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 飯塚家に戻ると、美菜子さんが私を出迎えてくれた。

「おかえりなさい。もうすぐ夕食になりますよ」

「ありがとうございます」

 私はすぐに感謝の言葉を述べて、靴を脱ぎ家に上がった

「夕飯は地元野菜と豚バラ肉のつけ汁うどんになります。聞き忘れたんですけれど、食べられない物とかって、金本さんはありました?」

「いいえ、特に好き嫌いはありません」

「そうですか」

 美菜子さんは満足そうな笑みを浮かべて答えた。私より少し年上なのに、夫と結ばれて子どもを産むと、人間というか、有性生殖で繁殖する生物としての余裕が生まれるのだろうか。だが美菜子さんのように美しく余裕のある女性が、顔の無い信一郎さんと愛し合う姿は不気味な光景だった。

 私はリビングに向かった。リビングでは顔の無い信一郎さんと勇将くんが、私の帰りを待って席についていた。

「お待たせしてしまって申し訳ありません」

 私は待っていた二人に詫びた。

「気にしないでください。さあ、食べましょう」

 信一郎さんの朗らかな言葉に、私はぎこちなく頭を下げた。信一郎さんにちゃんとした顔があり、柔らかな笑顔で答え、隣に無邪気な勇将くんの表情があれば、私の心も少しは安心したかもしれない。

 自家製の具沢山のつけ汁で食べるうどんは、野菜のうまみがふんだんに出ていて、この土地の持つ豊かさと人の心のぬくもりを感じた。

「外に出て、何か金本さんの興味を引くようなものはありました?」

 不意に信一郎さんが訊いてきた。顔の無い信一郎さんと勇将くんは、普通の人間なら口がある部分にうどんやつけ汁を当てて、そこからどこか異世界に通じる空間みたいに体内に取り込んでいる。一応口や歯に当たる器官はあるのだろうか、食べ物を噛んで咀嚼する音は聞こえて来る。

「地元の中学生と話したくらいですね。灰色のジャージを着ていました」

「それじゃあ、南中学の生徒ね。私も旦那もそこの中学の卒業生なんですよ」

 美菜子さんは自分に関係する話題が出たからなのだろうか、少し声を弾ませて答えた。私は顔の無い男子生徒と美しい女子生徒が惹かれ合い、愛し合って家庭を設けたのかと思うと、生ぬるいような気持ち悪いような奇妙な感覚を覚えた。

 それから夕食が終わると、私は風呂を借りて汗を流し、用意された部屋に戻った。タブレットPCを開いて、今日あった事を簡単にメモ書きすると、布団に入った。

 もし可能なら、明日は村の男たちにちゃんと顔がありますように。と私は願って眠りに着いた。


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