私が私として出来ること(2)
枕に顔を埋めて足をパタつかせていると、スマホが震える音が耳に届いた。もそもそと首を動かし画面を見ると、短く『どうした』と新着メッセージが表示されていた私はヘッドボードに背を預けると、そのメッセージを開いて返信を打つ。
『今日のお客さんのことが気になって……。どうせ遥はこの時間は暇でしょ?』
すると、数秒も経たずに返信が来る。
『お前と違ってこっちは料理の勉強やらで忙しいんだよ!』
む。その割には数秒で返信してくるじゃないってとっさに返信しかけましたが、話を聞いて貰う側な手前それはやめておく。
『まぁまぁ、そう言わずに話を聞いて? ちなみに嫌だって言われても私は一方的に送りますけど!』
『じゃあ聞くなよ……』
それから私は今日のお仕事で感じたことを長々と書いていく。私が書いている間既読はつくけれど、返信はこない。
『私の勝手な考えで人の死を冒涜するようなことをしてもいいんだろうか? 私はどうするのが正解だったんだろう……』
そんな一文で文章を締めくくった。既読がつくのを確認すると、スマホから手を離すと仰向けで大の字になり天井をなにをするでもなくただぼおっと眺める。暫くするとスマホが震えて返信が来たことを知らせてくる。
『確かに勝手なのかも知れないと思う。ただ、それで救われる人がいるんだったらお前はお前らしくやったらいいんじゃないか?』
「……生意気だ」
なんだか頼れる男みたいな返信が来てそんな言葉が零れる。言葉と同時に視界が揺らいで零れた物には気が付かないふりをして返信を打ち込む。
『何かっこつけてるんですか? ばーか。ありがとうございます』
『お前話すだけ話してその返信ってなんなんだよほんと……。俺はもう寝るからな』
『おやすみなさい』
『おやすみ』
たったそれだけのやりとりが胸の奥にわだかまっていたもやもやを吹き飛ばしてくれて、じんわりと暖かくなった。なんだろう。遥と話しただけでこんなに心が安らぐなんてまるで私がちょろいみたいに感じる。
「まぁ別に遥かに対してそういう感情はないんですけどね」
その独り言は遥に対してなのか、はたまた自分に言い聞かせているものなのかは考えないことにした。
明日もあるし、私も寝ようかと明かりを落とし横になると案外早く眠気が訪れた。そのまま眠りにつくと、夢を見た。現実ではありえないことだったからすぐに夢だと気がついたけれど、なんだかそれは普段見る曖昧な夢とは違い、妙に現実感がある。いわゆる明晰夢というやつだろうか?
「うぅん……。帰ってくるつもりがなかった所に戻された上に感覚があるってなんだか嫌だなぁ」
私はそんなことを愚痴りながら都会の大きな交差点の真ん中にぽつんと立っていた。私が知っているそれとは違って昼間なのにも関わらず、誰一人として歩いていないことがこれが夢だと強烈に印象づけてくる。はっきり言ってしまえば少しだけうす気味が悪い。
そんな人が居なくなった街を私は独りで歩く。どこに向かおうと意識したわけではないけれど、足が勝手にそちらに動いた。見慣れた玄関の前に立つと、その扉に手をかける。
「ただいま」
習慣からか、自然と口にしてしまった。けれど実家に帰ったらまぁ、誰だって言うと思う。けれど、その言葉に返事が帰ってくることなんてもちろんないのだけれど。
「おかえり、ヒナ」
ない……。はずだったのだけれど。思わずぽかんとしてしまったけれど、私の言葉に答えたのは……。
「ママ?」
「はい。ママですけど?」
ここには居ないはずのママだった。
今週はちょっと早めの更新!もしかしたら週末にも書ける……かも?
今回もここまでご覧下さりありがとうございました! なんだかんだもう40話ですが変わらずのんびりやっていこうと思います~。




