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私が私として出来ること(3)

「ど、どうしてここにいるの……?」


 思わずそんなことを問いかけてしまう。


「どうしてって、そりゃ自分のお家だから?」


 それはそうだ。うん。けれど、そういうことじゃなくて……。と言いかけたところで思い出す。


(私の夢の中の実家になんでいるの? なんてそんなこと聞けるわけないじゃないですか!)


「あー……えっと、そうじゃないんですけど大丈夫になりました!」


 私は華麗な会話スキルで話の方向を変えようと試みます。


「大丈夫ってことはないでしょ。どうしたの、なにか悩みがあるなら話してみな?」


 しかし回り込まれてしまった! 私は視線をあちこちに彷徨わせてなにか話題を変えるものがないか探します。


「そ、そうだ! もうお昼は食べましたか? 私お腹すいてて!」



「んん? ヒナは夢の中でもお腹空かせてるの? ちゃんとそっちでご飯食べてるの? 大丈夫?」


「あ、いえいえご飯はちゃんと食べてます大丈夫です……。ん?!」


 なんだから今聞き捨てならない言葉が聞こえた気がしました。夢の、中でも?!


「ちょ、ちょっと待ってください! え、ママはここが夢だって分かるんですか?」


 もう何が何やらで、わたわたと手を動かしながら早口で捲し立てるようにそう問うと。


「え……? まだ気がついてなかったの? ヒナが何か悩み事抱えてる時に見る夢って毎回ママが出てきてたでしょ?」


「言われてみれば確かに……。でも、どうしてそんなことに?」


 もしかして私は自分が気がついてないだけで感情を視る以外にも不思議な力を持っているんでしょうか。もしもそうだとしたら、それを知っていくことでお仕事にも活かせるかも知れませんし、もっと知りたい。


「あ、言ってなかったっけ? これね、ママの力なんだー。親しい人が悩んでいるとその人の夢の中に入り込めるって力なんだけどねー」


「ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!?!?!?!?!?」


 まったく予想外の回答に思わず叫んでしまった!


「え、いや。だって、え?! 聞いてないですよそんなこと! え、ママもそんな力持ってたんですか!?」


「あー、言ってなかったっけ? なんか昔からママの家系ってそういうのあるみたいなんだよねー。なんか漫画面白いよね!」


 へへへって笑いながらママがそんなことを言っていますが、私はもう意識が飛んでしまいそうでした。私の今までの孤独感は一体なんだったんだ……。今までそんな大事なことを言い忘れていたママに呆れるやら悲しいやらで逆に落ち着いてしまいました。


「はぁ……。もう良いですひとまずその話は受け入れますよ。とりあえずいつまでも玄関って言うのもなんなので居間に移りませんか?」


「あ、お腹空いてるんだっけ? なんか作ろうか?」


「いえ、空いてないのでお茶だけでいいです……」


 なんだか夢の中なのにも関わらず疲労感を感じる気がしながらお茶を飲んで一息つく。


「さて、と。それで、ヒナはなにを悩んでいるのかな?」


「今はママの家系に不思議な力があるっていうことに悩んでいますけど、まぁ、それは今はいいです……。ちょっとお仕事のことで悩んでいたんですけど、同僚の子に相談したらなんとなく解決出来たので今は特にない、ですかね?」


「はっはーん? さては男だなその子! なになに~、恋しちゃってんの?」


「ち、ちがわい! そういうんじゃないですー! まぁ? ちょっと頼りないくせに必要な時は助けてくれていい人だとは思いますけど、でも違います!」


「ふぅん。へー? ほー? そうなのねー。それで、お仕事について悩んでたんだっけ? もう解決したみたいだからあれだけれど、ママからも一つだけ良い?」


「ん、お願いします」


「ヒナやママは不思議な力があってそれが元で悩んだりすることもあると思う。学生の間なんて多感だから特にね。それで、大人になってからはこう思うのよ。『こんな身勝手な力を使って何かをしようなんて神様の領域なんじゃないか』ってね。でもね、なんだかんだ大丈夫なのよ。私達は勝手に独りになったつもりになりがちだけれど、いつだって周りを見れば誰かが手を伸ばしてくれている。だから、その手をしっかりと握り返すことさえ忘れなければ後は大抵なんとかなるもんよ」


「どう……して?」


 頭の中を覗かれたんじゃないかと思うほどに思考を言い当てられて言葉に詰まる。するとママはくすくすと笑って。


「どうして分かるのかって? 何年ヒナのママやってると思ってるのよ。かわいい娘の考えそうなことくらい分かるわよ。それにね、ママもおんなじように悩んでたことがあったから。まぁその時に相談してた人がパパでヒナが産まれたわけなんだけどね? さて、じゃあもう大丈夫そうだし今日はここまで。あぁ、『彼』によろしくね? そういう関係になったらちゃんと挨拶に来るように!」


「なっ!? だから、違うって言ってるじゃないですかーっ!」


 最後の最後にウィンクしながら私をからかっていたママの姿が次第に霞んでいき、気がつけば見慣れた自室の天井と窓から差し込む陽の光が目に映っていて。


「なんだかどっと疲れた気分ですね……」


 誰にともなくそう言いながらも、その疲労感は決して嫌なものではなかった。時計を確認して起き上がると、着替えを済ませて顔を洗い歯を磨く。階段を降りて行く途中で美味しそうな匂いが漂ってくる。

 私は小さく広角が上がるのを感じながら軽くなった足取りでみんながいるであろう店舗スペースに入る。


「おはよー!」


 私の声から繋がるようにこだまするみんなの挨拶が暖かくて、今日も良い日になりそうだと微笑んだ。

週末には間に合わなかったよ……。

今回もここまでご覧いただきありがとうございます!

10万字の大台までもう少し!

ではまた次回にー!

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