん? ああ!? ヤバい、刈谷総一かよ! 絶対敵にしたらいけない奴じゃん!)


「ハハハ、アメリカンジョークかい? もしくは頭大丈夫?」

「おい、舐めてんじゃねぇよ」

俺の内心の焦りとは裏腹に、事態は一触即発の雰囲気になっていく。


「タツ、チヒロ、ちょっと黙ってろ。

なぁ先輩さんよ、俺等六人だ。それに、結構強い。一年生だからって舐めていると痛い目にあう。ここは譲ってもらえないか?」

ひとまず、交渉をしてみる。

大男の目がこちらに向く。それだけで、一歩後退ってしまう。

「……君がリーダーか。……何人だろうと、何年生だろうと、聡さんのテリトリーを奪うの奴は、倒す。……引いてくれないか。……君たちは、いい目をしている。……できれば暴力なしで解決したい」

(廉涯の中では珍しいくらいに平和好きな人だな。まぁ、互いに譲れないからどうしてもぶつかるよな)

「残念だ。喧嘩で決めるしかないみたいだな」

俺がそう言うと、

「おい、ぶっ飛ばせ」

チヒロが手下三人に指示を出した。

三人は頷くと、大男に殴りかかった。


「……そうか」

その時の彼の目は少し悲しげだった。


「……はぁっ!」

一瞬だった。

横凪ぎに振るわれた極太の腕が三人を机ごと吹き飛ばす。

三人は地面に叩きつけられて、呻いている。

「は?」

思わず、惚けた声が出てしまった。

(三人が一撃? なんという馬鹿力だよ。人間か、こいつ?)


「和麻! 来るぞ!」

俺はチヒロの声に反応し、何も考えずただ右に跳んだ。

顔の左側を、風が起こる音と共に何かが通り過ぎる。「……避けたか」

それは、大男の腕だった。

冷や汗がドッと出てくる。反射的に跳ばなければ、当たっていた。

(ヤバい、ヤバい、ヤバい! 強すぎだろ!)

俺がそう思っている時も、攻撃はきた。

後ろを向き転がる。

大男の拳は、近くにあった机を破砕してしまった。

木の板を粉砕し、金属のフレームが曲がる。

(三人凪ぎ払う時より威力が増してるよな!? なんだよ、リーダーだから手加減なしかよ!)

「せぇいっ!」

タツが首筋に思い切り竹刀を叩きつけた。

しかし、

「……なかなかだが、俺を倒すには木刀ぐらい持ってくるんだな」

全く効いていなかった。

それどころか、竹刀をタツから奪い、片手で折ってしまった。

「シット!」

武器を失ったタツが下がり、チヒロが突撃した。


チヒロは大男が動く暇も与えず、体当たりを決めた。鈍い音と共に、大男が一瞬揺らいだかに見えた。

「寝とけぇ!」

チヒロが大男の顔面に、体重を乗せた右ストレートを打ち込む。


「……甘いな!」

大男はそれを右手で止め、左手でチヒロの腹を殴った。

「ぐぁっ!」

大男のパンチは見事にチヒロの腹に入り、チヒロのがっしりとした体を吹き飛ばす。

(俺の蹴りよりよっぽど強い!)

チヒロはそのまま教室の戸にぶつかり、轟音と共に戸を吹き飛ばしながら廊下に転がった。


「ファッキン、ビックガイ!」

叫びながらタツが椅子を振り回し、大男の膝を何度も強打する。

(今なら、隙を突ける!)

俺は走りだした。

「終わりだ、デカブツがぁ!」

勢いをそのままに、椅子、机へと駆け上がり、ジャンプして叫ぶ。


「うおぉぉぉ!!」


タツに気を取られていた大男の側頭部に、俺の全力の膝蹴りが突き刺さった。


俺はバランスを崩しながらも、床に着地した。

大男はフラフラした後、真後ろにぶっ倒れた。


「っしゃあ! 勝ったぞ!」

(よし、これでひとまずこの溜まり場を奪えたぞ。新しい溜まり場を作るまでここで過ごすか)


「ヘイヘーイ、床とのキスがそんなに好きかー?」

タツがふざけたことを言いながら、倒れた大男に近づく。



「……まだ終わっていない」



「へ?」

大男は起き上がると同時に、呆然としているタツにタックルを食らわした。

「あがっ!」

タツが机の積んである所にぶつかった。

タツは、机を吹き飛ばし、体がそこに埋まってしまった。

首がガクリと下がったので、多分気絶したのだろう。


大男がこちらを向く。

(うわ、みんなやられたよ。俺一人とか無茶だろ)

大男が歩いてくる。

俺は覚悟を決めた。

「はぁぁ!」

近くにあった机の足を掴み、回転して遠心力を付けた机を大男の顔面に叩きつけた。

はずだった。


しかし、当たる前に大男がパンチで机を粉砕してしまった。

(ちっ、机以上に固いものはない。特攻するか?)

「……まだ、諦めないか」大男は不思議そうに問う。

確かに今の状況では、万に一つも勝ち目がない。

しかし、逃げるのは、戦って倒れた仲間に申し訳ない。

「友達の前で逃げれるかよ」

「……フッ、良い奴だ。ますます、倒すのが惜しい」初めて、大男が笑った。

(なんか、笑っても戦士の笑みって感じだ。優しげだけど)

しかし、拳はしっかりと握られていた。


俺は走りだす。

そして、大男のパンチが来た。

体を捻って避ける。

そのまま奴の懐に入り、殴りまくる。

「おら、おら、おらぁ!」

鈍い音が響く。

奴は倒れなかった。

そして、

「……いいパンチだ」

両肩を掴まれた。

そのまま投げ飛ばされ、俺は中を舞う。

「があぁぁ!?」

廊下側の窓ガラスを突き破った。

轟音が廊下に響く。

まともに受け身をとることもできずに、廊下に転がった。

(あー、痛ぇ。負けたな)


ジャリジャリとガラスを踏み付けながら、大男がやってきた。

俺は立ち上がろうとするが、指を動かすのが精一杯で床に倒れたままだ。

廊下に叩きつけられた俺には、もう起き上がる力さえは残っていなかったのだ。


「……一年生、君の名前は?」

攻撃もせず、ただ立って喋りかけてくる。

「坂倉和麻だ。あんたは?」

「……西条権太さいじょうごんた、三年だ」

「そっか、三年かよ」

(西条権太、強敵だな)

「……そうだ。……だから先輩として、一つ忠告がある。……敵を知れ、そして仲間を把握しろ」

「わかったよ……」

(ああ、もうダメだ。意識が……)




「‐‐‐---な奴だ。聡さんに‐‐‐‐」




最後に西条が何かを言っていたが、俺には聞こえなかった。


タツがどんどんチャラチャラした奴になってきているような……。


今回は彼らに廉涯の過酷さを知ってもらうために、一対六なのに惨敗という結果にしました。

まぁ、相手がチート過ぎですが。



そしてこれは作者の方針ですが、全てが上手くいくように物語を書くつもりはないので、その辺はご理解ください。

でも、ハッピーエンドにはするつもりです。

個人的にバットエンドは嫌なので。

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