第一話 二人の宝物
シトリア視点
「これからはあなたのその力を、私を守るために使ってくれないかしら?」
美しい青みがかった緑の瞳に見つめられる。
ゆらゆら揺れるその双眸はこの世の至宝と思えるほどの煌めきを放ち、私を夢心地にさせてくれた。
「私はあなたと一緒にいたい」
赤くなった細い手を取り、真っ白で柔らかな自分の両手で包み込む。
「私は何があってもあなたを裏切らない。あなたを傷付ける全てから、私が守ってみせるわ。だからあなたも、その強さで私を守ってくれる?」
頬を流れるのは一筋の涙。瞬きをする度に溢れるそれを、私はそっと指先で拭う。
びくりと揺れる肩と、ぎゅっと握られた手が愛おしくて、口元は自然と微笑んでいた。
「あなたを幸せにする権利を私にちょうだい」
流れる涙はそのままに握っていた手を離されて、その両手は震えながらゆっくりとこちらへと伸ばされる。
けれど私に触れる直前、躊躇うように止まってしまった。
きっと今、私から手を伸ばしては意味がない。
私に触れることを恐れないで欲しかった。あなたの好きにしてもいいと……大丈夫なのだと、信じてもらいたかった。
「大丈夫。あなたは私を壊したりしないわ。だってずっと、大事にしてくれているじゃない」
言い終えた瞬間、私の願いは届いたようで、彼の両腕に抱きしめられていた。
その細腕からは考えられないような強い力で縋りつかれ、私も彼の背中に両手を回す。
「…………一緒に、いていいの?」
掠れた声が耳元で震える。
「ええ、私が望んでいるの。あなたにいてほしい。私のそばにいてくれる?」
「…………うん」
肩口を濡らすほどなのに、必死に声を堪えている。彼の声はまだ掠れていて、きっとその喉を潤せばまた素敵な音が聞こえてくるだろう。
私だけの宝物。
何があってもあなたを離さないわ。