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13 初クエストでした

精霊たち全員の冒険者登録と、パーティ登録が終わったころには、ギルド内の喧騒も少し落ち着いていた。


「正式に確認しますね。

冒険者ルカさんをリーダーとした、パーティ。《精霊のスピリットガーデン》……登録完了です」


受付嬢の言葉に、精霊たちが一斉に反応する。

ちなみにパーティ名はルミナの案が採用された。


「やった!」


「これで一人前だな!」


「一人前かどうかは、仕事次第です」


即座にセラが釘を刺す。


俺は金属プレートを握りしめたまま、少しだけ深呼吸した。


(……冒険者、か)


実感はまだ薄い。

だが、ここに来た以上、もう後戻りはできない。


「それでは、初任務におすすめなのはこちらです」


差し出された依頼書には、大きな文字でこう書かれていた。


――《薬草採取/難易度F》


「ギルド周辺の森で採れる基礎薬草の回収です。

危険度は低く、新人向けですね」


「それなら安心だね!」


ヴェントが軽く笑う。


「油断は禁物です」


「分かってる分かってる!」


こうして、俺たちの初任務は決まった。



日を改めて初クエストに挑むつもりだったが、宿に泊まる金もないということで、早速薬草採取に来た。


森は、静かだった。


風が木々を揺らし、葉擦れの音が続いている。

ギルド周辺とはいえ、魔物が出ないわけではない。


「薬草……これ…」


テラが地面に生えた淡い緑の葉を指さす。


「間違いないです。かなり見つけやすいので、手分けすれば日が沈むまでには帰れそうですね。」


セラが確認し、丁寧に採取していく。


(……本当に、普通の仕事だ)


少し肩の力が抜ける。


「じゃあ、この範囲をお願いね!」


ヴェントの号令で、自然と分担されていく。


精霊たちは、それぞれの方向へ散っていた。


「やっぱり私、ついて行きましょうか?」


「ただの薬草採取なんだから大丈夫だよ。」


過保護なセラと別れて、俺も一人、森の奥へ進んだ。


(……静かだ)


ギルドの近くとは思えないほど、木々は深く、空気は冷たい。

足元を確認しながら、目当ての薬草を探す。


――そのとき。


鼻をつく、異質な匂い。


(……血?)


思わず足が止まる。


薬草の香りに紛れて、微かに漂う鉄の匂い。

気のせいじゃない。


俺は音を立てないよう、慎重に進んだ。


茂みを抜けた先――


倒れている人影が、視界に入った。


「……っ」


男の冒険者だった。

胸から腹にかけて、大きく裂けた傷。

血はすでに地面に広がり、呼吸も浅い。


(まずい……)


周囲を見渡す。

仲間の姿はない。


頭が一気に冷える。


この傷と出血で生きているということは、まだそんなに時間がたっていないはず…

つまり、まだ近くにこの冒険者を攻撃した何者かがいる。


だが、犯人を警戒する暇はない。


「結界……」


咄嗟に、聖属性に意識を集中させる。


淡い光が薄い膜となって、俺と負傷者を中心にドーム状に小さく展開された。

聖属性の結界。


(セラのようにうまくできなかったけど、これで奇襲は避けられるか…)


「回復……!」


今度は、水属性に集中。


掌から淡い水の光が溢れ、傷口へと流れ込む。

だが――


「……だめだ」


再生が、追いつかない。


(俺の回復じゃ……止血が精一杯)


歯を食いしばる。


このままじゃ、助からない。


「……アクア!」


声を張り上げる。


森に響く、必死な呼び声。


「アクア!!!来てくれ!!」


どれだけ叫んでも、やはり届かない。


それなら…


「ヴェント!!聞こえるか?!」


次の瞬間だった。


――ゴウッ。


空気が、爆ぜた。


木々の枝が一斉にしなり、落ち葉が巻き上がる。

突風が森の中を一直線に切り裂き、俺の視界が一瞬、白く霞んだ。


「呼んだぁぁぁぁ!?」


ほとんど衝撃音に近い声。


同時に、何かが地面を滑るように突っ込んできて――

俺の目の前で、急制動する。


「はっ……はっ……!」


風を纏った小さな影。

ヴェントだった。


流石の風精霊。耳がいい。


足元の土がえぐれ、背後の木々がまだ揺れている。


「なに!? なに!? なんかあった!?」


一瞬で状況を把握し、視線が負傷者へ飛ぶ。


「……うわ、これはヤバい!」


「アクアを呼んでくれ! 俺の回復じゃ足りない!」


「了解!!」


言い終わる前に、ヴェントはもう跳んでいた。


――バンッ!


音だけを残し、姿が掻き消える。

風だけが、進行方向の草木を薙ぎ倒していく。


(……速っ)


ほんの数秒。

だが、その間にも、負傷者の呼吸はさらに浅くなっていく。


「……頼む……間に合ってくれ……」


結界と回復を維持しながら、必死に祈る。


――そのとき。


再び、空気が震えた。


さっきとは違う。

冷たく、澄んだ、重みのある気配。


「連れてきた!!」


ヴェントがアクアを地面に下ろす。


「……」


ポカンとなにも理解できていないアクア。


「アクア!!この冒険者、助かるか?!」


負傷者をみて、やっと頭が動き出したのか、駆け足で冒険者の近くに膝をつく。


「……し、深刻ですね。でも、まだ間に合います…」


その声に、胸の奥で何かがほどけた。


「お願いする……!」


「ま、任せてください…」


アクアはそう言って、冒険者の傷に手をかざした。



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