成長(物理)を感じる ※気持ち程度にR-15※
※直接的な表現は避けましたが文章の半分より下の辺りから少しシモいお話となっております。
苦手な方は読み飛ばして下さい。
「何をしているのデスか、ナキア」
底冷えのする低音が聞こえた。
その直後、おじさんを後ろ脚で軽く吹っ飛ばしたクーさんが空中で一回転すると華麗に私のお腹の上へと着地する。
うぐぅと変な声が漏れてしまったが助かった。
流石はクーさん、変態的な嗅覚でもって駆けつけてくれたようだ。
それにしても、ナキアって誰さ。このおじさんがそんな名前だったの?て言うかクーさん知り合いだったの?
「嗚呼ぁ、お久し振りです我が王よ。私が少し寝ている間に行方不明になったと聞き必死にお探ししたんですよぉ」
ねっとりと煙が喋った。大変だ、悪魔の正体は煙だったのか。
蜃気楼のように不規則に揺れる煙は消えそうで消えない。悪魔は実体を持って下界へと降りることは出来ない筈なのでこういう形で人間を唆して憑いて降りてくるのだろう。
「おやオヤ、私は貴方も消滅させたと思っていたのですが、おかしいですネ。何故存在しているのですカ」
「はい、我が王よ。私はいざというときの為に私の予備を幾つか用意していたのです。何時如何なる時でも我が王に助力出来るように、私が存在する限り私は王から決して、決して離れませんよぉ」
あれ、クーさんが心なしかうんざりとしているように見える。
「私は今やただのポメポメに過ぎナイ。貴方の王はちゃんと悪魔王城にいるでショウ。さっさと戻りなサイ」
「お言葉ですが、我が王よ。私の王は唯一、貴方様だけにございます。あの城に居る王は貴方様の脱け殻。それでも最初は良かったのですが、何と申しますか物足りないのです。やはり私の王は貴方様を置いて他にはいないのです」
困った様な鳴き声が聞こえた気がしたが、私は首を突っ込まない方が良いのだろう。薮蛇って奴だ。
おじさんから助けてくれた事には感謝するけど、うっ、そんな目でこっちを見ないで。
「はあ、全く実に信じられない事ですが、そこのファッ○ンビッ○チビが貴方様を狂わせたとでも言うのですか?あの時に。
完璧な、我が王を、糞木っ端天使如きが誑かしその高潔たる身を下界へと落としめたと。しかもそれだけでは飽きたらず、その魂でもって王を汚すとは。許せない、羨ましいぃ許せない許せない許せないぃい」
煙の悪魔ナキアさんが大層お怒りだ。て言うかあの時ってまさかあの最初の遭遇から見ていたとでも言うの?そんなまさか。まさかね?
王が自死することを止めもせずに見ていたとでも言うの?
「言葉を控えヨ。ナキア」
軽くどん引いているとクーさんが威圧感増し増しに声を発した。
「私は最早貴方の知る王ではありまセン。さぞ失望した事でショウ、さっさと見切りをつけなサイ。それにここに貴方の居場所などありませんし、私は貴方の存在を一切認めナイ。消えなサイ」
「ふぐうぅ、あぁあこれぇえ、これですよぉ我が王よぉ、ああぁっまた、またいつの日かあいにぃいぃい」
最後まで喋らせる事なくクーさんの迫真の一吠えでナキアさんの姿は掻き消されてしまった。何やかんやでまだまだお強い様で、何よりです怖い。
「さて、失礼な発言をする鬱陶しい蠅も片付いた事デスし、次はこの邪な男を去勢して放逐しましょうかネ。ええ、大丈夫デス。あなたを酷い目に合わせた奴でも人間デス。命までは取りませんとモ」
と股間を踏み潰しに向かったクーさんを慌てて止めて、そんな事より、と腕の縄を切ってもらうとクーさんの控え目な一蹴りでおじさんを草むらの方へ移動させてもらった。
道のど真ん中にいると他の馬車に轢かれかねないし通行の邪魔ですし。
幌馬車を牽いていた馬は私達にすっかり怯えてしまい落ち着かせるのに苦労した。
私自身も満身創痍だったが、先に馬に向け治癒の祈りを捧げ何とか落ち着いてもらったのだ。
それから馬をおじさんの側に誘導して幌馬車を道の端に移動させると、荷台に座り自分へ向けて治癒の祈りを捧げた。
額の傷は出血の割りに大したことはなく時間はかかったが薄皮が張る程度には回復出来た。
