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頼庵のエッセイ集

人の役に立てるなら……なんて気軽に思ってたのに

作者: 藤谷 K介(武 頼庵)

 エッセイ集などに掲載するものじゃないエッセイは久しぶりですね。

 そこまで大したお話しでは無いのですけど、お立ち寄り頂けたら幸いです。



 今回のお話しは、久しぶりにできた時間を使って少しでも運動しておこう!! という浅はかな考えの元、住んでいる場所の近くをぶらぶらと散歩していた時に思いだした事になります。


 私が住んでいる場所は地方都市の更に地方都市。しかし市の真中に位置している場所でもありまして、周りは多くの住宅街の他に、公共施設も多く存在している立地となっています。


 そんなとある公共施設の前を通りかかった時の事。

 建物の外側にある大きな駐車場に一台のバスと思わしき車両が停まっていました。

 私の住む町は観光地でもありますので、街中に観光バスを見かける事は割と普通の事。ただしこの時に見かけたのは観光バスなどではなく、バスの側面に大きな赤い十字の記しが。


 そう、献血バスですね。


 そのバスを見た瞬間に沸き上がる思いってありますよね。『献血しなきゃ!!』とか、『誰かの役に立ちたい!!』などなど。

 まぁ私も人並みに(?)情には熱い漢だと自負していますので、『良し!!』とは思います。


 ただし――。

 私はですね、献血を目的としてそのバスへは向かっていく事はたぶん、()()ありません。



 先に言っておきますけど、決して嫌だからとか、怖いからとか言う様な理由では無いので、その辺りはくれぐれもお間違えないようにしていただきたいのですが――。



 実のところですね、私は献血を目的としたバスに過去一度だけ乗った事が有ります。

 それはもちろん献血するために乗ったのですけど、それ以来献血バスには後にも先にも乗る事は無いと思います。


 それは、私が高校一年生の時の事。

 その日、私の通う高校へ献血バスが訪れ、生徒の中から希望する者が随時献血するというお話を、朝のHRの時に担任の先生から周知されました。


 時間的には、他の施設を回ってから来るという事で、その時までには希望する人は担任の先生に申し込みをしなければなりません。

 先に述べている通り、この当時の私は『熱い漢』だったので、そのお話を聞いた後すぐに希望を出します。


 献血バスが学校へと訪れたのは、丁度お昼休みに差し掛かろうとする時間帯で、構内放送により、その事が構内に拡散周知され希望者はバスの所へと向かうように指示が出ました。


 私のクラスには、私の他にも数人希望者がいましたので、揃ってバスへと向かいます。


 そして列に並び、ソノ前の問診などを記入して順番を待ちました。私の予想というか想像では、結構な人数の生徒が来るものだと思っていたんですが、順番が来てバスの中へと通されると、そこに居たのは数人の生徒と学校の先生数人のみ。


――あれ? 意外だな……。

 この時の私はそう思いました。それと同時に、『これからかな?』とも。


 しかし時間が経ってもぽつぽつと生徒が来る事はあっても、予想していたほどの人数が来る事は無かったですね。


 そうして回ってきた自分の番。


「どのくらい献血していただけますか?」

「え?」

 問われている意味が分かりませんでした。まぁこの時『献血する事』自体が初体験の為、どういわれるのかなどは全く知識として持ってなかったんですよね。


「えぇ~と……献血していただく血液の量になります」

「あぁ~……。どういう基準がありますか?」

「そうですね200ml、400mlという感じですかね」

「なるほど……じゃぁ」

 多ければその分役に立てるかな? などという考えがよぎり、私は迷いなく400mlの献血を決断しました。


 そうしてバスの中のベッドに横になると、丁寧でかつ迅速に準備され、「では刺しますね」という看護師さんの言葉と同時に、プスっと私の腕に鈍い痛みが訪れ、やがて私の体から血が機械の方へと流れていくのが見えました。


――おぉ!! すげぇ!!

