声を頼りに
短編です
「「ザザ・・・ザザザ・・・・れか・・・・・せんか・・・こち・・・」」
もう何度この途切れ途切れの声を聞いたことか。
荒廃した街を、この音を頼りにただひたすらに歩く。
僕は詳しく知らないけど、大昔の人間たちが大きな戦争をしたことで、ゆっくり地球は動きを停止していったらしい。そのせいで地球の半分が灼熱地獄、半分が氷の世界になってしまった。
僕は地球が動きを止めた頃、爺ちゃんと一緒に地下シェルターに逃げ込んだ。爺ちゃんは周囲の人になじめなくて、山奥とか森の奥とか、変な場所にシェルターをたくさん作っていた。おかげで灼熱と極寒のちょうど境目のシェルターに逃げ込めたんだ。
僕は、シェルターの中で爺ちゃんにいろんなことを教わった。本がたくさんあるシェルターだったから、暇をつぶすのにはもってこいだった。
西暦が何年過ぎたのかもわからないけど、爺ちゃんが死んで、僕は一人になった。
朽ちゆく爺ちゃんを見るのが怖くなって、僕はおんぼろのラジオと、お気に入りの本を持って、外に出た。
境目に住んでいた人、境目付近にいた人は、きっと僕たちと同様に、逃げ伸びただろうって、爺ちゃんは言ってた。だから僕は、他の人を探しに行くことにした。
境目は驚くほど安定していた。片方から日の光がさしていて、片方は暗闇。なんだか物語の世界に迷い込んでしまったみたいだった。
植物たちは、やはり強い。境目でも元気に育っている植物は沢山あった。おかげで木の実を食べながら移動できた。
「「ザザ・・・ザザザ・・・・れか・・・・・せんか・・・こち・・・」」
初めてこの音を拾った時、シェルターを出てからどのくらい経ったかは全くわからなかったけど、希望の光が見えたのは確かだった。太陽の位置全然わからないんだけど。
僕はラジオの音を頼りに、ひたすら歩く。時々音がはっきり聞こえた時は、心が震えた。近くに人がいるんだ。僕だけじゃなかった。
僕の足音だけが響く世界に、ラジオの音が心地よい。
ザクザクザク・・・「「ザザ・・・ザザザ・・・」」足音とラジオが会話してるみたいだ。
「「ザザ・・・・・だれか・・・いませんか・・・こちらは・・・大学・・・」」
大学!?初めてそう聞こえた。そうか、このラジオは大学から放送していたんだ。大学なら設備も整っているし、きっとたくさんの人が生きているに違いない。
細々とした希望が、一気に太くはっきりとしたものになった気がした。爺ちゃんがくれた紙の地図を広げると、確かに昔この辺には大学があった。やった、これで一人じゃなくなる。もう誰に届くかもわからない独り言を言い続けなくていいんだ!
足取りは次第に軽くなっていった。目の前に、植物に覆われた立派な建物が見えてきた。外壁は崩れていたけど、まだ電気が通っているようで、部屋の所々が明るかった。やった、人だ、人がいるんだ!
無我夢中でその建物に走っていく。ラジオの音が大きく、ハッキリとしてきた。
「「ザザ、誰か、いませんか?こちらは、○○大学、放送部です・・・」」
放送部と書かれた部屋の電気がついていた。
思い切ってドアを開けると、機材の前に座る一人の白骨死体が目に飛び込んできた。
「「ザザ、誰か、いませんか?こちらは、○○大学、放送部です。西暦30XX年、3月、大学にはまだ生き残りが居ます・・・」」
——これ、何年前だろう・・・——
骨の状態じゃ、顔はわからないなぁ・・・