これもファレノの指導の賜物である。ありがたや。
手足の擦り傷も治そうとしたところで集中力が切れてしまった。お腹も空いたし力が出ない。
そのまま少し荷台に横になり身体を休ませる事にした。
おじさんは意識を取り戻そうとする寸前でクーさんにソフトな一撃を喰らい再び気絶していた。
私もまた襲われるのは勘弁して欲しかったのであえて止めなかった。背に腹は変えられないというやつだ。
辺りはすっかり日が落ち月明かりに照らされる時間となった。早く戻らないと皆に心配を掛けてしまう。寝転んだままで治癒の祈りを再開する。
手足の疼痛が緩やかに引いていくのを目を閉じて感じていると、顔に付いていた乾いた血を舐めとる感触がした。
くすぐったさに目を開けば恍惚とした表情のポメポメがいた。目が完全にあちら側にイッテいる。小刻みに顔にかかる息も何だかとても生々しい。
何とか祈りの言葉を途切れさせることなく紡ぎ続けるが集中力が大幅に落ちてしまった。
これ以上の継続は無理だと判断して歩けるくらいには回復したので帰路に着くことにした。
クーさんに案内してもらいながら街まで歩いていく。
おじさんはあのまま放置しても凍死はしないだろうから放っておいた。いくら悪魔に誑かされたからと言っても怖い目に合わされたのだ。到底許せるものじゃない。
馬がおじさんに懐いていたら身を寄せて守ってくれるだろう。
この辺りで盗賊が出るとも聞かないしね。
あれからどれくらい歩いただろうか、体感的に一時間は歩いたように感じる。どうやら私は街の外に連れ出されていた様で道に沿ってただひたすら進み続けると遠くに大きな外壁が見えてきた。
どうやらゴールは近そうだ。
しかし、街に入るときには身分証が必要なんじゃないだろうか。孤児院に帰れば大切な物入れに教会発行の身分証が保管してある。
街の外に出るような奉仕活動はしたことがないし、普通に街の外に出たことがない。
外壁が近付くに連れ緊張が身を包む。
ポメポメ姿のクーさんは問題なく入れるだろうが、ってそうだ、クーさんは外から来た人だった。
「クーさん、街に入るときにはどうすればいいんでしょうか。私街の外に出たのが初めてで分からないんです。ご教授下さい。」
軽快に歩いていたクーさんは可愛らしい仕草でこちらを見上げると、小さく跳び跳ねるので抱き上げると教えてくれた。
通常は身分証を門番に提示し通る。
身分証がない場合は名前を記入し保証金として銀貨一枚を門番に預ける。これは街から出るときに手数料を引かれ返してもらえる。高額なのは大きい街だからだそうだ。
街に住んでいる者が身分証を忘れた場合には門番に連絡してもらい街の者に門まで身分証を持って迎えに来てもらう事でそのまま入れる。
と言うことだ。成る程ね。
他にも出先で紛失した場合等々割りと細かく決まっているみたいだ。
いよいよ門が見えてきた所で、門番と話している人の姿が見えた。こんな夜も深い時間に出掛ける人がいるんだなと思いながら近付くとクーさんがその人物に向かって走って行った。
足元にじゃれ付くとその人はこっちに向かって走ってきた。
ファレノだった。
こんな時間まで私のことを探してくれていたのだろうか。胸に安心と申し訳なさと他にも色々な思いが押し寄せ涙腺が崩壊してしまう。私も彼に駆け寄ると必死に抱き付いた。
胸一杯に彼の匂いを嗅いでやっと帰って来たという実感を得た。
落ち着くまで一頻りしがみついた後、私の様子を一瞥したファレノは着ていた服を一枚脱ぐと否応なく私に着せ、持ってきてくれていた身分証を使い私は無事に門を潜ることが出来た。
街中に入るとファレノは私を抱えて歩き出した。
終始無言なのが少し怖くもあったが商店の並ぶ見慣れた景色が見えてくるとあっという間に孤児院に着いた。
遅い時間にも関わらず皆で出迎えてくれ、心配をかけたことを謝りただいまの挨拶をした。
軽食まで用意してくれていたのだが、まずは怪我をしている事もあり汚れを落とし治療する為にお風呂場に直行した。
着替えは起きてきたオリバーが用意してくれた。ベックも最初の出迎えのときにいたのであいつなりに心配してくれていたんだろう。
