表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

声を頼りに

掲載日:2026/04/26

短編です

 「「ザザ・・・ザザザ・・・・れか・・・・・せんか・・・こち・・・」」

 もう何度この途切れ途切れの声を聞いたことか。

 荒廃した街を、この音を頼りにただひたすらに歩く。

 僕は詳しく知らないけど、大昔の人間たちが大きな戦争をしたことで、ゆっくり地球は動きを停止していったらしい。そのせいで地球の半分が灼熱地獄、半分が氷の世界になってしまった。

僕は地球が動きを止めた頃、爺ちゃんと一緒に地下シェルターに逃げ込んだ。爺ちゃんは周囲の人になじめなくて、山奥とか森の奥とか、変な場所にシェルターをたくさん作っていた。おかげで灼熱と極寒のちょうど境目のシェルターに逃げ込めたんだ。

僕は、シェルターの中で爺ちゃんにいろんなことを教わった。本がたくさんあるシェルターだったから、暇をつぶすのにはもってこいだった。

 西暦が何年過ぎたのかもわからないけど、爺ちゃんが死んで、僕は一人になった。

 朽ちゆく爺ちゃんを見るのが怖くなって、僕はおんぼろのラジオと、お気に入りの本を持って、外に出た。

 境目に住んでいた人、境目付近にいた人は、きっと僕たちと同様に、逃げ伸びただろうって、爺ちゃんは言ってた。だから僕は、他の人を探しに行くことにした。

 境目は驚くほど安定していた。片方から日の光がさしていて、片方は暗闇。なんだか物語の世界に迷い込んでしまったみたいだった。

 植物たちは、やはり強い。境目でも元気に育っている植物は沢山あった。おかげで木の実を食べながら移動できた。

「「ザザ・・・ザザザ・・・・れか・・・・・せんか・・・こち・・・」」

 初めてこの音を拾った時、シェルターを出てからどのくらい経ったかは全くわからなかったけど、希望の光が見えたのは確かだった。太陽の位置全然わからないんだけど。

 僕はラジオの音を頼りに、ひたすら歩く。時々音がはっきり聞こえた時は、心が震えた。近くに人がいるんだ。僕だけじゃなかった。

 僕の足音だけが響く世界に、ラジオの音が心地よい。

 ザクザクザク・・・「「ザザ・・・ザザザ・・・」」足音とラジオが会話してるみたいだ。

 「「ザザ・・・・・だれか・・・いませんか・・・こちらは・・・大学・・・」」

 大学!?初めてそう聞こえた。そうか、このラジオは大学から放送していたんだ。大学なら設備も整っているし、きっとたくさんの人が生きているに違いない。

 細々とした希望が、一気に太くはっきりとしたものになった気がした。爺ちゃんがくれた紙の地図を広げると、確かに昔この辺には大学があった。やった、これで一人じゃなくなる。もう誰に届くかもわからない独り言を言い続けなくていいんだ!

 足取りは次第に軽くなっていった。目の前に、植物に覆われた立派な建物が見えてきた。外壁は崩れていたけど、まだ電気が通っているようで、部屋の所々が明るかった。やった、人だ、人がいるんだ!

 無我夢中でその建物に走っていく。ラジオの音が大きく、ハッキリとしてきた。

「「ザザ、誰か、いませんか?こちらは、○○大学、放送部です・・・」」

 放送部と書かれた部屋の電気がついていた。

 思い切ってドアを開けると、機材の前に座る一人の白骨死体が目に飛び込んできた。

「「ザザ、誰か、いませんか?こちらは、○○大学、放送部です。西暦30XX年、3月、大学にはまだ生き残りが居ます・・・」」



——これ、何年前だろう・・・——

骨の状態じゃ、顔はわからないなぁ・・・

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