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誤字脱字があれば感想にて教えて頂けると嬉しいです。



………ア?




唐突に。


本当に唐突に。


今までただ命令された通りに、館を徘徊して、生物がいれば襲い、思考するなんて出来なかったのにたった今、|ワタシは私だったと認識した(・・・・・・・)。


ワタシ…は……私は、此処でワタシになる前に普通に生きていた。


普通に結婚して子供もいて、それから子供が独り立ちしてからは夫と生活して、と大まかに思い出せるが、人物名や詳細を思い出すことは出来ない。

ただ年老いて死んだ記憶はあるから、まあ輪廻転生したということで、今は横に置いといて現状を把握しようと体を見る。


手→なんか鋭い爪がある5本指(子供がやっていたゲームの武器みたい)

足?→なんか黒いモヤ?あ、でもなんか形を変えれるみたい(現在蛇みたいな形)

顔→ちょうどよくあった姿見に映るのは……ワ~前世で憧れた美白だ(棒読み)ってか骨(明らか人間サイズじゃない)


目玉はなくなんか黄色い丸い光が浮いてるのは恐らく瞳孔のようなもの?(視線を動かすとキョロキョロするし)

そんなしょうもないことを考えて、最も直視しなければならない現実から目をそらそうとするも、さっきから視界に入っている周りの様子が否応にも現実を突き付けて来る。


薄汚れた廊下は明りが蝋燭のみなので薄暗い。

長年人が住んでいないかのうような荒れ具合と、惨劇を思わせるような壁や床にある血痕&傷。


そして鏡に映る化け物(認めたくないが私)。


あれ?でも此処って見たことが…え~っと……あっ息子がやってたPCのホラーゲームの屋敷とよく似ている、かも?

私ホラー全般とかグロイのが昔から全部駄目なんだけど、息子がねリビングでそれ系統のゲームをするのよ。

料理中とか必然的に私も少し見る事になってね、確かそのゲームの中にこんな場所と、化け物が出て来た筈なのよね。


まだ自分の姿がぐちゃどろなグロイ姿じゃないだけマシだけど、やっぱりどう見ても可愛くも格好良くも無い姿にがっかりする。



…―……――…



ふと  廊下の奥から  かすかに  本当にかすかにだけど    声が。



その声が聞こえた瞬間、体が動き出していた。

走るというより滑るというような、前世では有り得ない動きと速さなのに違和感無く体を動かす。


速く、速く、速く!!

脳内に浮かぶ屋敷内の間取り図にも疑問を持つことなく、ただひたすらに声が聞こえた場所に急ぐ。

だって聞こえたあの声は……!



そして近づいている所為か段々大きく聞こえて来る声、いや悲鳴に確信する。



(やっぱり子供の声!)


廊下の曲がった瞬間視界に飛び込んできたのは、ぐちゃっとした肉塊のような化け物の手に足を捕らえられた女の子と、必死に助けようと女の子の手を引っ張る男の子二人。

気が付けば男の子達の横を通り過ぎ、女の子を捕らえている手と化け物本体を爪で切り裂いていた。


グギャアアアアァァァァ!!


おぞましい声を上げながら、爪が触れた時は実態があった筈なのに、肉片も残さずモヤのようになって消え去る化け物。


考えるよりも体が動いてしまったけど、あの生物?を殺したことに対しては特に何も思わない。

ただ、うげぇ気持ち悪ぃぃぃいいとか、あんな気持ち悪い死体が残らなくて良かった、とかそんなことしか浮かばない。

……どうやら体だけでなく、思考も前世とは少し違ってしまっているのねと混乱することもなく、あっさり受け止めて子供達を振り向く。


男の子は私に引き攣った顔を向けながら、女の子を立ち上がらせようとしているけど、女の子が足を怪我しているのか立てないのと、男の子自身も震えているため上手くいかないみたい。

あともう一人の男の子は。


「やあああああ!」

(!?)


