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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
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ゆうしゃのしれん

掲載日:2026/07/07

救いのない話です。

 中世以前の世界観で中高生が実際召喚されたら、どうなるか?かなりキツメの内容になっています。3K(キツイ・危険・汚い)作品であり、夢見ている人にはオススメしません。魔族と人類は互いを根絶対象と見ています。相容れることはありません。

 ある日、男の子が高校から下校しようとしたときソレは起きた。突如として光に包まれ、気がつけば薄暗く、煙く、とても臭い、石畳と石壁に囲まれた部屋にいた。周囲にはアニメやマンガで見たような騎士とローブ姿の大人たちがいて、後ろには2人の同じ学校の制服を着た女子がいた。

 「ゴホッ、ゴッゴホッ」あまりの煙さに咳が出る。松明の煤、不純物の多い蝋燭の獣脂の匂い、周りの大人たちから漂う汗と香料の匂いに目眩を覚える。2人の女子も同じ様子である。

 豪奢なローブの男が合図すると水晶球を持ったローブの男が前に進み出る。水晶球を覗いた男は「間違いありませぬ、勇者様、聖女様、賢者様でございます。」と口にすると、周りの人間達は「おおっ!!」とざわめいた。

 豪奢なローブの男は「御三方をこちらへ。」と言うと先に立って歩き出した。周りの大人たちに丁寧に、だが急き立てるように3人は歩かされた。

 通された部屋には大きなテーブルがあり、豪奢なローブの男が上座に座り、ソコソコ飾られた衣装を纏った男達がテーブルの左右に着座する。召喚された3人は下座に座らされ周りを屈強な騎士達が囲んでいた。これは3人が何かしたら直ぐに取り押さえる事が出来るような配置である。部屋自体はやや上方にある小さな明かり取りの窓から指す光のみであり石壁の圧迫感が大きかった。

 男の子は最初「コレって異世界召喚!!スゲーッ!!」等と心中ではしゃいでいたが、アニメやマンガのお城のように綺羅びやかで広い広間を想像していたのに、狭い上に暗がりばかりで気持ちが段々萎えてきた。暗く狭いのも当たり前である。ここは戦場にもなる城の中、召喚された3人の知っている宮殿(広間)は、平和な時代にガラスが普及して、金銀細工が落ち着いて出来るようになってからのモノなのだから。

 皆が着座すると上手の豪奢な男の隣にいる男が発言する。

 「それでは、この度、御三方を召喚した次第について御説明させて頂きます。」

 そこからはテンプレとも言うべき説明がなされた。曰く、魔王の出現、魔族・魔獣の跳梁跋扈、人類側の被害、神託?、男の子は勇者、女の子達は聖女と賢者、魔王を斃さねば帰還出来ない?等である。当然、3人は難色を示したが、通るはずもなく(人生経験も少なく、頼れる者も居ないため交渉は難しい)なし崩し的に戦闘訓練を受ける事になった。

 取り敢えずは初日と言う事もあり、食事をする事になった。金属製の器に様々な料理が盛られており、「こちら、贅を凝らした晩餐です。」と料理を切り分けられ、目の前に置かれる。確かに鮮やかで美味しそうでナイフとフォークを使い口の中に放り込んで咀嚼する。が、「辛っ!」「塩っぱ!!」と異口同音に口をついて出た。この世界で贅を凝らすと言うのは如何に大量の高価な香辛料や塩を使うかであり、味は二の次だったのである。

 あまりの味に飲み物を口に入れるが「ワインじゃないか!?」と吐き出しかける。だがそうもいかず何とか飲み込むと、聖女が「水を頂戴」と言うと、給仕は困った顔をした後「お腹を壊しますよ。」と言った。殆どの水は飲めない硬水であり、蒸留して確保するしかなく燃料代等を鑑みれば割に合わない。(現実でも似たような物、海外では飲める水は高額、気軽に何処でも飲める水道水や井戸があるのは日本ぐらいのもの。)

 料理を残すのは失礼とのことで、3人は、げんなりしつつも何とか食べきった。少し談笑していると、賢者は「お花摘みに」と言って席を外したが、直ぐに青い顔をして戻って来た。勇者と聖女は首を傾げたがその理由は直ぐに判明する。

 トイレに行くと其処には穴が空いているだけであり、覗くと下に桶が見える。そう、所謂、ポットン便所だ。桶は溜まると下男が交換すると言うモノであり、更には、ちり紙の様なものは無い。紙は高価で使い捨てにする様なものではなく、代わりに布切れを巻いた棒が何本か置いてあった。コレで拭けということらしい。綺麗なもの(洗い、使い回した布)と使用済みな物があり、そこからは異臭が漂っていた。

 3人共、この様な形式のトイレは経験がなく、最初は我慢していたが、何時までも排便しないという訳にはいかず、涙目で用を足した。(実はトイレは切実で災害時には結構苦労する問題である。また、野外でする場合でも後処理をしっかりしないといけない。)

 この時点で3人共疲れ切っており、部屋で休む事になった。それぞれ個室が与えられており、ベッドに横になろうとすると、とても硬かった。シーツを捲って見ると何枚か重ねた布があるだけで、その下には木の板が敷き詰められているだけであった。また、枕は丸太を削って形を整えた物に布を巻いてある。この世界では、魔王軍との戦争でいっぱいいっぱいで、綿めんで出来た布はあるが、綿わたを詰めて布団を作るまでには至っていない。

 3人は現実に打ちのめされ、また寂しさから、泣きながら眠るのであった。

 翌朝、侍女に起こされるまで泥の様に眠ったが、身体の節々が痛く、精神・肉体的にも疲労は抜けずにいた。そのまま急かされる様に食堂に連れて行かれ、硬いパンと塩味だけのスープの朝食をとると、訓練場に連れて行かれる。