脱衣場で服を脱ぐとファレノが軽く怪我をした所を診てくれた。
後で追加でお祈りをしてくれることになった。
湯船にお湯を張ることは出来なかったので大きめの盥にお湯と水を合わせ良い温度にしたものに布を浸すと身体を拭くように渡された。
今も厨房ではお湯を沸かしてくれている。皆に迷惑を掛けてしまって申し訳ない気持ちになりながらありがたく身を清めていった。
後で知ったがお湯はベックが沸かして運んでくれていたらしい。自分より小さい奴はさっさと寝ろと言い受け持ったということだった。
ベック見直したよ、ありがとう。
何度かお湯を変え身体から汚れがすっかり取れると自然と気分も上昇していた。
盥の湯を捨てて取っておいた綺麗なお湯で盥を流しておく。
粗方片付けた後風呂場から出ると脱衣場ではファレノが待機していた。足元にはクーさんの姿があり、きっとナキアという悪魔が現れたことなど話していたのだろう。
手早く着替えを済ましファレノ達の元へ向かうと丸椅子を譲られたのでありがたく腰掛けた。
ファレノは私の額へ手をやると早速治癒の祈りを始めた。
薄く張っていただけの皮膚に暖かい感覚が集まっていくとその厚みを増し傷跡がほとんど目立たない状態にまで治してくれた。
手足の擦り傷も同じ要領で綺麗になった。
ファレノの治癒の祈りの効果が明かに増していたのは修道院で学んだ結果なのだろう。
礼を述べると軽く頷きを返してくれる。
それからファレノは何度か言い淀みながら、あのおじさんについて聞いてきた。怖ければ話さなくて良いとも言ってくれたがこの安心出来る場所にいて、彼が側に居るのに恐れるものなんて何もない。
私に分かる範囲のことを話し、ファレノの指輪に助けられたこともしっかり伝えた。
「役に立って良かったよ。思ってたより効果の範囲が狭かったのはがっかりだけどね。」
「ナキアが殊更隠れるのが上手かったんでしょうけどネ。下位の悪魔なら近寄れない程度には聖なる力は感じますカラ。私からすれば何処で手に入れたのか気になるところデスが。」
ファレノは私の両手を握り祈るように額に近付けたままで肩を落としていた。
「その奉仕活動はもう終わったんだよね、サニー。次は教会の手伝いとかどうかな?以外と細々した作業があるんだよ。」
それも良いかと気持ちが片寄るが、そう言えばと気が付いた。
「私借りていた作業服返していない、と言うか来て帰って洗ってから返すつもりだったから…どうしよう」
胸元から裂かれて前面が真っ二つになっている上に血の染みが付いている。これは縫って補修したところで雑巾にしかならなさそうだ。
「それは俺も一緒に行って謝ろう。例の常連客が居たらちょっと別で話したいことがあるしね」
という事で後日ファレノと一緒に『マヨイ亭』に行くことにした。一通り話をして落ち着いたので今日はもう解散しようということになり、部屋の前まで静かに移動した。
ドアに手を掛けるがどうにも別れがたく、移動中に考えていたことを思いきってファレノお願いしてみることにした。
「ファレノ、今日は私と一緒に寝てくれない?」
久し振りにさ、なんて口に出してから添い寝して欲しいだなんてあまりに子供っぽかったかと恥ずかしさが込み上げてきて、やっぱりなしおやすみ!と逃げるようにクーさんを抱えて部屋に戻ろうとすれば、まとめて抱え上げられてそのまま部屋の中へ
ファレノは私達を抱えたまま器用に二段ベッドの梯子を上り寝かせてくれた。
彼は一旦部屋を出て戻ってくるとその手には毛布と枕があった。
体格の良くなった彼と背が多少伸びた私が一緒のベッドに並んで寝ると少し窮屈だったが向かい合うようにして眠りに付いた。
間にクーさんが挟まってきたが気にならなかった。
久し振りに感じるファレノの体温に心から安らかな気持ちになれた。
その日は神様への報告をうっかり忘れていたが許して欲しい。
「ん、んう、う」
あ、何か声が出てる。私寝言喋ってるじゃない恥ずかしい、と夢現に思っているとぬるりとした感触が下半身から伝わって来る。
その生温く不快な感覚に眉を寄せるが、はたと覚醒した。こ、これは、所謂おねしょというものでは?!