木材を握りしめ私に振り下ろすもう一人の男の子。

しかし渾身の力が込められた木材は私の体をすり抜け、むなしく床にぶつかる。


「くっ!やぁっ!このっ!」

(…)


男の子は諦めずブンブン私に木材を振って来る。

痛くも痒くも無いけど、どうしたらいいのか悩んでいると、後方からさっきの化け物と似た気配が近づいて来るのを感じる。


ひょい×3

「ぎゃっ!?」

「うわぁっ!?」

「きゃあああっ!」


他の子を守ろうと必死な男の子には悪いけど、説明する暇はないので爪で傷つけないよう気にしながら子供達を抱きあげる。

私が大きいのもあるけど子供達は小さいので、三人を難なく抱っこして、恐らくこの館で化け物が入ってこないだろう部屋へ急ぐ。


子供達がすっごく悲鳴を上げてるけど気にせず、脳内に浮かぶ館のマップに従い目的の部屋に入り、バンっと扉を閉める。


…ずる……ぬちゃぁ……ずるぅう…ぬちゃぁあ…


部屋に近づいてくる、何かを引きずるような音と粘着質な音が扉越しに聞こえる。

子供達もそれに気が付いたのか、恐怖により引き攣った表情を浮かべながら、身を固くしたり口を押さえたりしている。


…ずるぅうぬちゃぁあ……ずるぅ…ぬちゃぁ……… (ずる)…… (ぬちゃ)


部屋の前から遠ざかる音。

一か八かだったけど、記憶が合っていてよかったと一安心する。


私だと気づく前のワタシもそうだったけど、この部屋を含め、いくつか入らないよう命令された部屋がある。

恐らくイレギュラーな私以外の化け物は入ってこれないと考えたんだけど、正解だったようだ。


扉に向けていた視線を子供達に向けると、こちらも危険が去ったことに少し安堵したようだけど、私の視線に気づいたのかまた身を固くする。

扉から離れ、部屋の中央に置かれた古めかしいソファ(ちょっとホコリっぽいけど我慢してね)に子供達をそっと座らせる。


私の行動に子供達は驚いたようだけど、じぃっと見つめる私をとりあえず、危害を加えないのだと分かってくれたのか、女の子と気弱そうな男の子は戸惑ったように、見つめ返してくれる。

ただ一人だけ、ツリ目の男の子はずっと私を睨んでいるけど。


私を睨んでいる真ん中のこの子はさっき果敢にも私に攻撃してきた子だ。

自分も怖いだろうに、しかしその手は両隣の子の手をしっかり握っており、何かあればすぐに逃げ出せるように私の動向を見ている。


男の子の様子に思わず笑みがこぼれる(骨だけど)。


二人を守ろうとしている男の子の頭に、そっと人差し指だけ近づける。

びくっと体を震わせ、目を見開く子達に怖がらせてごめんねと思いながら、ツリ目の子の頭に人差し指を…………鋭い爪で傷つけないよう、乗せて動かして頭を撫でる。


今度はさっきと違う意味で目を見開く子達。



よく頑張ったね 小さいのに他の子も守ろうとするなんて偉い! だけどもう大丈夫だよ



と伝わるか分からないけど、そう念じながら撫でているとツリ目の子の眼からポロっと涙が。

そして今まで我慢していたのだろう、決壊したかのようにボロボロと涙を流し、声を上げて泣き始めるツリ目の子。

その様子に他の子達も泣きだして、部屋中に響く泣き声を聞きながら三人纏めてぎゅっと抱き締める。

すると更に泣き声を大きくする子達に、化け物が来ないとはいえ、さすがに体力を余計に消耗させるわけにはいかないので、慌てて頭をまた撫でたり背中をさすったりして落ち着かせようとする。



しばらくして



ようやく落ち着いたのか涙を止めてくれたのはいいけど、女の子はまだ少し引きつけを起こしたようにしゃくりあげている。

何か飲み物をと周りを見渡すが、からっぽの水差しっぽいガラスや廊下程ではないけどボロい内装の部屋には、蛇口なんてものはない。

トイレはあるけど不衛生なので論外。


まあ…あっても飲める水が出ないとはおもうけど……子供達のど渇いてるだろうし、どうしよう。


どこかに安全な水が飲める場所がないかと脳内に地図を浮かべるが、無し。

食堂とか調理場とかあるみたいだけど、記憶の中のそこは血みどろな場所で水なんてなかった筈だ。


こんな非現実的な場所なんだからいっそのこと、魔法とかあったらいいのに!水よ出ろ~ バシャア と…か……?


