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裏切り上等  作者: 夏風
第1章 クロマフ事変
10/34

episode10 浄化作業

申し訳ありません。

あまりにも目まぐるしくて、作成が遅々として進んでおりませんでした。

今後も時間を要することを思いますが、よろしくお願いします。

 私は今、王都から離れた場所にある村を訪れている。

 この村では半月で多くの人間が病に倒れる事態となっている。

 どうやら、主たる水源が何かに汚染されており、その汚染された水を飲んだことが原因で体調を崩してしまっているようだ。


 村での異変に対処するため動く私の隣には、とても眉目秀麗な男性がいる。

 クロマフ国で若くして宰相補佐を務めるイサイアスだ。

 私は割り当てられた執務室で報告を聞き、すぐに要請に応じたわけなのだが、今回は護衛の騎士だけでなく、宰相補佐を務めるイサイアスも同伴している。

 てっきり村に到着したら、別行動かと思っていたのだが、村長からの聞き取り、井戸の調査、病人の浄化、それら全て常に行動を共にしていた。


「あの……宰相補佐。もしかしたら、感染するかもしれませんので外でお待ち頂いた方が」


 神聖力による浄化で村人の病の根源を取り除いていく。

 本当に病気だったらお手上げで、私の神聖力を生命力に変換し、流し込むぐらいしか手立ては無いが、ここに来る前から思っていた通り、村人の体調不良の原因は瘴気によるものだった。

 水が瘴気に侵されてしまったためにこんな事態になったのだろうが、原因が瘴気であれば、私にとって対処は楽だ。


 それでも、村人の中に入り込んだ瘴気が呼吸などに合わせて排出されているため、建物の中は結構な濃さの瘴気が漂っている。

 私は纏っている神聖力で問題無いけど、普通の人には大変息苦しいだろうし、辛いものがあると思う。

 実際、イサイアスと護衛騎士は顔色が悪い。


 それでも、イサイアスは頑なに私から離れようとしなかった。


「我々はあなたに頼るばかりですからね。せめて、その一欠片でも労苦を知るべきだと思いまして」

「……別に嬉しくありませんよ。私の仕事を増やさないでくださいね」


 ついつい、心にも無いことを言葉にしてしまい、私は後悔を覚えた。

 だって、仕方ないじゃない。まさかそんな風に思ってくれているなんて、考えてもみなかったのだから。


 私は彼らの体調がこれ以上悪くならないようにするため、さっさと始末をつけようと神聖力を建物内全域に展開し、一息に瘴気を浄化する。

 まったく……予定していたよりも多くの神聖力を消費してしまった。

 イサイアスからお礼を言われ、顔が熱くなった気がしたけど、気のせいに違いない。



 村の応急処置が終わり、私たちはいよいよ原因の根源を取り除くため、村長の案内の元、村の水源になっている湖へと来ていた。

 水は濁っておどろおどろしい色をしており、周りの草木も萎れて元気がない。

 そして、やっぱり臭い。


「ヘスティア嬢、やはり、魔物の影響か?」

「はい。間違いありません」


 何故かここにもイサイアスはついて来ていた。

 イサイアスは魔法の心得があるため、多少なりとも戦えるとはいえ、積極的に矢面に立ってよいという話ではない。

 それに人が瘴気にどれだけ耐えられるかは、先天的な体質と純粋な体の頑強さが影響する。

 詳しい体質がどうなのかはわからないが、少なくとも彼は騎士のようにしっかり鍛えているわけではないだろう。なので、イサイアスの他に護衛騎士にも防壁を展開し、瘴気から守っている。

 本命を前にあまり消耗したくは無いのだが、彼らが瘴気に侵され、動けなくなった方が面倒なことは想像に難くない。


「宰相補佐、頼んでいたものをもらえますか?」

「わかりました」


 イサイアスからガラス球を受け取る。

 滑らかな球体のそれは濁りも無く、透き通っていてとても綺麗な代物だ。

 訝しげにこちらを見るイサイアスの視線からは、『これで何をするのか?』という疑問が聞こえてくる。

 ふふふ、そう心配しなさんな。このヘスティアに任せなさい。


 私はガラス球を両手で包み込むと、胸の前に置き神聖力を込める。

 俄かに神聖力が宿り、ガラス球が明るく輝き出した。

 それを周りから感嘆の声が漏れるが、そんなのは無視して私は神聖力を帯びたガラス球を濁った湖の中へと投げ入れた。


「なっ、なんてことを! あれは希少な物なんですよ!」


 私が湖に投げ入れたガラス球は、魔力と親和性の高い希少鉱石を溶かして作られたものだ。

 今回の対処にあたり、汚染の浄化と原因の排除に有効なので持って来てもらった。

 勿論、私もあれが価値のある物だと言うことは十分わかっているので、込めた神聖力を利用して引き戻す気でいるのだが、狼狽した宰相補佐がうるさい。

 ちゃんと説明していなかった私も悪い気はするけど。


「わかっています。ちゃんと戻ってきますから安心してください。それよりも――」


 ――「標的のお出ましですよ」と、私はにこやかに彼らに言った。

 私がガラス球を投げ入れた箇所を中心に広がった波紋が治まると、水面が荒々しく波立ち、水中から今回の異変をもたらした原因、黒い粘液状の魔物『ブラックミュカス』が姿を現した。

ご覧いただき、ありがとうございます。

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