 そんな事に興奮する私。


 ちょっと寝ている間に、予定していた量が採取終わり、バス後方へと移動を促されると、そこで献血後の粗品を手渡され、しばらくその場で休憩してくださいと、椅子へ案内されました。


 こうして私の『献血初体験』は終わったのですが。




 一週間程度経過した後に、クラスの担任より赤い『献血手帳』を放課後に手渡されることになったのですけど、私以外の人はすんなりと手渡され、何事もなかったようにその場を後にしていったのですが、私の順番になって、担任がとある封筒と共に手帳を私の前へと出しました。


「先生これは?」

「あぁ、頼庵には手紙付きらしい」

「手紙?」

「後で読みなさい」

「先生は内容を知ってるんですか?」

「いや。頼庵宛になっているのだから私は内容を読んだりできないよ」

「そうですか。分かりました。失礼します」

 そう言って手帳と手紙を受け取り、その場を後にした私は、その足で所属していた委員会へと向かいます。


 その委員会で使用している部屋へと入り、渡された手紙を読んでみる事にしました。



 手紙の始まりは、『この度は――』という様な常套句が並んでまして、なんということは無いお礼の手紙なのか? と思ったのですが、血液の成分表と共に入っていた手紙の方を読み進めていった時に、その文章を見かけた瞬間目が止まりました。


『頼庵様がなされた献血によって採取させていただいた血液なのですが、残念ながらそのまま輸血等にて活用することが困難だと判明しました』


「え?」


『それに伴いまして、頼庵様ご自身、血液検査をされる事をお勧めいたします。どうぞご検討ください』


「何……これ?」


 読んだ瞬間に軽いパニックですよ。(笑)

 まさか自分の血が使えないなんて言われるなんて事考えたこと無かったですからね。


 


 その後有った委員会がどんな話だったかなんて覚えていません。

 


 帰宅して、すぐに両親へと話をして、後日大きな病院(とはいえ、地方都市ですからそれなりレベルですが)にて検査を受ける事になりました。


 その結果はまた十日程で出たわけですけど、医師の元でその内容を両親と共に聞きました。

 その内容を明記してしまうと、身バレする可能性がありますので書いたりはしませんけど、簡単に言うとですね、私は『献血する側』ではなく『輸血してもらう側』という事ですね。そして『献血に関してはもうなさらない方が良いですよ』とも付け加えられました。




 ショックはショックでしたけど、こればっかりは体の構造上の事なので納得するしかありません。普通に生活している分には何も問題なく過ごせるので、あまり気にしていた事は無いですけど、とにかくおおきなけがだけはしないようには気を付けていました。



 これが『初体験にして最後の体験』をしたというお話で、人の役に立ちたいと気軽に思ったけど、実際には『救われる側』なのだなと感じたお話しです。



 今はですね、オペなどをするような場面があれば、自分の血液を事前にストックしに行ったりしています。




 久しぶりに見た献血バスにて、当時の事をふと思いだした。そんな内容が今回のテーマでした。



 今回はこの辺で。

 またお会いしましょう。





 

 

 

 


 

お読み頂いた皆様に感謝を!!


 かれこれ既に○十年前の話ですね。自分の体について改めて考えさせられた体験でした。

 その甲斐があってなのかどうかわかりませんが、今でも普通に暮らすことが出来ています。まぁ不自由なところはありますけどね(笑)


 

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― 新着の感想 ―
[一言] 面白かったです、一言突込みを入れさせてもらうなら「手帳要らねぇよ・・・」と
2023/07/31 14:13 通りすがり
[一言] 献血をすることでわかることがあるのですね。 それにしても400mlも献血するなんて、漢気溢れていらっしゃいますね。 私は免許更新の時に人助けしようと献血カーに乗ってはみたものの、直前でびびっ…
[一言] 性病検査の代わりに献血をする人がいるらしくて、不使用の理由はぼかして書くと聞いたことがあります。 同じ「献血で身体のことを知る」でも、こうも印象が変わるものなのですね
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