何か液体のような物が落ちたような音に全員固まる。

そっと視線を天井に向けると異常なし。

次に床に向けると、カーペットに何かが滲み込んだような跡。


え~っと……水よ出ろ~? バシャア


今起こったことを説明しよう。

さっき見たいに念じたら、なんか空中に水球みたいのが出て、床に落ちた。

何を言っているか解らないだろうけど、私も解らない。

ほら子供達もぽか~んと口を開けてる!ってそうよ、これなら!?


カーテンのまだ汚れが少なそうな部分を切り裂き、部屋の隅でゴシゴシお湯で濡らして揉み洗い。(床が水浸しとか気にしない、お湯?念じたら熱くなった)

その布で机の上の水差しを出来る限り洗い、最後中を水で満たす。


飲ませて大丈夫か不安だから、念のため自分で飲んでみると……えっ美味しい!(舌が無いのに何故か味が分かる)

水道水のような味を予想していたら、スーパーで売ってる水ぐらいに美味しかった。

これなら大丈夫だろうとそっと子供達に水を差しだすと、やっぱり少し警戒される。

気の強いっぽいツリ目の子が先に飲むかな~と思いきや、女の子が水差しを掴むや躊躇なく、飲んだ!?


余程喉が渇いていたのかゴクゴクと豪快に飲む女の子を唖然と見る男の子二人。


「…おいしいっこれ、すごくおいしいよ!」

「ええっ!?」

「嘘だろ!?」

「本当だもん!飲んでみてよ!!」


そう言う女の子に圧され男の子達も恐る恐る飲むと、二人ともびっくりしたような顔をして、すぐに女の子同様に勢いよく飲みだす。

三人で分けると足りなかったみたいなので、水差しに水もう一度足してやっと落ち着く。

そろそろお互いについて話し合いたいところだけど……。


(どうしよう…)


どうやらこの身体は声を出すことが出来ないようで、試してみてもスーハー…と空気が出るだけで音が出ない。

まあ舌が無い時点で言葉を発せれないとは思ってたけど。

しかし筆記用具なんて無いし、そもそも此処の文字は日本語なのか解らないしと八方ふさがりな状況に頭を悩ませていると、ツリ目の子が話しかけて来た。


「お、おい!」

(?)

「お前は……なんで、俺達を助けてくれたんだよ…」

(いやぁ襲われてたの見たら、身体が勝手に動いたとしか)

「てかお前らってなんなんだよ!森で遊んでたら、気が付いたらこんな気味わりぃ所にいるしっ!」

(えっつまり拉致監禁?)

「もう、なんなんだよぉ、ここはぁあっ!ぅぇっ」

「ジョっジョナサン…」

「わたしも、お家に、帰りたいよぉぉ」

「シトラも…ぅうっ僕だって帰りたいよぉ」

「ひっくっんく゛ぅっナギぃっ」


先程ではないけどまた泣きだしてしまった三人。

どうにか現在の状況を説明したいけど、ジェスチャーじゃ限界があるしそもそも苦手だし…………そうだ!

さっきのように念じる、私の思っていることが声として子供達に聞こえるようにと。

確か声とか音は空気を振動させて相手に届くから、そんな感じで!(アバウト


『ァー…!?ウワッナニコノ声キモ!』

「「「!?」」」


ちょっまるでボイスチェンジャーにかけた変な声みたいのが出た!?なぜ!?


『ンン゛、モウ、少シ、アーあーあ~っよし!あっもしもし君達この声が聞こえる~?』

「なんだこれ、声がどっかから」

「…もしかして」

「えっと、聞こえるよ?」

『よかった!話してるのは私だよ~』


手をひらひらと振ると、あちこちに彷徨っていた視線が私に集中する。


「お前が…喋ってんの?」

『そう!それと流石にお前じゃ傷つくからやめてね』

「えっと、それじゃあなんて呼べばいいんですか?」

『あ~実はまだ名前は無いんだよ』


前世の名前?覚えてないんだよね。


『だから今はおばちゃんて呼んでね。でもおばさんはちょっとやめてね』

「おばちゃんって……女の人なの?」

『この体の性別は分かんないけど、心は女よ』

「自分の体なのにか?」

『そこはちょっと複雑だから、もっと落ち着いた時に話してあげる。さあいくら化け物が入ってこないからって悠長にはしてられないわよ!脱出するための会議をしましょう』

「かいぎってなぁに?」

『あ~、話し合いましょうってこと』


さあさあ、それじゃあまず此処がどういう所であるかから説明しましょうか。

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