隣ではファレノが寝息をたてている。
わ、わあ、よりによって、今日漏らしちゃうとか私気が緩むにも程がある。感触からして量は大して出ていないのが幸いか。
動悸が激しい。クーさんは見える範囲にはいないが速やかに処理しばければ、ファレノにバレる前に、一刻も早く!
しかし焦っているときこそ慎重に動かなければと自分に言い聞かせ毛布をそっと捲り上げれば何故かそこにはクーさんがいた。よりにもよって股間に、だ。くっ
そのもふもふに手を伸ばしたところで興奮に濡れたバリトンが聞こえた。
「やっとデス。待っていましたよこの時ヲ」
鼻先をそこに埋めたまま話す彼は、下着の隙間から強引に頭を突っ込むと舌を這わし太ももに垂れた汚れを嘗めとり始めた。
「ちょっちょ、クーさん!?こら、汚い、あっ」
あまりに勢いが凄くて下着の生地が悲鳴を上げ、動きやすくなったのかクーさんは汚れの発信源を無遠慮に嘗め始めた。
温かく嘗め回る舌に初めて翻弄される感覚に、熱が集まっていくのが分かったがどうしようもない。
目の前が明滅し切ない苦しさにファレノの腕にすがりついてしまう。
彼が目を覚ましてしまったらどうするのかなども考えられずに解放されたい一心だった。
「サニーから離れろ」
耳元でファレノの声がしたと思ったら下半身が自由になった。中途半端に煽られた熱が発散される事なく体内で解放を求め渦巻いている感じがして苦しい。
「ファレノ何を怒っているのですカ?私は約束通りに頂いているだけデスヨ」
「それにしたって、サニーは何をされているのか自分の身体も状態すら理解していない様子だが」
ファレノの胸に顔を埋めながら何とか熱の奔流をやり過ごそうと下腹に力を込める。徐々に高ぶっていた気持ちが落ち着きを取り戻し、どういうことかと問うようにファレノを見上げた。
次いでクーさんの方に目をやれば彼は何事もなかったかの様に私の足元に澄まし顔でお座りしていた。
流石にこのままここで話を続ける訳にはいかないと、明日ファレノが一度修道院の方へ帰り予定を確認した後で必ず昼には一旦こちらに顔を出すという事で話が着いた。
その時に色々教えるのでクーさんはそれまでは余計な事はするな触るなと念を押されていた。
汚れて破れた下着は洗って雑巾にすることにしてファレノが洗面所で布を濡らしてきてくれたのでそれで拭いて着替えてから改めて眠りに付いた。
クーさんは今日は外で寝ると言い部屋を出て行ってしまった。目が爛々と輝いていたので本当に寝るのかは不明だ。
再びファレノと向き合うと私は目を閉じる。
自分の中のあんな熱があるだなんて今まで全く気付かずに生きていた。もしかしたらあれも成長の一部なのだろうか…明日教えてもらえるので明日を待とう。
何となくファレノに手を伸ばすとそれに気付いた彼は手を取り繋いでくれた。
上手く寝付けずに暗闇に慣れた目でファレノを見詰めると黒い瞳を優しく細め微笑むと早く寝ようと言い眠りに付いた。
私もそれに誘われるようにして今度こそ夢も見ずに眠った。
「なんで、お前ら、また一緒に…おい!ファレノお前こっちで寝てても良いのかよ。起きろ!」
「え、本当だファレノがいるぅ。相変わらず仲良しだねぇ」
翌朝いつもより良く眠れた私は久し振りにスッキリと目覚めることができた。あんなことがあったというのに身体が軽い。ファレノの癒し効果だろうか。
「おはようベック昨日はありがとう。心配かけてごめんなさい。おはようオリバー。オリバーも昨日は着替えありがとう。助かったよ」
隣から緩慢な動きが伝わってくる。相変わらず寝起きが悪いらしいファレノは暫く目を開けたまま呆けていた。
「おはようファレノ、朝だよ。修道院に戻らないと怒られちゃうよ」
