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愛は貫くためにある  作者: 愛原 夢音
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シンデレラの隠れ家

シンデレラの隠れ家は、一軒の喫茶店だった。


ふらりと立ち寄った喫茶店『テリーヌ』のカウンターに、一人の青年―平田守は座った。

「お待たせいたしました。ご注文は…」

守は、声をかけてきた女性店員を見た瞬間、目を見開いた。

二十代前半と思しき黒髪セミロングの女性店員に、守は見覚えがあった。

「コーヒー、ブレンドで。あと、サンドイッチ頼むよ」

「はい、かしこまりました」

そう言って女性店員は、頭を下げてぱたぱたと小走りで厨房へ向かった。

「運命のいたずらか、それとも…」

守はその女性を目で追いかけていた。

「固く結ばれた赤い糸か」

守はカウンターに置かれているメニュー表を見ながら、そっと呟いた。

ぱたぱた、と足音がしたので、守は周りをきょろきょろと見回した。

すると、「お待たせいたしました」と声がした。

守の目の前に、コーヒーとサンドイッチが並べられていく。

「伝票、置いておきますね」

「ありがとう」

「ごゆっくり…」

女性店員は再び、サンダルでぱたぱたと音を立てて厨房へと消えていった。

女性店員は、守のことには気づいていないようだ。

白い薄手のパーカーにズボン、足元はぺったんこのオレンジのサンダル。

お洒落の『お』の字も出てこない。

二十代といえば、多少はお洒落をしたい年頃。

ファッションに興味がある人も少なからずいるはずだ。

そこまで詳しくなくても、可愛い服を着たいという気持ちはあるはず、なのにー。

守の前に突如現れたこのシンデレラは、お洒落な服を着る細身の可憐な女性ではなかった。

「先が思いやられるな」

守は溜息をついた。


シンデレラの名は、星川美優。


十五年間探し求めていたシンデレラは、目の前の王子様にまだ気付いていない。

守はあの女性店員が美優だと、すぐにわかった。

十五年たっても、美優の面影は変わっていなかった。

「さて、これからどうするか」

守は半分しか残っていないコーヒーをごくりと飲み干した。

「見つけるのに、十五年もかかるとはな」

その呟きは、静寂に消えた。



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