 訓練が始まったが直ぐに呆れられる事になる。そう、この世界では戦う人間は物心付く前から武術訓練を行うのだが、平和な日本で暮らしてきた3人では心構えも無く、また、体育の授業と部活動程度でしか身体を動かしたことが無いため、重い装備(剣・槍・盾・鎧一式等でで数十キログラムになる)で10キロメートル以上を移動したり、戦闘出来るこの世界の人間とは基礎体力が違い過ぎるのだ。

 それに剣だけでも種類・素材によるが、数キログラムから十キログラム以上になり、振り回すとなると、全身を使わなければならない。姿勢を保持するだけでも大変なのだ。

 聖女や賢者は必要無い様に思うだろうが、戦闘の前線に出れば、身を守るためにも一定の技量は求められるので訓練しなければならない。彼女達を守る者達もいるが守られる技量がいる。また、魔力が切れたから撤退する等出来るわけがない、戦争とはそういうモノである。

 休憩を挟みながら基礎訓練を続けるが、日が中天に達しても食事になる気配がない。周りの人間に尋ねてみるが、昼食の概念自体が無かった。1日2食が普通であり、貧しい者は1食だけと言うのもザラの世界だった。3食食べるのは、日本でも近代になってからなのだ。

 ヘトヘト、汗だくのまま日が傾くまで訓練し、水浴びをする事になるが、ここでまたガックリする事実を知る事になる。そう、風呂が無いのだ、シャワーさえ無い、シャンプー等無いし、石鹸は超貴重品で極々一部の貴賓が使うものだった。現在は温かいので水浴びをして、身体を擦って汗と垢を落とす位で、風呂はあっても蒸気風呂、それも燃料の問題で何日(週)か毎に集団で入り(貴賓でも護衛、侍従又は侍女と入る)、他人に背中の垢を擦り落としてもらうと言ったものだった。日本でも戦国時代頃までは蒸気風呂である。また、湯船にお湯を張るのはとても人手と燃料を食う、温泉でもなければ、そうそう準備出来るものではない。

 その様な感じでしばらく過ごすと、称号かそれとも若さ故か、どうにか生活と訓練に付いて行けるようになってくる。そして、命を奪う訓練が始まった。最初は小動物、徐々に大きくなり、人間程度の大きさになった。

 ある日、蠢く袋が持ち込まれた。何となく中身は分かったが剣で突き、弓で射て、棒で殴り、魔法で焼いた。次からは罪人がそのまま連れてこられた。既に心は麻痺しており、処理するのに何も感じなくなっていた。

 この頃から3人別に訓練が行われる様になった。役割が違うからである。勇者は剣を、賢者は魔法を、聖女は治癒と結界をと言う風である。顔を合わせるのは食事時と基礎訓練程度になってきた。追い込まれているため、口数も少なくなり、自然と関心も薄くなっていった。

 その頃から聖女の様子がおかしくなり始めた、ずっと下を向きブツブツと呟いていたり、虚ろな目で、ただただ人の言うとうりに動いたりと、まるで自分の意思がないようであった。施療院で治癒の修行のためと言われ、延々と魔力が尽きるまで治療を行う。帰れば黙々と食事をし、倒れる様に眠った。

 彼女にあてがわれるのは戦傷を負った症状の重い者ばかりであり、四肢のいずれかを切断されたり、骨まで達するような切傷、潰されてしまった傷など、普通では見ることさえ躊躇われる死亡してもおかしくない怪我人が多くを占めていた。現代の医者でも精神をイカれさせる様な状態であり、聖女が心を病むには時間がかからなかった。

 聖女が顔を見せなくなり、勇者と賢者は訝しがったが、修行のため離れた施療院に行ったと告げられる。

 しばらく2人で訓練をしていたが、賢者が体調を崩した。

 腹痛、嘔吐、下痢といった症状が彼女に襲いかかり、病をうつさないよう、そして療養のために聖女の居る場所に移されることになった。そして勇者1人が残った。

 訓練を続ける勇者であったが、時折、腹から小さな痛みが出るようになった。それに、食べているのに痩せ細っていくのを自覚する。医者(治癒師)に相談しても要領を得ない、優秀な者は前線に出ているからである。

 そして遂にそれは来た。

 訓練中、突然激しい嘔吐感に見舞われ、我慢できずに胃の中のモノをぶち撒けた。それは血の塊であり、其処には小さな蠢くものが大量にいた。周りが騒ぐのを遠くに聞きながら、勇者はそれを見ながら身体が冷え、意識が暗闇に沈んでいくのを感じるのであった。

 執務机に向かいながら状況を聞いた豪奢なローブの男は顔を顰めながら言うのであった。

「おお、勇者よ、死んでしまうとは情けない。」

ー完ー

 

 

 魔法がある世界でも、世界観が中世以前の戦争の最中の国に召喚されたら、こうなるだろう的に描いてみました。これでもマイルドな方だと思います。現代文明に慣れた中で、訓練した人間(軍特殊部隊)でもどうなるか?まあ、そう言う人ならば隙あらば逃げるでしょうね。義務感あるわけじゃなし、自分の命が大事だから。

 神託と帰還の所に?を付けたのは、まあ、わかりますよね。

 死因ですが、勇者は複数の寄生虫による内臓疾患、聖女は重度の鬱状態からの自殺、賢者は食中毒です。衛生観念は無く、精神疾患も認めない世界観です。

 また、死なせたのは慈悲でもあります。この後待っているのはガダルカナルやインパールも霞む程の地獄の飢餓・根絶戦争が待っているのですから。

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