表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/10

4 仲間を回復したら精霊の行列ができました

ゴブリンが去ったあと、森は嘘のように静まり返った。


さっきまで響いていた怒声も、棍棒の音も消え、残っているのは木々のざわめきと、弱々しく揺れる光だけ。


俺は留まったまま、精霊たちを見つめた。


助かった。

確かに、ゴブリンを退けることができた。


なのに――。


戦った5つの光は今にも消えてしまいそうだ。


そのときだった。


セラがふわりと動いた。


白い光が、弱った精霊たちの方へむかう。

まずはテラのそばへ寄り添うように近づき、そっと触れた。


すり。


光と光が触れ合う。


テラの揺れが、ほんのわずかに落ち着いた。


次にセラはヴェントのもとへ。

それからイグニス、アクア、ルミナへと、順番にすり寄っていく。


劇的な変化はない。

しかし、明らかに輝き方が安定している。


(…聖属性の力?それとも精霊の特性か…?)


思い返すと、確かに精霊たちがすり寄ってきたとき、安心感や心地よさ、温かさを感じた。

精霊のすりすりする行動は、ただの愛情表現だけじゃなく、回復も兼ねているのかもしれない。


(俺も聖属性の精霊だ…俺にもできるはず…)


テラの前に浮かび、そっと距離を詰める。

ぎこちなく、恐る恐る。


触れた瞬間。


テラの光が、急激に安定する。

ぼやけていた輪郭がはっきりとし、色が濃くなる。


「……よく頑張ったな。」


すり。


セラのときとは、明らかに違う。

回復の速さも、量も、桁が違う。


(……何が違う?)


そこでようやく思い当たる。


(スキルか…!)


俺の持つスキル『共鳴核』には、ただ精霊を集めるだけではなく、他の精霊を効率よく回復させる効果もあるみたいだ。


気づけば、テラの方からすりすりしてくるほどに回復していた。


次はイグニスへ。


すり。


赤い光が、ぱっと勢いを取り戻す。

ふらつきが消え、先ほどよりも強く輝いている。


ヴェント、アクア、ルミナ。


触れる度に、同じように回復する。


弱っていたはずの光たちが、今では俺を押しつぶす勢いで全方向からすり寄ってくる。


(な、なにも見えない…)


視界が6色で埋め尽くされている。


…6色?


いつの間にかセラも混じっていた。


すりすり。

すりすりすり。




……たぶん、結構な時間がたっていたと思う。


精霊たちはようやく満足したように離れていった。


どの光も安定している。むしろ元気すぎるくらいだ。


日が傾き、夜が近づいてきている。


今日1日いろんなことがあったが、精神的な疲れ以外には何も感じない。

たぶん、精霊に睡眠は必要ない。


しかし、夜に行動するのは危険だ。

なぜなら俺たちの体は発光しているから。

こんな体で夜の森を歩いたら食べてくださいと言っているようなものだ。


俺たちは木の根がつくった窪みに身を隠した。


見つからないようにテラが土で窪みを隠してくれたので、テラには追加のすりすり。


他の精霊たちから嫉妬のような感情を感じたが…

ま、まぁ、気のせいだろう。


この世界に転生してから初日でスライム。2日目でゴブリンに出会った。


精霊たちの魔法を使うときの代償は回復してあげられるが、命を削って出せる魔法はせいぜいゴブリンを追い払える程度。


生存率は確かに上がったが、安全とは程遠い。

俺も魔法を使えたらいいんだが、どう使えばいいのか分からない。


いち早く安全な場所を探さなきゃな。


(……いや、安全な場所ってどこだよ!)


生態ピラミッドの一番下の俺たちが安全に暮らせる場所なんてあるのか??


「……考えても仕方がないか」


精霊たちはというと、各々が窪みの中でふわふわと浮かび、落ち着いた光を保っている。

眠る必要がないとはいえ、休息に近い状態なのだろう。動きは最小限で光も穏やかだ。


夜の森は、昼とは別物だった。

遠くで獣の鳴き声が響き、どこかで枝の折れる音がするたびに、意識がそちらへ引っ張られる。


ふと、外の気配に気づいて、意識をそちらに向けた。


窪みの外。

闇の中に、微かな揺らぎがある。


それは、こちらをうかがうような、ためらいが混じった気配だった。


(なんだ…?)


俺が少し警戒していると、ヴェントがテラをちょんちょんとつついた。


テラはうなずくような動作をして、少しだけ窪みを覆う土に隙間を開けた。


その隙間から一つの青い光が入ってくる。


セラはその精霊に近づき、クルクルと危険な存在ではないかを確認するように回った。

しばらくすると、セラはその精霊から離れ、精霊は外へ出て行った。


「え?セラ、あの子危険だったの?」


ふるふる。


セラは体を横に振る。


「じゃあなんで…?」


答えが返ってくる前に、再び青い光が入ってきた。


ざわっ。


(ん?)


なんだこの感じ。なんかやばいことが起きそうな予感がする。


「ちょ、ちょっと待って」


その瞬間。


テラのあけた隙間から大量の精霊たちがなだれ込んできた。


すりっ。

すりすりっ。

すりすりすりっ。


「なんだこれ!?せまっ、狭いって!!!」


遠慮という言葉を知らない勢いだ。


窪みの中が、一気に明るくなる。

さっきまで「隠れる場所」だったはずなのに、今は発光体の密集地帯だ。


(ちょっ、え?隠密行動は!?)


俺の混乱をよそに、精霊たちは次々と――


すり。


俺にすり寄ってくる。


「な、なにを期待してるんだ!?」


一匹触れる度に、安定する光。

それを見た別の精霊が、我先にと突っ込んでくる。


すりすり。

すりすりすり。


「セ、セラ…みんな、たすけ…」


セラたちを見る。


助けようとするでもなく、慌てるでもなく、誇らしげに輝いている。


――うちのご主人様、すごいんですよ。


そんな雰囲気が、なぜかはっきりと伝わってきた。


「やめろ!勝手に口コミを広げるな!」


もちろん誰も聞いていない。


外では、まだたくさんの気配が揺れている。

並んでいる。

待機している。


(……これ、どこまで増えるんだ)



夜の森でひっそり…とは言えないかもしれないが、確実に。


一匹の精霊の元へ、低級精霊たちは集い始めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
嫉妬してる精霊可愛い(*≧з≦)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