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21.温泉が最高だった。

ちょっとぐだっています。すみません。

もう更新不定期になるかもです。

 

「どこから見に行く?」


 賑わう街中で辺りを見回しながら歩いていく。

 宿屋を出て商店が建ち並ぶ区画に来たのは良いものの、温泉街だけあって珍しい物が並ぶ土産物屋や小物屋、飲食店などがあり目移りしてしまう。


「商店の入り口から順にぐるっと見て回る?」


「私はファレノ先輩について行きます」


 という事で商店街の入り口から順に見て回る事にした。ファレノを挟むようにして三人で歩いて行ると途中で聞き覚えのある声が聞こえてきた。


「あ、サニーちゃんだ!クーさんはどこ?」


 とある商店の前に馬車で出会ったあの子がいた。名前は確かハル君で四歳だった筈。

 ルイスさんは面倒そうに顔をしかめていた。


「ハル君クーさんは宿屋でお留守番しているんだ。ハル君は何でここにいるの?」


 店内には綺麗な小物が並んでいる。とてもじゃないが四歳のお子様が好んで入る場所じゃない。


「ここねえ、おばあちゃんのお店なの。お父さんが作った物とか置いてあるんだよ」


 店先で話をしていると店内から声がかかった。


「ハル坊の友達かい?上がってもらいな」


 ファレノ達と目を合わせて誘いに乗ることにした。


 店の奥から二階へと続く階段がありそちらから上へとお邪魔した。

 店の二階は居住エリアになっていた様でキッチン兼居間の様な所に通された。


「まあまあ、あの時の!お世話になったわね。お茶を出すから休んでいってね」


 ハル君の母親に居間のソファーへと促され、三人とハル君とでテーブルを囲むと、大きめに誂えられた窓からは商店街の様子が窺えた。


「あの時は助かったわ。ありがとう。今日はあのポメポメは一緒じゃないの?」


 品の良い香りのするお茶を注ぎながらハル君の母親が問うてきた。

 それにハル君は元気よく宿屋で留守番してるんだって!と答えていたので補足しておいた。


「私達と一緒にいた大人の方と一緒にいるんです。動物も温泉に入れる宿屋だったので」


 そう言った途端にハル君の母親、クレイラさんは表情を暗くした。


「そこはもしかしてファンデル亭という宿屋じゃないかしら?天然温泉の露天風呂がある」


「そうです。良いお湯でした」


 良いお湯とおどろおどろしい雰囲気というのが正しいけれど。あえて言う必要はない。


 その後もクレイラさんは何かを言いたげな雰囲気を醸し出していたがそれ以上宿屋の事は話題に出なかった。


 小一時間程お喋りをした後であの時のお礼だと、人数分のブレスレットを貰った。クーさんには首輪に付けられるアクセサリーを貰った。

 遠慮はしたのだけれど、今晩もあの宿に泊まるなら貰っていってと持たされてしまったので有り難く頂くことにした。


 少し聖の気配を感じるとファレノが言っていたので魔除けの効果があるのかもしれない。

 クレイラさんはあの宿屋の薄ら暗い部分を知っているのかもしれない。


 ハル君とクレイラさんとお別れして商店街の見物を再開した。


「クレイラさんは何か知っているみたいだったね。でも変に関わらせまいと隠している様子だったり、このブレスレットだってお礼と称して人数分くれたり。でもここの教会に話がいってる様子はないと。何だか変な感じだね」


「あの子供は宿屋の話は知らないっぽかったですね。母親世代で何かがあったんでしょうね」


 店を見て回りながらも話題はそれになってしまう。

 ルイスさんも気になっていたのだろう。悪魔関係で母親を失ったばかりなのだからそれもそうかもしれない。

 今回の事はクーさん曰く悪魔の影はないらしいけれど。


「あ、タゴ焼きのお店ここにもある!ファレノ、ルイスさん食べて行こう」


とタゴ焼きに心奪われていた私達はしっかりと舌鼓を打った。



そのあとは特に買い物をするでもなくお店見て回り夕方には宿屋へと戻った。



「お帰りなさい」


宿屋で出迎えてくれたレックス助祭はすっかり寛いでいた。

それもそう、宿屋の雰囲気が一変していたのだから。


「レックス助祭、浄化したんですか?」


三人共に真っ先に浮かんだ原因を述べれば首を横に振られた。


「いいや。まあ行く先々で聖水を撒いたりはしたけれど、それ以上の事はしていないよ。多分ね、元凶の場所以外に行き場を失った魂が逃げ込んだからこうなったんだろうねぇ」


爽やかな笑顔でもって魂を知らずに追い詰めてらっしゃったらしいレックス助祭である。

そう話ながらその問題の場所を見せて貰えば、近付くだけでここがそうだと本能が知らせる不穏さが漂っていた。


いつの間にか側に来ていたクーさんも尻尾を振りながら得意気な様子である。

何、いつの間にかレックス助祭とも仲良くなったの?一緒に追い詰めた仲なの?


「この場所を封印するなりすれば当面は凌げると思うんだけど、それにはここの教会にも話を通さないといけなくなるんだよね。定期的に見てもらわないといけなくなるからね。

それにはここの宿屋の主人から依頼をしてもらわなければいけない。

という訳で、私は今からここの主人と話をしてくるよ。クーさんをよろしくね」


と言うレックス助祭にそう言えばとブレスレットを渡しておいた。

クーさんにはアクセサリーだ。魔除けが付いているけどクーさんなら平気だろう。


レックス助祭は私まで貰ってもいいのかなと仰っていたけれど、そうなった流れを説明したら受け取ってくれた。

クーさんを連れてお礼に行かないとね。と言いながら


クーさんも満更ではない様子なので本当に小さい子が好きなのだろう。


その場で一旦解散をして晩ご飯の時間まで自由に過ごす事になった。


「ファレノ先輩、私とお風呂に行きませんか?」


「あ、私もお風呂行きたいです。ファレノも行こう」


「いいよ。ホコリ落としてからご飯食べようか」




はい、お風呂です。


クーさんも私達と一緒に風呂場に来ていたのでそろそろふやけているんじゃないかななんて思いつつ、昨日は結局入らなかった内湯にも浸かってまったりと過ごした。


昨晩は一人いたお客さんも今晩はいないのかお風呂は完全に貸し切り状態だった。


寝そべる様に湯船に浸かっていれば、隣にファレノがやって来て湯に入る瞬間を見てしまった。


それ即ち腰の布が取り去られる瞬間である。


お、おお…


それ以上の感想は出なかった。え…超成長して、え…?でっっっ…


思い返せばあの時の私の腰に当たった感触からして妥当か、なんて


私がそんなことを思っているとは露程も知らずに暢気に内湯を楽しむファレノを横目でじとりと見てしまった。


一緒に入ってきたルイスさんはやはりまだ私と大差なく、私を安心させてくれた。ありがとう、ルイスさん。



一通りお湯を楽しんだあと雰囲気の明るくなった廊下を通り食堂へと向かうとそこには晩ご飯が用意されていた。


宿の主人との話が済んだらしいレックス助祭も一緒にテーブルに着くと全員でご飯を頂いた。



こうして二日にわたり温泉を満喫した私達は翌日何事もなくこの地を後にした。



宿屋の主人はこの後教会に依頼を出し、封印部屋の監視をしてもらうようになった。

この事で宿屋は数年後に賑わいを取り戻したが、酔っ払った客にその部屋を荒らされ元の木阿弥になってしまった。

その後、宿屋の主人は行方不明になりそれと同時に怪異も去り残された夫人と子供で宿を切り盛りしたそうな。





ありがとうございました。



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