07 守護騎士様は欲しいものを手に入れたようです
その後、集団気絶については、ミリアからガルド達に説明がされた。
また、ガルドにはきつくメリッサに近づいてはならないと説教のおまけつきではあったが。
この事件で、ある意味ストレス発散をしたファニスは、フィーニスがメリッサといても我慢がちょっとだけ出来るようになった。
ただし、ちょっとというのは本当にちょっとだったので、魔物討伐や団員達への訓練での発散はすぐに再開されることになったのは言うまでもない。
その後、メリッサは準聖女の役目を終えた20歳の歳まで、ファニスとは清いお付き合いが続いていた。
お互いにというか、ファニスがメリッサを大大大好きなことは明白だったが、メリッサもなんだかんだでファニスを慕っていることはまるわかりの状態だったが、かつての告白の続きを口に出来ないでいたのだ。
メリッサが準聖女の役目を終えたことで、そんな二人の関係を変える切っ掛けになったのだ。
メリッサが、準聖女ではない自分には護衛騎士は不要だと考えて、ファニスに言った言葉が発端となった。
教会を出て実家に帰るか、家を借りて一人で暮らすか考えながら荷造りをしていたメリッサは、ファニスに言ったのだ。
「お兄ちゃん、今までありがとう。これからは副団長のお仕事に専念できるね。もう一緒にいられないと思うと寂しいなぁ」
メリッサの何気ない言葉を聞いたファニスは言葉を失っていた。
―――えっ? これって別れの言葉なのか? そ…そんな……。嫌だ、メリッサと離れることなんて絶対に嫌だ!!
そんなことを思っていたファニスは、何もかもかなぐり捨てるかのようにして、必死な思いでメリッサを抱きしめていたのだ。
そして、驚くメリッサを置き去りに思いの丈を情熱的に口に出していたのだ。
「メリッサ!! 俺を捨てないでくれ!! 愛している! 結婚してくれ! これからもメリッサの傍に居たいんだ。メリッサを愛しているんだ!! 幸せにすると誓うから、だからお願いだ。俺と結婚してくれ!!」
そう言って、必死にメリッサに縋り付くようにして言ったのだ。
まさかこんなことになるとは思っていなかったメリッサは、全身が熱くなるのを感じていたが、恋人を通り越してプロポーズをされたことに頭が付いて行っていなかった。
ノーリアクションなメリッサに焦ったファニスは、更に言葉を続けていた。
「好きだ好きだ! 大好きだ。メリッサと初めて会った時から好きだった。俺の天使! 俺だけのメリッサ! お願いだ、俺と一緒になってくれ。愛してる、愛してるんだ!!」
まさか、初対面の時から好意を持たれていたとは思いもしていなかったメリッサは、目を丸くしていたが、それでも激しいまでの想いが嬉しかったのだ。
後ろから抱きしめてくるファニスの両手に自分の手を添えて、消え入りそうな小さな声で言ったのだ。
「お兄ちゃん……。うれしい……。私もお兄ちゃんが大好きだから……。今までごめんね。恥ずかしくて気持ちを伝える努力をしなかったこと……。お兄ちゃんの好意に甘えていてごめんね」
メリッサの口から初めて明確な好きという感情を聞いたファニスは、昇天してしまいそうなほどの喜びを噛みしめていた。
しかし、のんびりしていては、また邪魔が入ると考えたファニスは、メリッサと向き合うような状態になった後に、少し身を屈めた状態になっていた。
そして、メリッサの瞳を見つめて言ったのだ。
「メリッサ。愛している。俺と結婚してください」
真剣な表情のファニスからのプロポーズにメリッサは、瞳を潤めた後に花のような可憐な微笑みを浮かべて頷いたのだ。
「はい。私をお兄ちゃん……ううん。ファニスさんのお嫁さんにしてください」
「ああ。世界一幸せなお嫁さんにしてあげるから、覚悟していなさい」
「えへへ。それじゃぁ、私は、ファニスさんを世界一幸せな旦那様にしてあげますから覚悟してくださいね」
そう言って、お互いに微笑みあったのだった。
本来なら、ここであっついキスをぶち込めばいいものなのだが、長年のプラトニックラブの所為で、ファニスは、メリッサの額にキスをするだけで済ませてしまったのだ。
メリッサは、唇へのキスを予想して瞼を閉じていたのに、まさか額にキスされるだけでファニスが離れてしまったことに可愛らしい唇を小さく尖らせていたが、それに気が付いたファニスは、苦笑いを浮かべていたのだ。
そんなファニスの心の中は色々と大変なことになっていたことに気が付くメリッサではなかったのだった。
因みにその時のファニスの荒れ狂う感情は以下の通りの色々と紙一重な感じであった。
―――うぉおおおお!! メリッサが俺の嫁に!! もう、妄想の嫁ではなくリアル嫁!! くっはぁーー最高だ!! 長年メリッサに手を出さないようにしていた弊害で思わず額にキスをしてしまったヘタレな俺を殴り飛ばしたいところだが、残念そうに口を尖らせるメリッサは最高に可愛い!! はぁ……、メリッサが可愛すぎて心臓が持たん!!
そして、ファニスのずば抜けた行動力もあり、メリッサは教会から実家に戻るのではなくファニスが借りている部屋に引っ越すことになったのだ。
更には、翌日には婚姻届けを提出し、新居も購入していた。
余りの早すぎる展開にメリッサは驚きながらも、「ファニスさんは、行動力があって素敵だわ」とぽやぽやしたことを思っていたので、これはこれでお似合いなのかもしれない。
そして、婚姻届けを提出した一か月後、身内だけの式が執り行われたいた。
真っ白なウエディングドレスを身に纏ったメリッサは、幸せそうに微笑みながら、同じく白い騎士服に似た衣装に身を包んだファニスに言ったのだ。
「ファニスさん。私をお嫁さんにしてくれてありがとうございます。私の傍にずっといてくれてありがとうございます。これからもおばあちゃんになるまでずっと一緒にいてくださいね」
美しい微笑みを浮かべたメリッサからの言葉にファニスは、輝かしいばかりの微笑みを浮かべて言ったのだ。
「ああ、メリッサ、愛してるよ。生まれてきてくれてありがとう。俺を傍に居させてくれてありがとう。俺を選んでくれてありがとう。死ぬまで……いや、死んでも、生まれ変わってもメリッサとずっと一緒にいるよ」
「はい。約束です」
「ああ、約束する」
そんな二人を見ていた両家の家族たちは同時に思っていた。
―――愛が重すぎる!!
そんな家族の少々引きつった表情など全く気にしていないファニスとメリッサは、祝福の中で初めて唇を重ねていた。
その後、メリッサと結婚したことで表面上は本来の冷静さを思い出したように振舞うファニスは、憧れの副団長様として見られていたが、その内情を知る者たちは、いつファニスがメリッサ馬鹿を表面化させるか恐れていたがそんなこと全く気にしていないファニスだった。