と言えば勢い良く起き上がって朝の挨拶もおざなりに慌てて帰っていった。
それから朝ご飯が終わった頃に元気一杯に外から帰って来たクーさんが泥だらけだったので、裏庭に直行し冷たいと騒ぐ彼を無視して水で丸洗いにした。
そのついでに昨夜の下着も洗おうとしたらクーさんが咥えて離さなくて引っ張りあっている内に雑巾にも使えないほどのぼろ布になってしまったのでそのまま渡してしまった。
出来れば埋めるなどして処分して欲しい。
今日はこれと言った予定がないのでシーツを洗うことにした。大物は時間がかかるので昼までの時間潰しになるだろう。
天気が良くて助かる。
そして昼下がりにファレノが孤児院に戻ってきた。
「ごめん、遅くなった。変わりに今日は夜までここに居ても良いことになったからゆっくり出来るよ」
「お帰りファレノ。じゃあ晩ご飯も一緒に食べれるってこと?やった」
笑顔で頷かれるのを見て私も笑顔になる。ファレノとご飯を一緒に食べるのはいつ振りだろうか。嬉しいなあ
「えっと、部屋で話すよね?」
「そうだな、ベックとオリバーはいつ頃帰ってくるのかな」
部屋に向かいながら話をする。ただそれだけのことが楽しい
「二人とも晩ご飯の時間の少し前かな。あ、途中でシーツ取り込みに行きたい」
「わかった。クーさんは?」
「うーんどこだろう。最近お昼はオリバーや他の子達に付いていたりするから。もしかして実は結構子供好きなのかな。」
「ん、それはどっちの意味で、いや、何でもない。忘れてくれ」
どっちの意味とは何だろう?子供好きは子供好きなんじゃないのかな。
部屋に着くと以前ファレノが使っていた方のベッドへと二人で上がりカーテンを閉める。
剥き出しの床板に並んで座るとファレノが持ってきていた本を横に置いてから話し始めた。
「サニーは人間が大人になると赤ちゃんが作れるようになることは知っている?」
「勿論、出産に纏わる職場もあったもの。大人の男女が結婚するでしょ、で神様が女の人のお腹に赤ちゃんを授けるんだよね」
「う、うーん…その授ける方法は聞いたことある?」
「一緒に寝たら出来るんだよね」
これは、最初の最初から説明が必要か…などと呟きが聞こえ咳払いをしてファレノが一冊の本を開きながら教えてくれた。
「という訳で、ある程度身体が大きくなると今度は子孫を残す為に生殖器の成長が始まるんだ。昨晩サニーがお漏らしだと思ったそれはおしっこじゃなくて、赤ちゃんの種だったんだよ」
は~~~~~、人間興味深い。神秘神秘。
「じゃあ私ももう子供が作れる様になったってこと?人間って凄いね。魂を運んでばっかりじゃ分からなかったことだよ」
「まあ、大まかに話すとそうなるね。次にこれを見て。これから先、寝起きとか何かの弾みでこの図みたいな状態になることもあると思うけど焦ることはないからね。自然現象だから。ある程度時間が経つと治まるよ。
ただ女の子の前でこの状態になるのは場合によってはちょっと不味いから隠した方が無難かな」
ほ~。この図のこれも随分と私のと違っているけど育つとこうなるっていうことなのかな
あ、ということは
「ファレノも朝こうなるの?」
「な、なるよ。寝ている内に正常に動作するのか試しているそうだよ。
それでクーさんが前に言ったいた約束の話しになるんだけど、この赤ちゃんの種が命の元とも言える。それを定期的に、欲しいということだから、その、昨晩のような状態で提供するか他の方法で渡すかすることに、なると思う」
早口で捲し立てる様に答えをもらい、ゆっくりと頭が理解する頃には今更ながら大変な約束をしてしまったことに気付き血の気が引いていくのを感じた。
