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眠りの中で、私は夢を見た。
私は今、海沿いの大きな建物にいる。外の海は荒れており、雲は多いが光が差し込んでいて、私が居る建物には屋根が無いおかげで明るかった。あたりを見回すと、建物の中には、額縁に入った黒一色の絵画が何枚も掲げられており、自分の顔が認識できない空間になっていた。
光はあるのに自分は分からない。奇妙な空間だが、不安や恐ろしさは無いという感想を抱くと、私は目が覚めた。
ゆっくりと目を開くと、閉めたカーテンの隙間から、青白い朝の光が漏れてきて、私のいる部屋をうっすらと明るくしている。光が差し込むという事は、色々な物がはっきりと見えるようになるという事だ。信一郎さんと勇将くんをはじめ、この村の男たちの顔もはっきり分かるだろうか。
私は布団から起き上がり、窓に近づいてカーテンを開いた。外の世界は青白い朝の光に包まれており、気温はかなり低そうだった。窓を開けると、地面と草木から放たれた、湿った空気の匂いが自然の多い地域にいる事を強く感じさせた。
頭を出して周囲を確認すると、澄んだ空気によって遠くに見える山の稜線がはっきりと見える。冬晴れの今日は、外に出て何かをするには最高の一日になるだろう。
視線を一階のモータープールに移すと、飯塚家のCX‐5と私のハーレーには、気温の変化で生じたであろう露が車体についていた。バイクに乗って散策すれば楽しいだろうが、今日の私には無理だった。
すると一階の玄関の扉が開いて、中から美菜子さんが出てきた。
「ああ、ゆりねさん。おはようございます」
美菜子さんは私に挨拶をしてくれた。
「おはようございます。高い所からすいません」
私は二階の窓から小さく頭を返した。
「今日は実家の修理工場に行くんです。この地域で一番人口密度が高い地域に行くんですけれど、ゆりねさんもご一緒にどうですか?」
「はい。ぜひご一緒させていただきます」
私はすぐさま答えた。畑と遠くに山が見える場所にいても、何も起こらない事は分かっていたのだ。




