私が私として出来ること(4)
「おい、どうしたんだ? いつもなら馬鹿みたいにうまいうまいって食ってるのに。なんか苦手なもんでもあったか?」
「へ? あ、いえ! 美味しいですよ。……って馬鹿みたいにってなんですか!」
みんなで食事をする大好きな時間だけれど、昨夜のことが妙に気恥ずかしくてどこか上の空だった私に遥が目ざとく気が付き声をかけてきた。
(ママがあんなこというから!)
そんな恨み言を思い浮かべても、そのことを伝えるわけにもいかなくて。
「あー……。まぁなんだ。別にそんな深く考えなくてもいいと思うぞ、昨夜も言ったけどお前はお前らしくやってりゃいいと思う。ほれ、俺のベーコン一枚やるから元気出せ」
「いえ、そのことはもう……ってそんな餌付けするみたいな方法で機嫌がよくなる程私は単純じゃないですよ! もらいますけど!」
まったく。誰のことで私がこんなに悶々としているのかも知らずにのんきなものです。それに私をそんな飼い猫みたいな扱いでなだめようとするのも不服です。こちとらサバンナで生活する孤高のライオンの如き誇りを持っているんですよ! ちなみにベーコンは美味しかったし少しだけ機嫌もよくなりました。
「はいは~い。いちゃいちゃしているとこを悪いんだけど今日はお店はお休みにしま~す」
もしゃもしゃとベーコンとパンを食べていると、黒がそんなことを言い出した。
「ん、何かあるんですか?」
口の中のものを飲み込んでから問いかけると、黒は苦虫を噛んだような表情になる。
「昨日向こうに戻って説明してたら主様がヒナを呼ぶようにってね」
「猫神の主さんが私を?」
ついこの間会ったばかりだけれど何か伝え忘れたことがあったなんて雰囲気でもなくて、多分階梯が上がったことに関係があるんだろうなぁ。なんてことを考えながら私はうなずく。
「分かりました。朝食を食べたらすぐに行きますか?」
「うん。そうだね、早いほうがいいと思う」
そんなことを話していると、遥が心配そうにこちらをちらちらと見ていた。なんだかその姿が飼い主を心配する子犬みたいで、すこしだけかわいい。
「そんなに心配しなくても多分大丈夫ですよ? 結構いい人そうでしたから……人じゃないですけど」
私がそう言うと、遥は別に心配なんかしてないとでも言いたげな表情になる。
「別に心配なんかしてねぇし。まぁ粗相をしないかは心配だけど?」
思っていたことをそのまま口に出してきて私は少しだけ吹き出しそうになる。
「粗相なんてしないから大丈夫ですよお母さん!」
「誰が母ちゃんだ!」
そのやりとりに釣られてミントくんとタイムちゃんもくすくすと笑って、席についた時に感じていた気恥ずかしさなんてどこかに消えてしまった。
それから朝食を美味しく全部食べると身支度を整えて希望郷に向かう扉の前に向かう。すると、その途中で遥が待っていた。
「どうかしましたか?」
「あー……なんだ、どんな時も自分らしくだぞ。俺が忘れかけてたそれをお前が思い出させてくれたんだからな。お前自身がそうしてくれないと決まりが悪いしな」
「ふふっ、分かってますよ。全く、遥は本当に心配症ですねー。そんなに私のことが大事なんですか?」
誂うつもりでそんなことを言うと、遥は真面目な顔になって。
「馬鹿。自分の恩人が大切だなんてこと当たり前だろうが。ちゃんと帰ってこいよ。言いたいのはそんだけだ」
なんてぶっきらぼうに言ってどすどすと足音をさせながらお店に戻っていく。その後ろ姿を見送りながら自分の頬がやけに熱く感じて。
「馬鹿はどっちですか。まったく……」
なんて呟く。その声はきっと誰にも聞かれないけれど、ちょっとだけ浮ついていた。
「いやぁ。ごちそうさまだね~。デザートとはいえ甘すぎて胃もたれしそうだけれど?」
「なんで聞いてるんですか……」
思わず壁におでこをぶつけながら羞恥に震えてしまった。
お久しぶりです! 暫く更新が開いてしまいましたが、作者が入院していました(´・ω・`)
退院しましたので7月は更新しっかりしていきます!
今回もここまでご覧いただきありがとうございました!
それでは、また次回に~。