「ど、どうしよ、ファレノ。あれ、大変だよ。なんか、ぐるぐる~ってなってぶわ~って訳わかんなくなる。む、無理」
「あ、ああ。なら、ええと直接だと辛いなら自分で出したものを提供することにしたら」
「じ、自分で出すってどうやって、あれって自分の意思で出せるものなの?昨日のだって私出した覚えがないんだけど、何か勝手に出てた、と言うか気付いたら出てて舐められてた?」
ファレノは腕を組んで黙ってしまうと頻りに深呼吸を繰り返している。凄い眉間に皺も寄っている。そんな覚悟がいるような事を言われるのだろうか…困らせて、しまっているのかな
「ファレノ、無理ならクーさんと相談してどうにか出来ないか話してみる」
「いや、悪魔との約束を破るのは不味い。あの状態で悪魔と言えるか分からないけど、少なくとも約束した時点では悪魔寄りだったんだろう?最悪の場合サニーの魂が危ない事になりかねない。だから、だから」
だからと繰り返し、真っ赤になって苦悩の表情を浮かべたファレノは絞り出すような声で続けて言った。
「俺が、その出し方を教える、よ」
「わ、ありがとう助かる。それで、どうすれば良いの?」
解決策があるのならと勢い込んで聞けば、顔面を片手で鷲掴みにされた。ちょっと待って欲しいらしい。
サニーももうすぐ十一歳だもんな。成長したな。なんてどこのお爺ちゃんかと思うような独り言が聞こえてきて思わず笑ってしまった。
顔が解放されファレノを見ると覚悟を決めたとそんな表情をしていた。
「じゃあ、俺の足の間においで。そう俺を背もたれにして座って、」
※ ―――割愛―――
そこから先の記憶は曖昧だ。
いや、結果を言えば出し方は分かったし、自分の身体の反応もまじまじと見てしまった。
凄い、人体の神秘を垣間見た。
それはそうと、最初のうちは少ないが種はこれから毎日作られるようになるからたまに出せば良いと言われた。何かの器に出すようにしてクーさんに渡せばいいとも。
それで、出せるようになると大抵の人は一人になった時なんかに出している。作法として他の人にはそういう姿は見せないとも言っていた。
じゃあファレノも一人の時に出してるの?と聞けば一瞬固まったあとで頷きが返って来た。いつからしてるの?と聞けば顔面を片手で鷲掴みにされ答えてはくれなかった。
そして何にでも好奇心を持つのは良いことだけど、デリカシーを身に付けなさいと懇々とお叱りを受けた。踏み込み過ぎて申し訳ございませんでした。
その後は一旦シーツを取り込みに行き、ファレノが持ってきていた本を読ませてもらい今度は主に女性の身体や仕組み、現象などについて学び、晩ご飯を一緒に食べると彼は覚束ない足取りで修道院へと帰っていった。
今日は実に有意義な時間が過ごせたと思う。
色々と知ってから思い返せば、あの時私の腰に当たっていたあれは場所的にファレノのあれなんだろうな、とそれに思い当たってしまった時は複雑な気持ちになったりしたけど。
やはりと言うか私とは質量が違う気がした。
前に一緒にお風呂に入っていた頃は私とそんなに変わらなかったと思うのに、離れている間にありとあらゆる部分が成長したんだな、なんて思ったりして
本に載っていたが、私も今後は男として髭が生えて声が低くなって腕や足、体から毛が生えてくる様になるのかと思うとそれも楽しみだった。
筋肉も付いてきっと格好良くなるのだろう。ふふふふふ
とりあえずクーさんには直接的にではなく間接的に渡すことを提案しようと心に決め、いつ話すかタイミングを窺うことにした。
ファレノ哀れ回
※割愛した部分はなろうR-18版、ムーンライトノベルズの方でこの話と同日同時間に予約投稿しています。
こちらはファレノ目線で書いています。




